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この世界で、もう一度  作者: 霜月
第一章 『スタート・アゲイン 409』
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第一章 9 『魔力は災いの元』

アモンの名前をマモンに変更。

マモンの権能の名前を変更。

ウェッレ→テロー

 カイセンが目を覚ます。


「朝か」


 部屋を出る。

 すると、そこにはナインが立っていた。


「おはようございます。シエル様が鍛錬場に集まるようにと」


「そうか、わかった」


 鍛錬場に移動する二人。

 そこにはシエルの仲間全員が集まっていた。


「何があったんだ?」


「それは、シエル様が皆が集まってから話すそうです」


 シエルが話し始める。


「皆さん、今日は朝早くから集まっていただきありがとうございます」


 外向きの喋り方で話を進める。


「昨日、シュテーレン・メヒテが決まりを破りました。詳しくは語りませんが、それを受けてシュテーレンをこの陣営から追放しました」


 皆が妥当な判断だと考える中、ナインは少し思うところがありそうな表情を浮かべる。


 シエルは話を続ける。


「シュテーレン・メヒテが裏切りとも取れる行動を行ったため、皆には私の権能で敵意があるかどうか確認させていただきます」


(シエルの権能ってそんなに便利なのか)


 シエルはナイン、テクスト、カイセン、ミナ、グリフの順で調べていく。

 そして次に、近接戦闘を得意とするエマ・ウェーバーを調べる直前だった。


 扉が強く開く。


「何者だ!」


 テクストが声を張る。


「何者って酷いじゃないの」


 そこに入ってきたのは、高価な衣服を纏った女。


 その女が入ってきた瞬間、シエルはわずかに動揺を見せる。


「アイン家の人間かしら? 跪きなさい。第一王女であるミレナ・レーヴェ・ケーニヒの御前よ?」


 ナインがミレナを見る。


(第一王女……)


「これはこれは、ミレナ様。いかなる理由でこちらに?」


 50代前半の見た目で、隙のない仕立ての衣服を身につけていた。

 シエル陣営の政治を担当している人間の一人、ヘリオス・ネヤルだった。


「あなたは……ああ、ヘリオス・ネヤルでしたっけ? 何をしに来たかって? そんなの決まってるじゃない! 私のシエルちゃんに会いに来たのよ」


 ミレナはシエルを見る。


「シエルちゃーん! 元気だった?」


「ミレナ姉様。今日はどういったご用で?」


 シエルの声は震えている。


 カイセンはそんなシエルを見て、わずかに眉をひそめる。


(シエルが……怖がっている?)


「え? ご用がなきゃ来ちゃいけないの? 私はただシエルちゃんに会いたかっただけ」


 ミレナは何かを思い出すように、配下を呼び出す。


「ベータ! あれ持ってきて」


「はい」


 若い男が菓子折りのようなものを持って入ってくる。


 それをミレナが受け取り、シエルに差し出す。


「はい! シエルちゃん、このお菓子好きだったでしょう?」


「ありがとうございます。私からも何かお返しがしたいのですが……」


「いや、いいのよ! 私はシエルちゃんを見たかったのと、もう一つ情報を伝えに来たのよ。強欲がこっちに向かって動き出したわ。目的はわからないけど、気をつけてね。元気そうだし、今日は帰るわね! バイバイ、シエルちゃん」


 ミレナは手を振りながら鍛錬場から出ていく。


 テクストは何も言わず、ミレナの後ろ姿を見送っていた。


 カイセンはその様子を見ながら思う。


(今のが第一王女。騒がしいやつだったな)


 * * *


 屋敷を出て、馬車を待つミレナと配下のベータ。


「あと数分で馬車が到着します」


「そう。わかったわ。それにしても、やっぱり可愛いわね。シエルちゃん!」


「どうして第三王女をそんなに気に入っていられるのですか?」


「シエルちゃんよ。第三王女なんて肩書きで呼ばないで」


「すみません。シエル様をどうして気に入られていられるのですか?」


「だって可愛いじゃない! 第二王女のローゼとは違い謙虚で、第一王子のイロン兄様とは違い少し儚い」


 ミレナは笑みを浮かべる。


「私の言うこともしっかり聞いてくれる。とっても純粋で、とっても可愛い。そして、とっても惨めな私のお人形」


 ミレナは話を続ける。


「勝てるわけもない王位継承戦に巻き込まれて、勝てるわけもないのに仕方なく足を踏み込む。小さい頃から鍛錬を続けて、剣と魔法の才を身につける」


 ミレナは小さなシエルを思い出す。


「それでもやっぱり惨めな妹。周りに集まるのは、何かしら欠けた落ちこぼればかり。私の命令には逆らえない、可愛いお人形」


 ベータはそれに反論も共感もせず、ただただ聞いている。


「私が導いてあげないと。決めてるのよ!」


 ミレナは笑顔を浮かべる。


「私が王になった暁には、シエルちゃんを私の元で飼ってあげるの。永遠にね」


 * * *


「強欲の魔族がこちらに向かっている……」


 テクストはその情報が正しいものと信じられない様子だ。


「強欲……。この前森にいた憂鬱みたいなもんか?」


(夢に出てきたガイツ・マモンもたしか強欲……)


 カイセンが疑問を口にすると、ナインがそれに応える。


「少し違いますね。強欲は、憂鬱が言っていた怠惰に近いです。魔族には七大魔族というものが存在していて、傲慢、嫉妬、憤怒、怠惰、強欲、暴食、色欲がおり、強さは第一柱など、数字が若い方が強いとされています」


(強欲は夢の中で第六柱って言っていたから、6番目に強いのか)


