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エーテルリウムの黄昏  作者: お茶どうぞ
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8、居酒屋での話合い


三人は、夜再度居酒屋ストロングホール・サロンで集結する約束をして宿屋の前で別れた。

ソレンディルはエルドリンから預かった日記を手に、ベッドへ横になる。

存在が伝承されている失われた種族――魔法の始祖とされるエーテルリウム。

故郷エルメリオン王国で、自らも研究していたが、石碑の解読さえ満足に進んでいない。

都市の場所も、遺構も発見されていない。

陽炎のように掴みどころがない。


エルドリンが見たエーテルリウムの夢、その鍵となるかもしれないものが、手元にある。

誰も知らない秘密を覗き込んでいるような興奮と、探究心で日記を読み始めた。

(それにしても……模擬戦のあれは何だったの?)

無詠唱の魔法を操る"人間"など、聞いたこともない。


ましてや剣技でガルムが敗れるなど――。


さらに、鍛冶工房で授かったインフィニティスタッフ

あれは伝説級の物だ。それを設計するだなんて。ハイエルフの技術力を超えている。

エルドリンへの興味は尽きない。


「ふわ~ぁ……疲れた。お風呂に入って気分を切り替えるかな。」

ソレンディルは独り言をつぶやき、入浴の支度を始めた。


――一方その頃。


ガルムは装備を外してマジックバックに収納して、椅子に座り込み、少し呆然としていた。

今日起きた出来事を思い出していた。

(俺が……負けた?しかも、人間相手に……?)


