ある日本人男性(30代後半)の場合 3
大学を出て社会人1年目に甚大な災害が起きた。
学生時代を過ごしていた地方だった。
就職先は東京本社の北海道支社だったので影響はなかった。
報道で伝えられる被害状況。
見知った土地や建物、景色が無残な姿になっていた。
新人社員として忙しく、個人的に支援に行ける余裕はなかった。
名簿を何度も確認する日々が続いた。
数年後に北海道が丸三日の大停電に見舞われた。
買い物は現金のみ、レジは電卓。
店内の照明はなく生鮮品は鮮度が衰える。
配送トラックのガソリンも給油できない。
情報はラジオかスマホのみ。
電気が無いだけで崩壊した社会。
エネルギーに全て依存しなければ生きていけない社会。
テレビを観なくてもスマホが使えなくても命に影響はない。
でも医療にすがっている人や、電気で仕事が成り立っている人にとっては死活問題。
北海道は本州と隔絶されている土地。
広いのに逃げ場がない孤立感。
この線路の行くつく先は東北だった土地。
今だと真東になるのだろうか。
最果てだとしても熱帯になっているはず。
冬になると閉ざされていた地方は、今後一年中温かいだろう。
花粉症なので杉林が無くなること期待している。
手つかずの自然は縄文時代のように生活できるはず。
街灯と人家の明かりが無いので暗いが、星空が以前より輝いているうえに月が2つあるからか、夜なのに周囲が確認できる。
ただ時間の感覚に違和感を感じている。
赤道ということもあり日中の長さの変化もあるのだろうけど、どうも一日が24時間でなさそうだ。
そうなると一年が365日も怪しくなる。
自転が早いならば赤道ほど重力が弱くなっているのでは。
あの日から足取りが軽く感じている証にもなる。
もし以前の太陽系であっても日数は増えるだろう。
これからの地球は人類の歴史が役に立たなくなるかもしれない。
今回の地球規模な天変地異は、日本のように多くの災害を経験、グローバルな文化や習慣の知識、戒律が緩い宗教、あるいは文明の影響が少ない土地の人間が生き残る。
古来から、政治などが不安定になると、その国に甚大な災いがもたらされると。
それが地震や噴火のような自然災害であったり、戦争や経済危機であったり。
人類の歴史を振り返り、すり合わせを調べてみた人がいるらしいが、けっこうな確率で起きているようだ。
そのタイミングは10年以内であったり、もしくは50年周期。
周期性があるのならば、人間は定期的に過ちを繰り返す種で、地球の営みに必然な存在なのかもしれない。
今回のことは、そんな単発な災いではどうしようもないほど、地球という生命体の限界を迎えていたかもしれない。
手遅れになる前にということだ。
地球上の国家は存続していないだろう。
電気エネルギーの喪失にとどまらず、農産物と流通の壊滅。
貨幣価値は無になり、権力者や富裕層は無力化。
有名人なども、その価値の意義は無くなってしまった。
芸能人なんかもそうだろう。
国が崩壊したのだから、公権力の警察や政治家、ましてや国家元首。
一般人も相当数出ているはず。
重い病に罹っている、身体不自由者、要介護者は直接的に。
財産があっても無くても関係なく。
現代の職業はもれなくエネルギーありきなのだから、ほとんど失業。
それでも一週間程度ならなんとかなると思っているだろう。
あの日から歩き続けているが、少なくとも線路上で他の人と出会っていない。
みんな何とかなるだろう、誰か優秀な人か何かが元の生活に戻してくれるだろうと思っているのだろう。
これまでも大きな災害に見舞われていても復興してきたのだから。
でもいよいよ駄目だと気付く日が来る。
僕のように身軽な独身は、氷河期世代という先輩がたを間近で見てきたおかげで、ある意味生きているといる現状と未来に期待していない。
死なないから生きている。
ただそれだけの日々。
それでも世の中に何か爪痕を残したかったな。




