海底都市の王(2)
鋼の光沢を持つ鱗に龍の角、鳥人族よりも巨大な翼に原始の獣の爪、極め付きは鞭の如き三つの尾。
亞人と人間の社会が融和した人間界でも、異質なるものに寛容な魔界でさえ奇異なる外見と言えた。
加えてこの国では、他の種族との隔絶が長かったせいで、かつて持っていた人型に化ける手段が失われていると言う。
現に今までは玉座に座っていた人形らしき者と会話していたわけで……。
『いかにも異質、いかにも強そうだろう? その通りなんだなこれが』
「あはは」
「確かに……我が国にもわずかながら伝承が。私もそれを聞いて育ちました、深く感謝申し上げたい」
龍の身体の王は、悪い気はしないと言いたげに両眼を細める。
朗々と語る事には、魔界の奥地(温泉郷)や西大陸北部にも同胞があると言う。彼らは人に化ける術を脈々と受け継ぎ、何らも波立てることなく、影から人間や魔族を護って来たそうだ。
『かつては魔物も兄妹であったゆえな。『魔人』は最強の名をほしいままにし、それらを駆逐して回った。
彼らが自立してからは、ひっそりと『里』を形成し暮らす者や地中に潜る者、おれ達の様に海底へ赴く者、様々に散った』
「強い種族なら、地上を支配もできたと思うんですが」
『鋭いな、カーヤどの。われらは、眠らねばならなかったのだ』
「え?」
『四つ目の月は魔物のための月。その光の下でわれらは最も強い力を得る。あるいはその代償なのか――第四の月の光を浴び過ぎた『魔人』は、魔物に姿を変えてしまうのだよ』
ひと月の最終週に登る第四の月は万物の魂を転生に導くが、副作用として世界各地に『魔物』を生み出す。道義的・法律的に見て『重罪』とされる行為――殺人や強盗など――を犯した人間や魔族の魂はそのまま魔物となり、生物であった時と同じく世界に害をなす、無機の存在として残り続けることになる。それは魂の持つ澱であり、全ての種族共通の敵である。
第四の月のもと躍動し、その『敵』を駆逐してきた『魔人』が、戦いの果てに理性を失い魔物と成り果てるとは、何ともやりきれない物語であった。
「どうにかできないんですか、ケーニヒ陛下」
2016年 03月18日 11時48分 公開




