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月が丘の淑女たち  作者: 如月


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第5話 ルナと生徒会

昼休みの鐘が学院中に響いた。


「マリアさん。」


雅が席を立つ。


「少し付き合ってくれる?」


「はい。」


マリアが立ち上がると、翡翠も静かにその後ろへ控えた。


二人は雅とともに教室を出る。


廊下には春の日差しが差し込み、窓の外では色とりどりの花々が風に揺れていた。


「どちらへ向かうのでしょうか。」


マリアが尋ねる。


「生徒会室だよ。」


雅は穏やかに微笑んだ。


「ルナは学院行事で生徒会と協力することが多いんだ。」


「だから一度、案内しておこうと思って。」


「ありがとうございます。」


歩きながら、マリアは校舎を見回した。


歴史ある校舎はどこも丁寧に手入れされ、廊下には歴代のルナや生徒会長の写真が飾られている。


「皆さん、とても誇らしそうなお顔ですね。」


「ええ。」


雅は一枚一枚の写真を見つめながら頷いた。


「この学院を大切にしてきた方たちだから。」


やがて、生徒会室へ到着する。


雅が扉を開けると、中では数名の生徒が書類を整理していた。


「失礼します。」


その声に、生徒たちが顔を上げる。


「会長、お疲れさまです。」


「ごきげんよう。」


高等部二年生と三年生の生徒会役員たちは、雅へ自然と頭を下げた。


そこには一年生だからという遠慮も、特別扱いもない。


生徒会長として接していることが、マリアにも伝わってきた。


雅はマリアを紹介する。


「こちらが今日転入した天堂寺マリアさんです。」


「本日からルナを務めてくださることになりました。」


役員たちは驚いた表情を見せたものの、すぐに笑顔になる。


「初めまして。」


「よろしくお願いします。」


マリアも優雅に一礼した。


「天堂寺マリアと申します。」


「どうぞよろしくお願いいたします。」


一通り挨拶を終えると、雅は部屋の中央へ案内した。


「ルナのお仕事は、生徒会長とは少し違うんだ。」


「生徒会は学院を運営する立場。生徒会長は学院の指揮官。」


「そして、ルナは、生徒一人ひとりに寄り添い、学院の象徴として皆を導く存在。」


マリアは静かに耳を傾ける。


「ルナは誰かの上に立つ存在じゃない。」


「誰よりも近くで、生徒に寄り添う存在だと私は思ってる。」


「マリアさんなら大丈夫。」


その一言に、マリアの表情が少し和らぐ。


「ありがとうございます。」


翡翠はそんな二人を静かに見守っていた。


生徒会室を後にし、教室へ戻ろうとした時だった。


廊下の向こうから、数人の高等部三年生が歩いてくる。


そのうちの一人が雅を見つけ、足を止めた。


「……会長。」


その声音には、どこか冷たさが混じっていた。


雅は表情を変えず、穏やかに会釈する。


「ごきげんよう。」


雅はいつも通り穏やかに会釈した。


三年生は一瞬だけ足を止める。


「……相変わらずね。」


誰にも聞こえないほど小さな声だった。


「行きましょう。」


後ろの生徒に促され、そのまま歩き去っていく。


その背中を見送りながら、マリアは小さな違和感を覚えた。


――今の空気は、何だったのだろう。


その答えを知るのは、もう少し先のことだった。

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