数多の魔獣を打ち倒してきた。困難なクエストを超えてきた。

その自信はある。膂力に疑問を持ったことはない。

それなのに、全力で斬り込んでも、相手は羽毛のように受け流してくる。


――だが、負けは負けだ。


「次は必ず……勝つ。」

オーガとしての誇りにかけ、彼は拳を握り、そう誓った。


やがて日が落ち、二人は宿のロビーで顔を合わせる。


「気分は落ち着いた?」

「……あぁ、気持ちを切り替えた。」

その言葉で付き合いの長い二人は、お互いの状態が分かった。


「今晩は、では向かいますか。」

そこへエルドリンが現れる。


三人は連れ立ち、居酒屋ストロングホール・サロンへと向かった。


酒場は今夜も賑わい、入口では店員アランが客を捌いている。


「いらっしゃいませ、エルドリン様。お席はご用意できております。」

「ありがとう、アラン。」

「こちらへどうぞ。」


案内された三階の個室には、四人分の席と食事が用意されていた。


「四人か?誰か来るのか?」

その様子を見てガルムは疑問に思った。


「ええ、一人ゲストです。」

エルドリンが個室の扉を開くと、もう一人の客が現れた。


「――シスター、ソフィア?」

ソレンディルがソフィアの姿を確認する。


「ソフィア?二人は知り合い?」

「エルドリンとは幼馴染です。」

ソレンディルの問いに、彼女は笑って答えた。


四人は席に着き、乾杯の盃が交わさた。


「今日はお疲れ様でした~」


ガルムとソレンディルは色々聞きたい事があった。

ソフィアは前回、ガルムをエルドリンを引き合わせるように仕向けた事を謝った。

「そいう事か。」

ガルムは酒場でのエルドリンとの出会いは偶然でなかった事に気付いた。

ソレンディルはエルドリンに聞きたいことが、まだまだある。


エルドリンは自分が理解している範囲でのエーテルリウムの事について話し初めた。

・エーテルリウム種族は国を起していた。

 国名はエーテルヴァラー共和国。

・平和主義であり亜人とも仲良くしていた。

・宗教は精霊信仰だった。

・人口はおよそ500万人、中心都市ヴァルティアを元に衛星都市郡を形成していた。

・ローラン・アイアンクラウンは中心都市ヴァルディアで摂政を担当していた。

・国の名前”エーテルヴァラー”が示す通り、エーテルという魔法的なエネルギーを表している。

・現在も使われている魔法は、エーテルリウムが体系を造った。

 神や神の残滓と呼ばれる存在は、詠唱を使わず魔法を使えたらしい。

 人でも魔法が使えるように、詠唱、魔法陣を使って神の奇跡を実行出来るようになった。

・彼等は精霊信仰を持っていた。マナの集積が精霊であり。精霊が現象を起こすと考えていた。

 サラマンダーが火を、ピクシーが風をといった具合である。

 そうであればマナが起こす現象が魔法ではないのか?という疑問に至り、

 体内のエーテルを媒介として、マナを集積し、結果をイメージして効果を得る。

 その様に1つ1つ生活魔法が生み出されて行った。


エルドリンははっきりソレンディルに告げる。

「魔法(神の奇跡)は無詠唱でした。無詠唱が扱えない、他種族の為に詠唱、魔法陣(詠唱紋)

 が造られました。無詠唱が生まれつきのギフトという考え方は、あながち過ちでありません。

 しかし、訓練する事で身に付ける事も出来ます。」

「魔法が無詠唱で造られた。・・・無詠唱は訓練で身につけられるのかい。」

「そうです。訓練で身につけられます。私が模擬戦で、戦闘中に見せましたよね。」

確かに自分の眼で見ている。……否定できない。

ハイエルフはエルフの祖ともされる種族だ、叡智を持っている。

しかし、無詠唱について今の解釈は初めて聞く話だ。


「それをあの一瞬、一瞬で使いこなしているなんてな。」

ガルムが模擬戦を思い返していた。


そして彼は続ける。

「エーテルリウムについては、全容が分からないのです。

 遺跡の街に行けば、何かヒントを得られるのではないかと考えています。」


「先程の武器は二人に贈った装備についてご説明します。

 ガルムの盾と鎧ですが、魔法鎧は物理的な耐久力が強く、貫かれたり、砕かれる事はありません。

 その上に、魔法攻撃を低減させる効果があります。魔法攻撃で死ぬことはないでしょう。

 それに身体機能にバフがかかります。鎧の重さを感じないのはその為です。

 最後にスタミナを補助されるので、長時間行動する事を想定されています。

 思いっきり暴れて下さい。

「こんな凄い物を、いいのか?」

「仲間になったんですから、遠慮しないで下さい。」


「私の杖も良いのかい。」

「ええ、文様による属性魔法の起動を早くしてくれます。

 魔法石の機能について実感したでしょう。

 無詠唱の訓練にも大きく役に立ちます。

 使って下さい。」


ソレンディルはエールを飲んで深呼吸をした。

ガルムは大人しく肉料理を食べながら、話を聞いていた。

シスターソフィアが言葉を繋いだ。


「私は、エルドリンからエーテルリウムの話を大分前に聞きました。

 初め凄く驚いたけど、訓練で無詠唱を身につける事ができました。

 お二人がエルドリンと一緒にパーティーを組むと、聞いて凄く喜んでます。

 よろしくお願いします。」


「こちらこそ、よろしくお願いするよ。」

「頼もしい男だ、早く依頼を受けたいな。」

ソレンディルとガルムは快く返事を返した。


ソフィアは常にソロプレイヤーで、死地を求めているようなエルドリンを心配していた。

そのエルドリンに経験豊かな仲間が出来る。

彼は変わって行くんじゃないかと期待していた。


ソフィアもモンクとして訓練の一貫で一緒に組んで依頼を受けた事もある。

彼女も無詠唱を習って、実戦で使えるようになっていた。


場が和んだところで、ガルムが提案した。

「しばらく腕慣らしに、近くの魔獣退治でも受けるか?」

「それはいいですね。……想像するだけで楽しみです。」

「盾の扱い方を稽古してくれ、使えるようになりたい。」

「楽しみですね。」

「エルドリン、無詠唱を教えてくれないかな。」

「もちろんです。」


ガルムとソレンディルは酔ったのか頬を赤らめ、楽しそうだ。

ソフィアは楽しい雰囲気に忘れられない夜になったと、喜んだ。


――こうして新しい仲間たちは、笑い声と共に夜を更かしていった。


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