表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月が丘の淑女たち ―名門女学院の『ルナ』が少女たちの悩みに寄り添う物語―  作者: 如月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
37/58

第37話 久しぶりの制服

翌朝。


病室のカーテンを開けると、眩しい夏の日差しが部屋いっぱいに広がった。


今日は、美咲にとって特別な朝だった。


ベッドの横には、昨日のうちに用意しておいた学院の制服が掛けられている。


美咲は制服を見つめ、小さく息を吸った。


「……いよいよなんだ。」


少しだけ緊張している。


胸の鼓動が、いつもより速い。


それでも、その鼓動は嫌なものではなかった。


期待と、不安。


その両方が胸の中にあった。


ゆっくりと制服へ袖を通す。


鏡の前へ立つ。


見慣れたはずの制服なのに、今日はどこか新鮮に見えた。


「変じゃないかな……。」


思わず独り言が漏れる。


コン、コン。


「美咲ちゃん、入るね?」


「はい。」


看護師が病室へ入ると、制服姿の美咲を見て目を細めた。


「やっぱり制服姿、素敵だね。」


美咲は少し照れながら笑う。


「ありがとうございます。」


看護師は優しく頷いた。


「今日は午前中だけだからね。」


「少しでも疲れたら、すぐ連絡して。」


「無理はしない約束。」


「はい。」


その言葉に、美咲はしっかりと頷いた。



病院の玄関では、主治医も見送りに来てくれていた。


「いってらっしゃい。」


「はい。」


「楽しんできてね。」


「はい。」


深く一礼する。


そして病院を出た。


学院までは、渡り廊下を歩いて数分。


たったそれだけの距離。


けれど今日は、とても長く感じる。


一歩。


また一歩。


足を進めるたび、心臓が高鳴る。


(みんな、覚えてくれているかな。)


(ちゃんと話せるかな。)


(体調、大丈夫かな。)


次々と不安が浮かぶ。


その時だった。


――週に一日でも。


――一時間だけでも。


――それも、私の毎日なんだって思えるから。


昨日、自分が陽菜へ話した言葉を思い出す。


美咲は小さく笑った。


「そうだ。」


「今日は、今日の私でいいんだ。」


大きく深呼吸をする。


渡り廊下の先には、見慣れた学院の校舎が見えていた。


夏空の下で輝く白い校舎。


風に揺れる木々。


どこか懐かしい景色だった。


「……ただいま。」


誰に聞かせるでもなく、小さく呟く。


その言葉には、ようやく帰ってこられた喜びが込められていた。


美咲は穏やかな笑顔で、学院への一歩を踏み出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