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月が丘の淑女たち  作者: 如月


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第6話 雅のお姉さま

翌日の昼休み。


「マリアさん。」


雅が教室へ顔を出した。


「昨日はゆっくり案内できなかったから、今日は学院を少し案内しようか。」


「ありがとうございます。」


マリアは微笑み、翡翠とともに雅の後を歩く。


春風が吹き抜ける渡り廊下。


遠くには月の庭園が見え、花壇では小百合が世話をしている白薔薇が綺麗に咲いていた。


「本当に素敵な学院ですね。」


「ありがとう。」


雅はどこか嬉しそうに笑う。


「私もこの学院が大好きなんだ。」


二人は歴代生徒会長と歴代ルナの肖像画が並ぶ廊下へやって来た。


マリアは足を止める。


「昨日も思いましたが、皆さん本当に立派なお顔をされていますね。」


雅も静かに頷く。


「この方たちが、今の月が丘を作ってくれたからね。」


その時だった。


一枚の肖像画の前で、雅の足が止まる。


写真には、優しく微笑む一人の少女が写っていた。


「この方は……。」


マリアが尋ねる。


雅は懐かしそうに微笑んだ。


「去年まで生徒会長だった、私のお姉さまだよ。」


「お姉さま……ですか?」


「うん。」


「血は繋がっていないけど、月の継承で姉妹になった、大切なお姉さまなんだ。」


マリアは少し驚いたように写真を見つめる。


「月の継承で……。」


雅は静かに頷く。


「お姉さまは、誰よりも学院のことを考える人だった。」


「厳しい時もあったけど、いつも私のことを信じてくれた。」


その声には、深い尊敬が込められていた。


「卒業される前に、学院長へ私を次の生徒会長として推薦してくださったんだ。」


マリアは雅を見る。


「だから雅さんが……。」


「うん。」


雅は少しだけ苦笑した。


「もちろん、推薦だけで決まったわけじゃないよ。」


「学院長も最後まで悩まれたって聞いてる。」


「でも……。」


少しだけ視線を落とす。


「その経緯を知らない人から見れば、不公平だと思われても仕方ないのかもしれないね。」


その言葉を聞いた瞬間だった。


廊下の向こうから数人の高等部三年生が歩いてきた。


その中の一人が雅を見る。


「……会長。」


雅はいつも通り穏やかに微笑む。


「ごきげんよう。」


「ごきげんよう。」


三年生たちも挨拶は返す。


しかし、すれ違いざまに小さな声が聞こえた。


「やっぱり納得できないわ。」


「香織だって、ずっと生徒会長を目指して努力してきたのよ。」


「本当なら、三年生から選ばれるはずだったのに。」


声は決して大きくない。


だが、その言葉はマリアの耳にははっきり届いた。


思わず足を止め、振り返る。


雅は無言でマリアの肩に手を乗せて、首を横に振る。


「雅さん……。」


「大丈夫。いつか分かってもらえれば、それでいいから。」


その横顔は穏やかだった。


けれど、その言葉の裏で、どれほどの想いを抱えているのか。


マリアにはまだ分からなかった。


ただ一つだけ、胸の中に小さな違和感が残る。


――雅さんは、本当に何も気にしていないのだろうか。


その答えを知る日は、もうすぐ訪れる。

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