表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月が丘の淑女たち ―名門女学院の『ルナ』が少女たちの悩みに寄り添う物語―  作者: 如月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/43

第21話 月のポスト2通目

朝のホームルームが終わると、雅が一枚の封筒を持ってマリアの席へ歩いてくる。


「マリア。月のポストに、新しいお手紙が届いたよ。」


マリアは静かに受け取った。


前回と同じ、白い封筒。


しかし、少しだけ違う緊張感が胸に宿る。


栞との出会いを思い出したからだろうか。


「ありがとう。」


雅は優しく微笑んだ。


「今回も、一緒に考えよう。」


「えぇ。」



昼休み。


六人はいつものように白薔薇園へ集まった。


白薔薇の香りに包まれながら、マリアは封筒をゆっくり開く。


便箋には、少し乱れた文字が綴られていた。


『頑張っても頑張っても、

お姉ちゃんには勝てません。


先生も、お父様も、お母様も、

「お姉ちゃんみたいになりなさい」

と言います。


私は私じゃ、だめなのでしょうか。』


読み終えた瞬間。


誰も言葉を発しなかった。


前回とは違う種類の痛みが、その文章には込められていた。


「……苦しいね。」


小百合が小さく呟く。


「ずっと比べられてきたのかもしれない。」


雅も静かに頷いた。


「本人は努力しているのにね。」


日和は眉をひそめる。


「比べられるのって、一番嫌。」


葵は便箋を見つめたまま言った。


「私なら、『私は私!』って言っちゃうけど……。」


「それが言えないから、お手紙を書いたんでしょうね。」


瑠璃が静かに返す。


マリアは何度もその手紙を読み返していた。


そして、そっと目を閉じる。


「……この方は。」


五人がマリアを見る。


「誰かに勝ちたいのではないと思います。」


「え?」


葵が首を傾げる。


「ただ。」


マリアは優しく便箋を見つめた。


「『あなたはあなたでいい』と、一度だけ言ってほしかったのではないでしょうか。」


白薔薇園に静かな風が吹く。


その言葉は、誰の胸にも静かに染み込んでいった。


雅は穏やかに微笑む。


「今回も、会いに行こう。」


「そうね。」


マリアも静かに頷く。


「この方のお名前も、お顔もまだ分かりません。」


「でも。」


便箋を胸元へ抱く。


「きっと今も、一人で苦しんでいます。」


その時だった。


ガゼボから少し離れた白薔薇の植え込みが、小さく揺れた。


誰かがいたような気がした。


マリアはそちらへ視線を向ける。


しかし、人影はもうない。


風だけが、白い花びらを静かに揺らしていた。


(……今のは。)


マリアは何も言わなかった。


けれど、その瞳には確かな優しさが宿っていた。


新たな月のポスト。


ルナとして二つ目の物語が、静かに幕を開ける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