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夜にしか見えないもの
次の日の夜、私はこっそり家を抜け出した。
昔から言われていた。夜は危ないと。夜に外に出てはいけない。襲われる、と。
それはなぜなのか。思い出してからは分かる。きっと『あいつら』がいるから。いるなら確認しないと。遅くなる前に。
空気は冷えている。昼とは違う静けさがある。
歩いてしばらくして、違和感に気づいた。
道の先に。
人の形をしている。けれど、それは人ではない。
黒い影。
輪郭が曖昧で、煙のように揺れている。
「怪物」
思わず口にした。心臓が、少しだけ速くなる。
怪物は動かず、ただ、そこにいる。
逃げることも、距離を詰めることもできない。
どうしたらいいのか、分からない。
あの本の言葉を思い出す。
――次は、もっと早く気づけ。
ゆっくりと後ろに下がる。
今は、まだ。戦う必要はない。戦えない。
私はその場を離れた。