「そして、その七大魔族の上に立つのが魔王です。ですが、その姿を見たことがあるものはいないと言われています」


「魔王……」


 カイセンはその言葉を聞いて、少し考える。


「じゃあ、その七大魔族ってのは、魔王の命令で動いてるのか?」


「詳しくはわかりませんが、おそらく」


「へえ……」


 テクストは腕を組む。


「強欲は目的が全くわからないな」


「そうですね。目的が分からない以上、警戒しておく必要があります」


 シエルも口を開く。


「もちろん、私たちのところに来るかもわかりません。ですが、何が起きても対処できるようにしておいてください」


「了解した」


 テクストが頷く。


「僕も協力します」


 ナインも頷いた。


 こうして朝の集まりは終わった。


 それからしばらくの間、カイセンたちはいつも通り鍛錬を続けた。


 強欲の魔族が近づいている。


 その事実は皆の頭に残っていたが、今すぐ何かが起きるわけではなかった。


 やがて日が沈み、辺りが暗くなる。


 カイセンは自分の部屋へ戻っていた。


「今日は疲れたな……」


 ベッドに腰を下ろす。


 今日の朝に聞いた話を思い出す。


(強欲……ガイツ・マモン)


 あの夢に出てきた魔族。


 夢の中で、確かにそう名乗っていた。


(あいつが本当にこっちに向かってるのか?)


 考えても答えは出ない。


「……まあ、考えても仕方ねえか」


 カイセンはベッドに横になる。


 天井を見つめる。


「明日も鍛錬だな」


 そう呟き、目を閉じる。


 今日はもう眠ろう。


 そう思いながら、カイセンは眠りにつこうとしていた。


 その時。


 窓が破壊される音が響く。

 その音を聞き、カイセンは起き上がる。


「誰だ!」


「やっと着いたぜ」


 窓を壊して入ってきたのは、一人の男。


「お前がシュヴェアムートが言っていたカイセンっていうやつだな。なるほど、ものすごい魔力量だ」


「何の用だ」


 現れた謎の男は、もしかしたら強欲の魔族ガイツ・マモンなのではないのか。

 この男が夢と同じ言葉を言ったならば、予知夢という能力は確定するも同然だ。


「用は一つだ。お前に話がある」


 男はカイセンを見つめる。


「俺は七大魔族の第六柱、強欲のガイツ・マモン。お前、俺の配下にならないか?」


「配下になれだと? 人の部屋をぶっ壊しておいて、何言ってんだ」


 カイセンは呆れたように言った。


(夢の内容通りだ)


 目の前にいる男は、夢に出てきた男と同じ言葉を口にした。


「それは悪いことをしたな。だが、俺の配下に入れば、もっと広い部屋を与えるぞ。だから俺のものになれ、カイセン」


「まず、俺のことをどこで知った」


「シュヴェアムートのやつから聞いたんだよ」


「憂鬱の魔族か」


「ああ。あいつが言うには、魔力量の多いやつが二人、人間族にいるらしくてな。期待して飛んできたんだが……これはすごい。期待以上だ」


 マモンはカイセンを見ながら、楽しそうに笑う。


「魔力量だけなら、賢者を彷彿とさせる」


「もう一人っていうのは、ナインのことだろ。ナインにはもう会ったのか?」


「もう一人の、ナインっていうやつは魔力を抑えているようでな。お前は魔力を垂れ流しているから、すぐに見つけられた。凄まじい魔力量だ」


 マモンは右手を広げる。


「魔力がこの世の全てを凌駕する。俺のものになれ」


「俺は誰のものにもならない」


 カイセンはキッパリ断る。


「そう言うなよ」


 マモンは笑みを浮かべる。


「俺はこの世の全てが欲しい。物も、知識も、生命も、力も、大地も、空も……この世界を!」


 その声には、隠しきれない欲望が滲んでいた。


「全部、手に入れる」


 マモンは笑みを崩さない。


「さあ、もう一度言うぞ。俺のものになれ。悪いようにはしないぞ?」


「嫌だ」


「そうか」


 マモンは少しだけ目を細めた。


「だが、己の肉体は己の欲のために使う。それも一種の強欲だ。否定はしない」


 一度言葉を切る。


「だが、俺の強欲は、お前の強欲なんかじゃ満たされない」


「テロー」


 マモンが権能を発動する。


「グロブス・フランメ!」


 その瞬間、ナインが部屋へと入り、攻撃を仕掛けた。


「お前がナインか!」


 ナインは魔法を繰り出すために抑えていた魔力を解放し、その魔力量を見たマモンは興奮する。


「凄まじい魔力量だ!」


 しかし、目の前でグロブス・フランメが消える。

 その技は囮でナインはマモンに当たる前に、自ら消したのだ。


「あ?」


「消えろ。王牙流・連牙!」


 テクストが不意打ちを仕掛け、鋭い攻撃を連続して繰り出す。


「もっとも私としては不意打ちなどやりたくなかったのだが、相手が相手だ。仲間を失うくらいなら、名誉などいらない」


 しかし――。


 それを受けても、マモンは立ち上がる。


「避けろ! テクスト!」


 マモンが、先ほどまで持っていなかった斧を手に取り、テクストへ振りかざす。

 それをテクストは間一髪で避ける。


「チッ。避けたか。こんな楽しい空間に、ゴミが入ってきてんじゃねえよ。お前ーー魔力ねえだろ」


「は?」


 思わず声を漏らす。カイセンは、その言葉に動揺を隠せなかった。


(テクストに……魔力がない?)


「魔力がこの世の全てを凌駕する。これが俺のフィロソフィーってやつだ」


 そして、テクストを見つめる。


「つまり、魔力がねえお前は、この世界じゃゴミなんだよ」

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