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月が丘の淑女たち ―名門女学院の『ルナ』が少女たちの悩みに寄り添う物語―  作者: 如月


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第25話 ルナのお願い

翌日の昼休み。


「ごきげんよう。」


少女は静かにガゼボへ姿を見せる。


昨日までよりも、表情は少し柔らかい。


「ごきげんよう。」


マリアは微笑み、隣へ視線を向けた。


少女も自然と昨日と同じ席へ腰を下ろす。


しばらく白薔薇を眺めたあと、マリアが静かに口を開いた。


「一つ、お願いをしてもよろしいでしょうか。」


少女は少し驚いて顔を上げた。


「お願い……ですか?」


「はい。」


マリアは穏やかに頷く。


「お姉様と、お話しする機会をいただけませんか。」


少女は目を丸くした。


「お姉ちゃんと……?」


「はい。」


「もちろん、無理にとは申しません。」


「でも、お話を伺っていて、お姉様はあなたを大切に思っていらっしゃるように感じました。」


少女は少し俯く。


「……優しいんです。」


「いつも私を心配してくれて。」


「勉強も教えてくれるし。」


「失敗しても慰めてくれるし……。」


「だから。」


少女は少し困ったように笑った。


「お姉ちゃんは、私がこんなことで悩んでるなんて思ってないと思います。」


マリアは静かに頷く。


「私も、そう思います。」


「え……?」


「だからこそ、お話を伺ってみたいのです。」


少女はしばらく考え込んだ。


風が白薔薇を揺らす。


長い沈黙のあと、小さく頷いた。


「……分かりました。」


「お姉ちゃんに聞いてみます。」


「ありがとうございます。」


マリアは柔らかく微笑んだ。


少女も、少しだけ安心したように笑う。



その日の放課後。


少女は校舎の廊下を歩いていた。


少し前を、お姉さんが歩いている。


「お姉ちゃん。」


呼び止めると、お姉さんはすぐに振り返った。


「どうしたの?」


その笑顔は、少女が話していた通り優しかった。


少女は少し緊張しながら口を開く。


「お願いがあるの。」


「うん?」


「白薔薇園で……。」


「ルナのお姉さまと、お話ししてもらえないかな。」


お姉さんは驚いたように目を瞬かせた。


「ルナ……?」


「どうして?」


少女は少しだけ迷う。


けれど。


「私のことで、お話があるみたいなの。」


その一言に、お姉さんの表情が少し曇る。


「……あなたのこと?」


「うん。」


少し考えたあと、お姉さんは静かに微笑んだ。


「もちろん。」


「あなたのためなら。」


少女はほっと息をつく。


「ありがとう。」


「じゃあ、明日のお昼でいい?」


「うん。」


二人は並んで歩き始める。


お姉さんは何気なく妹の頭を優しく撫でた。


「何か悩みがあるなら、いつでも聞くからね。」


その言葉に、少女の胸が少しだけ痛んだ。


(やっぱり。)


(お姉ちゃんは、何も知らない。)


夕暮れの廊下を歩く姉妹の背中を、長く伸びた影が静かに包んでいた。

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