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エーテルリウムの黄昏  作者: お茶どうぞ
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4、模擬戦


ガルムとソレンディルは昼を済ませて冒険者ギルドのソファーで寛いでいた。


「間違っても死なせないでね。」

「それは分かってる。相手が人間だからな。立会人はソレンディルに頼むがいいか?」

「それは問題ないわよ。」

「剣士で魔法を使う元騎士団、エルドリン・ファルコンはどんな使い手なのか予想出来ない。」

「まったくね。オーガに挑む人間って相当変わってる。」

ガルムとソレンディルはエルドリンを待ちながらそんな会話を交わした。



正午になるころエルドリン・ファルコンが馬に乗って現れた。


「すまない。待たせただろうか?」

「いや、食事を済ませて寛いでた。」

「準備は済んでるって事でいいかな。」

エルドリンは馬を繋いで荷物を解いた。

ローブを脱ぐと彼の装備は軽騎士のようだ胸当て、腰当て、脛当て、篭手。剣。

一方ガルムは兜、胸当て。腰袋、脛当て、篭手、"イグニスソード"だ。


二人は直径30メートルあろうかという円形の修練場へ。

ソレンディルがついていく。

ギルドマスターと数人興味を持った冒険者が修練場の上部観覧席から見ている。


「お互い準備はいい?」

「おうよ!」

「出来てます。」

「使用しちゃいけない物はないけれど観客に危害を加える物は魔法、魔法武器であっても使用禁止。

 また人死が出そうな時には私が止めます。

 腕や脚が飛んでいっても治癒魔法を使うので気にしないで続けて。

 聞きたい事ある?」

「目眩ましや召喚魔法は使っても良いのでしょうか?」

「もちろんOK、この修練場サイズでは召喚魔法は有効と思えないけれどOK。他には?」

「ない。」

2人とも頷く。


「よろしい。では背中をつけて15歩歩いて。振り返った位置がスタート地点。

 私の声で始めるわよ。」


2人は背中を合せて15歩歩く。そして振り返りお互いの獲物を抜いた。

ガルムはバスターソード、エルドリンは片刃の弓なりに沿った2mはあろうかという斬馬刀に見える。


ガルムは上段に構える。エルドリンは中断より少し開く剣先をガルムの左拳に向ける平青眼の構え。


「始め!」

ソレンディルの声とともにエルドリンが音もなく距離を一瞬で詰める。予備動作も無く音もなく飛んで来る。突っ込んで来てフラッシュのような3段突き、上段、中断、下段。

同時に放たれたような速さだ。

ガルムはとっさにバスターソードを立てて弾く。

エルドリンは一瞬で左に回り、上段構えからガルムの右手を狙って振り下ろす。

ガルムは灼光の篭手でとっさに弾く。


腕が痺れる・・・


バスターソードを薙いで距離を取る。

エルドリンはバスターソードの届かない距離にバックステップする。


ガルムは驚きで頭が混乱している。

なんてやつだ!今何をしやがった?

あの距離を一瞬で詰めやがった!

それにあの突き。

最後の上段は弾いたが人間の腕力じゃありえない重い一撃。


ガルムが袈裟に構える。

"イグニスソード"の握り手にある灼熱の魔石を握る。

刃には炎の紋章が浮かび上がり火焔風が放たれる。

火焔風は灼熱の温度を持った熱風で離れた相手にダメージを与える。

ガルムはエルドリンの左右に火焔風を放ちエルドリンを左右に逃さず正面からの打ち込みを誘う。

エルドリンが上段に構えた。

ガルムはにやりと笑った。


次の瞬間エルドリンが先程の"縮地"を見せ突っ込んで来た。

そして上段から大刀が振り下ろされる。

ガルムは逆袈裟斬りの形でそれをバスターソードで受けた。

ガルムは力比べを誘ったのである。


オーガのガルムが人間種に力比べで負けるわけにはいかない。

しかしのこの上段は重い。それにバスターソードより細いエルドリンの太刀が折れない!

