海底都市の王(1)
「思うんですけど、スゴロクさんっていろんな人にモテますよね」
「いきなりだな」
「や。王様とかって普通もっと警戒するでしょ? すんなり通されるってどゆことよホント」
海底都市を統べる王の小さな城に入城を許された勇者と魔王は、謁見の間の扉前で王を待っている。
「こちらの実力を見透かされているとも考えられるぞ。大暴れしたとて何ともないとな」
「……かも、ですね」
そこまで話したところで入室許可を告げる言葉が扉の奥から発せられ、見掛け倒しにアッサリと開いた。
『ようこそ、未来の民』
威圧感の割に冗句の分かる王だ、とスゴロクは思う。得意の外交手段も通じるかもしれない。
「わざわざのお出まし有り難く存じます。スゴロクと称する冒険者でございます。南大陸の結界を調査しておりました流れで、はるばるお邪魔した次第です」
弁舌なめらかに経緯を語るが、彼にしては珍しく緊張していた。
自分の城に眠る資料に記述はあったが、わずかに散見するに留まっていた古代の種族が、目の前にいるのである。当然と言えばあまりに当然だ。
『魔人』を自称する彼らは概ね好戦的であり、身体能力や魔力が圧倒的に高い。当世の『魔王』から見ても桁外れだ。
戦ったら消し飛ばされそうだなどと思ったのは、生まれて初めての事であった。
『ははは……。そう警戒してくれるな。おれの軍は今ここには居ないし、おれ自身も剣を以って貴兄らをむかえるつもりなどない』
「ありがとうございます、古き王」
スゴロク以上に緊張していた『勇者』も、ようやく穏やかな笑みを刷いた。
『ケーニヒだ、お嬢さん。そう呼んでくれると喜ぶ』
「承知しました、ケーニヒ陛下。カーヤ=リーヴィエラと申します」
『痛み入る、よろしくな。さて――正直おれはヒマでしょうがないのだが、話し相手になって貰えんかな。遅くなるようなら宿は幾らでもお貸しする』
是非に、と答えると王は手招きして『ご存知かな、魔人と自ら呼ぶ戦いの民のことを』立て板に水で話し始めた。
四つ目の月の光を受けて生まれ、魔族よりも魔物に近い種族なのだと言う。
『それゆえかどうか分からんがご覧の通りの外見でな、』
玉座の裏側から、ケーニヒはようやく本来の姿で現れてみせた。
2016年 03月16日 11時32分 公開




