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月が丘の淑女たち ―名門女学院の『ルナ』が少女たちの悩みに寄り添う物語―  作者: 如月


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第50話 夢と運命

「マリア……ありがとう。」


日和は少しだけ目を細め、寂しそうに笑った。


「そう言ってくれるだけで嬉しい。」


少しだけ間を置く。


「でも、私はマフィアクィーンになる運命なんだ。」


誰も言葉を挟まない。


「私は、朝比奈組を、組員たちを、守らないといけないの。」


「何があっても。」


その声は静かだった。


けれど、その一言一言には幼い頃から背負わされてきた重みが滲んでいた。


「小さい頃から言われ続けてきた。」


「『お前は朝比奈家の跡取りだ』って。」


「『組を守れるのはお前だけだ』って。」


その言葉には、自分に言い聞かせるような響きがあった。


マリアは静かに日和を見つめる。


「……ねえ、日和。」


「うん?」


「それは、“やらなければいけないこと”だよね。」


日和は少し驚いたように瞬きをする。


「え……?」


「じゃあ。」


マリアは穏やかな声で続けた。


「本当は。」


「日和がやりたいことは、何?」


その一言で、時間が止まったようだった。


雅たちも何も言わず、日和を見つめている。


日和は俯き、小さく笑った。


「そんなの……。」


「考えちゃいけないって思ってた。」


「それでも。」


マリアは優しく微笑む。


「私は聞いてみたい。」


「朝比奈組の跡取りじゃなくて。」


「朝比奈日和の夢を。」


その言葉に、日和の瞳が揺れた。


しばらく沈黙が続く。


やがて、小さく息を吸う。


「……笑わない?」


「もちろん。」


マリアは即座に答える。


葵も元気よく手を挙げた。


「絶対笑わない!」


雅、小百合、瑠璃も静かに頷く。


日和はゆっくりと口を開く。


「私ね……。」


「本当は。」


「世界を旅するライターになりたい。」

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