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月が丘の淑女たち  作者: 如月


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第2話 ルナの資格

「あなたは転入試験で学院史上初の満点を取ったことも、決して誇ろうとはしませんでしたね。」


マリアは少し困ったように笑う。


「試験は勉強した結果です。それだけのことです。」


学院長は椅子から立ち上がり、大きな窓の前へ歩いた。


校庭では、楽しそうに談笑する生徒たちの姿が見える。


「マリアさん。」


「あなたは、『ルナ』とは何だと思いますか?」


突然の問いだった。


マリアは少し考え、答える。


「……学院で最も優秀な生徒。」


学院長は静かに首を横へ振った。


「違います。」


「ルナとは、生徒の上に立つ者ではありません。」


「生徒たちの未来を照らす存在です。」


その言葉に、マリアは学院長を見つめる。


「勉強が一番できることでも、家柄が一番良いことでもありません。」


「誰よりも他人を思いやり、誰よりも誠実であること。」


「それが、月が丘女学院の『ルナ』です。」


学院長はゆっくりと振り返った。


「私は、あなたの試験の点数だけを見て決めたわけではありません。」


「あなたの立ち居振る舞い。」


「言葉遣い。」


「そして今、自らの未熟さを理由に辞退しようとした、その謙虚さ。」


学院長は優しく微笑む。


「だからこそ、あなたにお願いしたいのです。」


マリアは黙ったまま考え込む。


自分で務まるのだろうか。


学院のことも知らない。


仲間もまだいない。


そんな自分が、本当に『ルナ』でいいのだろうか。


その時だった。


隣で控えていた翡翠が、小さく口を開いた。


「マリア様。」


マリアが振り向く。


「マリア様は昔から、できるかどうかではなく、『やるべきこと』を選んでこられました。」


「今回も同じではありませんか。」


その一言に、マリアは目を閉じた。


そして、ゆっくりと息をつく。


「……分かりました。」


学院長が微笑む。


「未熟な私でよろしければ、お引き受けいたします。」


学院長は深く頷いた。


「ありがとうございます。」


「きっと、この学院に新しい風を吹かせてくださるでしょう。」


その後、学院長は机の上に置かれていた一枚の書類を手に取る。


「では、教室へ向かいましょう。」


「皆さんが、マリアさんを待っています。」


マリアは静かに頷いた。


「はい。」


学院長を先頭に、マリアと翡翠は学院長室を後にする。


廊下の窓から差し込む春の日差しが、白い制服を優しく照らしていた。


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