第40話 夏休みの予定
夏休みを目前に控えた昼休み。
白薔薇園には、今日も爽やかな風が吹いていた。
白いテーブルを囲み、マリアたちはいつものようにお茶を楽しんでいる。
「美咲さん、その後も週に一度学院へ来られているそうだよ。」
雅が紅茶を置きながら話した。
「マリア良かったね!」
葵がぱっと表情を明るくする。
「えぇ。ほんとうに。」
「院内学級で、お守り作りも始めたって聞いたわ。」
皆も安心したように顔を見合わせる。
「前向きになった証拠ね。」
瑠璃も静かに微笑む。
マリアも柔らかな笑みを浮かべた。
ー
「そういえば、もうすぐ夏休みだね!」
葵が嬉しそうに伸びをする。
「今年は絶対、花火見に行きたい!」
「海も!」
「かき氷も!」
「全部行きたい!」
「欲張りだね。」
雅がくすりと笑う。
「夏休みは長いようで、あっという間よ。」
瑠璃が鋭くつっこむ。
「えー。」
葵は頬を膨らませた。
「だから計画が大事なんだよ!」
小百合も微笑みながら頷く。
「そうね。私は読書をしたり、お庭の手入れをしたりでしようかな。」
「小百合らしいね。」
日和が笑う。
「雅は?」
「私は家のお手伝いかな。」
「茶道のお稽古もあるし。」
「忙しそう。」
「でも嫌いじゃないよ。」
穏やかな返事に、皆も微笑んだ。
「マリアは?」
葵が尋ねる。
マリアは少し考えてから答える。
「お仕事なの。」
「でも。」
柔らかく微笑む。
「今年は皆さんと過ごす時間も作れたら嬉しい。」
「やった!」
葵が嬉しそうに手を叩く。
「じゃあ遊ぼう!」
「みんなで!」
「ええ。」
マリアも笑顔で頷いた。
その時だった。
葵がふと思い出したように日和を見る。
「そういえばさ。」
「日和って毎年、実家?に帰るよね。」
「うん。」
「前から気になってたんだけど。」
「どんなお家なの?」
その瞬間。
雅と小百合も興味深そうに日和を見る。
「そういえば、私も詳しく聞いたことがないね。」
「ええ。」
小百合も頷く。
「日和はいつも上手にはぐらかしてしまいますもの。」
「えー。」
日和は困ったように笑った。
「だって説明しづらいんだもん。」
「そんなに?」
葵は首を傾げる。
「お屋敷?」
「まぁ、お屋敷。」
「会社を経営してるとか?」
「うーん。」
日和は曖昧に笑う。
「違うような、違わないような。」
「余計に気になるんだけど!」
葵が身を乗り出した。
日和は少し考え込む。
「うーん……。」
「口で説明するより。」
ぽん、と手を叩いた。
「来る?」
「え?」
四人の声が重なる。
「夏休み。」
「みんなでうち来ればいいじゃん。」
「見た方が早いよ。」
葵の目がぱっと輝く。
「行く!」
即答だった。
雅も穏やかに笑う。
「私も、お邪魔してみたいな。」
「ぜひ。」
小百合も微笑む。
「私も日和のお家、以前から気になってたの。」
と瑠璃も続く。
四人の視線がマリアへ向く。
マリアは少し驚いたように瞬きをしたあと、優しく微笑んだ。
「私も一緒に行っていいのなら、行きたいわ。」
「決まり!」
日和は満面の笑みを浮かべる。
「ジョン、準備をお願いね。」
「かしこまりました。」
「「「「お世話になります。」」」」
葵は待ちきれない様子で笑った。
「今年の夏休み、最高になりそう!」
白薔薇園に、五人の笑い声が響く。
夏休みまで、あと少し。
誰もまだ知らなかった。
その何気ない約束が、日和の胸に秘められた”本当の夢”と向き合う夏の始まりになることを。




