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月が丘の淑女たち ―名門女学院の『ルナ』が少女たちの悩みに寄り添う物語―  作者: 如月


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第46話 本の向こう側

世界各国の本が並ぶ部屋。


窓から差し込む夏の日差しが、本棚を優しく照らしていた。


「これもおすすめ!」


日和は嬉しそうに一冊の写真集を取り出す。


「アフリカのサバンナ!」


「こっちは南極!」


「それから、この街並み!」


次から次へと本を開き、楽しそうに説明する。


「本当に好きなんだね。」


雅が感心したように笑う。


「うん!」


日和は迷いなく頷いた。


「何時間でも見てられるよ。」


「旅行が好きなの?」


小百合が尋ねる。


「旅行も好きだけど……。」


日和は少し考えてから首を振った。


「知らない世界を知るのが好きなの。」


「知らない世界?」


葵が首を傾げる。


「うん。」


日和は写真集のページをめくる。


そこには、異国の市場で笑う人々の姿が写っていた。


「同じ空の下なのに。」


「言葉も。服装も。宗教も。」


「全部違うんだよ。」


「それって、すごく面白くない?」


その言葉に、皆は自然と写真へ目を向ける。


マリアは静かに頷いた。


「そうだね。」


「世界は広いんだね。」


「でしょ!」


日和は嬉しそうに笑う。


「だから、もっと知りたいんだ。」


その笑顔は、子どものように純粋だった。



「日和は実際に海外へ行ったことはあるの?」


瑠璃がふと尋ねる。


「あるよ。」


日和は頷く。


「何度も。」


「でも。」


少しだけ笑顔が曇る。


「全部、お父様について回るだけだったから。」


「観光はほとんどできなかったな。」


「そうなんだ。」


雅が静かに相槌を打つ。


日和はすぐに笑顔へ戻る。


「だから、本で旅してる!」


「行ったことがなくても。」


「本なら、どこへでも行けるから。」


葵が感心したように言う。


「日和って、本当に本が好きなんだね。」


「うん!」


迷いのない返事だった。



その時だった。


コンコン。


控えめなノックが響く。


「失礼いたします。」


ジョンが部屋へ入ってくる。


「日和様」


「ボ…コホンっ」


一瞬だけ言葉を飲み込み、


「旦那様がお戻りになられました。」


日和の笑顔が、一瞬だけ止まった。


「……お父様が?」


「はい。」


ジョンは静かに頭を下げる。


「ご挨拶だけでも、と仰せです。」


部屋の空気が少しだけ変わる。


日和は皆を見渡し、困ったように笑った。


「ごめん。」


「ちょっとだけ待ってて。」


そう言って、静かに部屋を後にした。


扉が閉まる。


残された四人とマリアは、自然と顔を見合わせた。


さっきまでの無邪気な日和とは違う。


どこか張り詰めた表情が、皆の心に小さな引っかかりを残していた。


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