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エーテルリウムの黄昏  作者: お茶どうぞ
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4、模擬戦


ガルムとソレンディルは昼食を食べに定食屋に向かった。


「ガルム、間違っても彼を死なせないようにね。」


「そんな事分かってるよ。――立会人はソレンディルに頼むが、いいか?」


「もちろん」


「魔法剣士か。……どんな使い手なのか想像もつかんな。」


「まったくだね。オーガに挑む人間なんて、相当変わり者か、数寄者だね。」


「面白そうな奴だって思う。」


そんな事を話し合いながら、昼食を済ませて冒険者ギルドに戻った。


二人はエルドリンの到着を待った。


正午、エルドリン・ファルコンが冒険者ギルドに現れた。

ガルムとソレンディルの姿を見つけると二人の前に進んで来た。


「待たせただろうか?」


「いや、ちょうどいい。準備は済んでる」


「それなら良い。少し待っていてくれないか、ギルドマスターに挨拶をしてくる。」


エルドリンは荷を解き、ローブを脱ぐと、装備が見えた。

軽装鎧を装備していた。胸当て、腰当て、脛当て、篭手。

獲物は長剣の刀のようだ。


一方、ガルムは兜と胸当てに篭手、脛当てを備え、片手にバスタードソードを握っていた。

魔剣イグニスソード、マナを集めると剣に火焔かえんの付与が施される。

ガルムの命を預けられる大切な相棒だった。


ガルムとソレンディルは、直径三十メートルの円形修練場へ移動した。


二階からエルドリンとギルドマスター、アルバートが降りてきた。


「こんにちは、今日の打ち合いの立会人はどうしますか?」


「私がやるよ。」


「よろしくお願いしますよ。」

アルバートが聞くとソレンディルが片手を上げて答えた。

"タンザナイト"クラスのソレンディルなら問題ないとアルバートは納得した。


ギルドマスターと多数の冒険者が観覧席から修練場を見守る。

エルドリンが修練場に入る。


「良いかい、ルールは簡単。魔法も魔法武器も制限なし。

 ただし観客に危害が及ぶ魔法は禁止。

 攻撃が致命傷の際は私が止める。

 お互いに聞きたいことは?」


「目眩ましや、召喚魔法はいいかな。」


「問題ない。この広さじゃ召喚魔法は不利だろうけどね。他にあるかい?」


「ない。」「ありません。」


ガルムとエルドリンは互いの背を合わせ、十五歩進んで振り返り、お互いの武器を抜き構える。

ガルムは巨大なバスターソードを上段に構え、エルドリンは二メートルを超える片刃の剣を平青眼に構える。


「それでは――始め!」


ソレンディルの声と同時にエルドリンが一瞬で間合いを詰めた。

予備動作すらなく繰り出された三段突き――上段、中段、下段。

まるで閃光のような連撃。


「なっ!」


咄嗟に剣を立てて受けるガルム。

だが次の瞬間、左へ回り込まれ、振り下ろされた斬撃を篭手で弾く。

痺れる腕。オーガの膂力をもってしても、その一撃は異常に重かった。


バスターソードを薙ぎ払い、エルドリンと距離を取るガルム。


(今のは……何だ!? あの速さ、人間の動きじゃない!

 それにこの剣圧……!)


内心驚いていたが、その気持を振り切って次の攻撃に備えた。


ガルムはマナを剣に集める。剣が赤く炎が走る。

刀を振る度に、灼熱の火焔風が放たれる。

左、右と炎を撒き散らし、左右に回り込まれる事を防いだ。

エルドリンの正面からの一撃を誘う。


にやりと笑うガルムに応じ、エルドリンが再び縮地の如き目にも止まらぬ踏み込みで、飛び込んだきた。

斬馬刀とバスターソードが激突する。


火花が散る。鍔迫り合いの重圧に、ガルムの額に汗が滲む。


(細い刀が折れない……!?この剣圧、ただ者じゃあない!)


次の瞬間、エルドリンは前蹴りで距離を開き、次の瞬間に突きを繰り出した。

辛うじて首を逸らして避けたガルムは背筋に冷たいものを感じた。


(……歴戦の勘で避けられたが、まともに受けていたら、首を貫かれていた!)


ガルムが放った炎が収まり、修練場を囲うように白い霧が立ち込め、ガルムの視界を覆っていく。


「目眩ましか……」


ガルムは今一度、集中力を研ぎ澄ます。

観覧席でソレンディルが息を呑む。


(無詠唱の風魔法……!太刀の硬度を魔法で強化?

 今の霧は氷魔法……。人間なのに膂力はオーガ並みだ。

 あの速さ……なんなの?こんな剣士、見たことない!)


霧の中、不意に横薙ぎがガルムに迫る。

ガルムが剣で受け止めると、背後からもう一撃振り下ろされる。

即座に剣を背中に回して攻撃を弾く。


ガルムが立ち直り構えると、次の瞬間、上部から殺気が迫る。


「上か!」

彼が見上げた先、五メートル上空から振り下ろされる片刃の剣。

剣は雷光が走り、光っていた。

バスターソードで受けると、全身を衝撃が走る。体が痺れる。


「うぉ~|」


あがなうようにガルムが吠える。

エルドリンが着地して横一閃に刀を振った――


「そこまで!」

ソレンディルの声が修練場に響いた。

エルドリンは寸前で刀を止め、ガルムはその場に膝をついた。


「はぁ……はぁ……はぁ……」

ガルムの荒い息、全身から汗が吹き出る。

(……一瞬、死ぬかと思った。

 電撃を纏った刀の一撃……あれは強烈だった)


「素晴らしい打ち合いでした。」

ギルドマスターが拍手しながら修練場に降り立ち、感嘆の息を漏らした。

打ち合いを見守っていた冒険者達も驚嘆の声を上げていた。


「怪我はしてない?」


「これくらい、怪我には入らん。」


ソレンディルの心配の言葉に、ガルムは短く答えた。


「エルドリン、差し支えなければ、先程の攻撃を説明してもらえますか?」

ギルドマスター、アルバートが先の猛烈な戦闘について訪ねました。

エルドリンはその言葉に静かに頷いた。


「最初の突進は無詠唱の風魔法を使いました。

 三段突きは囮で、本命は上段の振り下ろしでした。

 力比べでは押し込みきれなかったので、一旦退きました。

 必殺の突きは外されてしまいました。

 その後、氷結魔法で目隠しして、ジャンプして電撃魔法を刃に纏わせて体勢を崩す事に成功しました。

 最後の横薙ぎで止められました。」


「恐ろしい攻撃だね。」


エルドリンが表情も変えず淡々と話すその姿に、アルバートは唖然としてしまった。

ガルムは呼吸を落ち着かせて、立ち上がった。


「大した魔法剣士だな。……人間でこれ程腕の立つやつは見たことない。

 あの突きを躱したのはマグレだ。この勝負、俺の負けだ。」


ソレンディルが慌てて口を挟んだ。


「無詠唱なんて、誰に習ったの?

 扱えるエレメントはいくつなの?」


エルドリンは矢継ぎ早に質問され、少し苦笑した。


「やはり気になりますか。――色々込み入った事情があります。

 この後、お時間をいただければ、お話ししましょう。」


ガルムとソレンディルはこの謎多き男の素性を知りたくて、うずうずしていた。


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