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5/10

帰り道、三人で

 あれから数日後。


 目が覚めると、外から差し込む光に、少しだけほっとした。

 それでも、この数日間のことは、うまく言葉にならないまま残っている。


 支度をして、机の脇ある剣を一瞥した後、家を出た。


 外はいつも通りだった。明るくて、人がいて、音がある。


 昼の間は何も変わらない。


「おはよ」


 今日も見知った背中に声をかける。

 振り向いたのは、いつもの彼女。マリナだ。


「おはよ。今日は早いね」

「普通だよ」

「うそ。ちょっと早い。この前は遅くて遅刻しそうだったじゃん」


 彼女が小さく笑い、そのまま並んで歩き出す。

 いつもの道。いつもの距離。


「なんかあった?」

 マリナにふと聞かれる。


「別に」


 少しだけ間を置いて答える。


「そっかー」


 それ以上は聞いてこない。その距離感が少しだけありがたかった。


 門をくぐったところでマリナと別れ、教室に入った。

 そのまま席に着く。


 ぼんやりと教室を眺めていると、後ろから声がかかった。


「おはよ。考え事か?」


 振り返ると、レンがいた。


「いや、なんも」

「そうか? なんか静かだからさ」


 軽い口調。

 でも、少しだけ心配しているような、観察しているような目。


 私が黙っていると、レンもそれ以上は聞かなかった。


「まあいいけどさ」


 授業が始まり、時間が流れる。

 ノートを取りながら、ふと考える。


 今までこんな授業だったっけ。


 ――いや。


 首を振る。授業は変わっていない。変わったのは私の方だ。

 あの日、思い出してしまったから。


 学校の雰囲気も、授業の感じも、どこかずれている。

 これでも、これまでの記憶があるから、内容は分かる。

 理解はしている。

 でも、このごちゃごちゃした感覚は、消えないまま残っていた。



 部屋を出ると、マリナが待っていた。


「帰る?」

「うん!」


 一緒に歩き出す。

 少しして、後ろから足音が近づいてきた。


「一緒に帰っていいか?」


 振り返ると、レンがいた。


「いいよー」


 マリナが答え、私も頷く。

 三人で並びながら歩く。


 会話は軽い。授業の話。どうでもいい話。


「ねえ大丈夫?」


 横にいたマリナと目が合う。

 反対を見ると、レンも心配そうにこちらを見てた。

 どうやら、いつのまにか声をかけられていたらしい。


「大丈夫だよ」

「そう? 具合悪い?」


 マリナが首をかしげる。


「いや、全然。ちょっと考え事してただけ」

「本当? 何かあったら言ってね!」

「うん。ありがとう」


 マリナに笑いかけると、マリナもいーえと微笑んだ。


「おーい。俺のこと見えてる?」


  反対から少し拗ねたような声。


「ごめんー。忘れてた」


 マリナが返して、それに私が笑う。

 楽しい。このままずっと続けばいいのに。


「まあ実際、今日ぼーっとしてたよな。授業中もなんかおかしかったし。別人みたいな」


 そんなことを考えていたら、いきなり言われて、びっくりする。

 別人という訳ではないが、いくらなんでも鋭すぎる。


……いや、ふざけて言っただけかもしれないが。


「あー……」

「何あほなこと言ってんの。授業中も見てるのきもいよ」


 私が言葉を迷っていると、マリナが先に返した。

 その言葉にレンがしゅんとする。


 そのまま歩いていると、分かれ道に出る。


「冗談じゃん。んな微妙な顔しないで。泣くよ俺」

「はいはい。また明日ね」

「おう。じゃな」


 二人が手を振る。

 私も軽く返して、歩き出した。

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