ガルムに焦りの色が出る。


ガルムが振り抜いた。

エルドリンはふわっと浮き上がり着地した。


ガルムから距離を詰めて上段の打ち込みを入れた。

上段の鍔迫りで両者が迫るがエルドリンの前蹴りでガルムは後ずさる。


エルドリンはガルムの左腕狙いと見せて踏込んで上段の突きを入れた。

ガルムは歴戦の感で首を捻って突きを避ける。


再び離れる2人。


ガルムは焦りながら自分を落ち着けさせる。

今のはやばかったな。

踏込みを見れば突きの威力も分かる。

足元にはエルドリンの”右足の足跡”が残っている。

まともに首を貫かれたら死んでいたかもな。



白い霧が足元から高さ3メートル程をうっすら広がり目隠ししてくる。

「目眩ましか。」

ガルムは中段に構えたまま集中力を上げる。


ソレンディルは驚いていた。

エルドリンが最初に使った飛躍は風魔法を無詠唱で使っている。

マナの動きでそう見えた。太刀が折れないのも何か魔法を使っているはずだ。

この目くらましは氷魔法。

それにオーガとまともに打ち合える膂力。先も2メートルを超えるガルムを蹴りで後退させた。

騎士団出身?優れた剣技はそうかも知れない。

それにしてもなんだ!?あの3段突きは!

あんな技を扱える人間の剣術士と会ったことがない!


ガルムは集中力を上げながら内心興奮していた。

こんな面白い事に出会えるなんてな。

強いやつと戦う時の死線を渡る感が戻ってきたぜ。


シュッっと横薙ぎの音がする。バスターソードで受け止める。

今度は後ろでシュッと音がする。背中にバスターソードを回す。

今度はキンッと音がした。


ふわっと眼前に何かが舞い上がるような感覚。

ガルムは本能で見上げ上段にバスターソードを構えた。

見上げるとそこにはエルドリンがガルムの直上2メートルから上段を構えて降って来る。

体重を乗せた一撃だ。

ガルムはそれを受け止める。

剣同士がぶつかった瞬間、頭の先から脚の先まで全身が痺れる。

「ゥ~ガァ~」

ガルムが吠える。


着地したエルドリンが全力で横薙ぎの一閃、ガルムは痺れて対応が出来ない。


「そこまで!」

ソレンディルが止めた。


は振り抜かず剣を止める。

ガルムがその場に膝から崩れた。


息が上がり全身から汗が吹き出す。

最後の横薙ぎの一閃。

あの速度、タイミング死ぬかと思った。


ギルドマスターが降りてきて修練場に来ていた。

「何がなんだか凄い戦いでしたね。」


皆2階の応接室に移動した。

「ガルムさん怪我はありませんか?」

「これぐらいは怪我に入りません。」

ギルドマスターの問にガルムが答える。


「すみませんがさっきの戦い何があったか教えて頂いてもいいでしょうか?」

ギルドマスターがエルドリンに尋ねる。


「初めに私がしかけたのは無詠唱の風魔法"ゲストオブウインド"による突風を使った特攻でした。

 3段突きはフェイントで本命は弾かれましたが上段をねらっていました。

 力比べで撃ち合いましたが私が負けましたのでフライで後方へ。

 その後の突きはガルムさんに読まれて外しました。

 そして霧を氷魔法で造りました。

 ガルムさんに氷の塊を投げて、上空にフライで上がり。

 剣に雷魔法を付与して痺れさせて最後の一撃で終わりになりました。」


「3段突きが踏込んだ一撃なら剣ごと弾かれていたかもな。

 左へ回る動きにも迷いがない。

 それにしても恐ろしい突きだったよ、かわせなかったら死んでたかもな。

 最後の横薙ぎ、背筋に走るものがあった。

 人間でそれだけ強ければシングルプレーヤーでもやっていけるだろう。

 俺の負けだ。」


「大体無詠唱って誰にならったの?魔法はどれくらい知ってるの?」

「まぁそういう質問になりますよね。

 色々を混み合った話しなんです。お時間がありましたら聞いていただいても良いですか?」


ソレンディルの問にエルドリンはそう答えた。



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