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この世界で、もう一度  作者: 霜月
第二章 『第三次人魔戦争 409』
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第二章 3 『行く者』

誤字修正

それから一日が経った。


 人々が帰った賢星国家レグルスの王城に、現国王と王位継承候補の四人が集まっていた。


「よく集まったな。我が子らよ」


 現国王、リゴロス・レーヴェ・ケーニヒは、玉座に腰掛けながら四人を見下ろしていた。


 階段の頂上にある玉座を見上げ、跪きながらイロンが口を開く。


「父様、今日はどういったご用で」


「まずはイロンだ。第三次人魔戦争での指揮権を得たようだな。我が国のためにも、この世界のためにも、勝利を収めてこい」


「ありがたきお言葉。もちろん。勝利を勝ち取ってきます」


 リゴロスは、次にミレナへ視線を向ける。


「次にミレナ。お前に戦闘能力がないのは知っている。だが、お前は最も知能に優れている。その知能を活かして、勝利を収めろ」


「はい! 頑張ります!」


 そして、リゴロスはローゼを見る。


「ローゼ。お前は昔から、努力せずとも力を持っていた。配下にも、我が国が誇る騎士の名家、アイン家の長男がいる。戦争での活躍、期待しているぞ」


「もちろんです」


 ローゼは真面目な顔で答える。


「魔族を殺して、魔王を殺す。そうして、この国を勝利へ導きます。なにせ私は次期王ですから。期待していてください」


 イロンとミレナがローゼを睨む。


 しかし、ローゼは二人の視線を気にする様子もなく、ただ父親を見つめていた。


 最後に、リゴロスはシエルへ視線を向ける。


「シエルよ。お前は小さな頃から努力をしてきた。たしか配下にも、ナイン・レインとテクスト家の次男がいたな。七大魔族という点では、強欲を討伐している。期待しているぞ」


「はい。勝利を私と仲間で勝ち取ってきます」


 それだけ言うと、四人はそれぞれ王城を後にした。


 シエルは帰りの馬車を待つため、王城の外へ向かっていた。


「シエルちゃん! お疲れ様!」


 声をかけてきたのは、ミレナだった。


「ミレナ姉様。お疲れ様です。第三次人魔戦争では、お互い頑張りましょう」


「そうね。私はお父様が言っていた通り、戦闘能力はないわ。でも、この知能で勝利に導いてあげるわ!」


 ミレナは笑顔でそう言った。


 だが、その胸の内では別のことを考えていた。


(ああ、かわいい。かわいい。かわいい。かわいい。私の人形。箱に詰めて飾りたい。一生、私の屋敷で踊らせていたい。ああ……戦争で死なないといいけど……)


「それでは、馬車が来たので」


 シエルが会釈をし、馬車へ乗り込む。


「それじゃあね! 私のシエルちゃん!」


 ミレナは手を振りながら、笑みを浮かべていた。


 少し経つと、ミレナの馬車もやって来る。


「アルファ、運転ありがとね。ベータ、ガンマ、デルタ、イプシロンもついてきてくれたのね」


 ミレナは馬車に乗り込み、四人を見る。


「それじゃあ、帰りましょ。この戦争は、私が王になるための大事な催しなんだから」


 * * *


 あれから一日後。


 カイセン達は、相変わらず鍛錬を続けていた。


「オリジナル魔法……。何がいいかな」


 カイセンは鍛錬をしながら、オリジナル魔法について考えていた。


 その時、鍛錬場へシエルがやって来た。


 カイセンはシエルを見て、顔を曇らせる。


「今日も頑張ってるのね」


「シエル様。お疲れ様です」


 テクストが会釈する。


「テクスト達こそお疲れ様。今日は私もここで鍛錬をしようと思って来たの」


 王族といえど、シエルも鍛錬をする。


 普段はシエル専用の鍛錬場で修行しているが、今日は皆と一緒に鍛錬をしてみたいと思ったのだ。


「それじゃあ、私も混ざるね」


 そう言って、シエルは皆と共に鍛錬を始めた。


 それからしばらくして、全員がその日の鍛錬を終える。


「ふぅ……」


 シエルは息を整えながら、皆の様子を見ていた。


 そして、帰る直前にふと思う。


(みんな、適性値が上がってたりするのかな? 久しぶりに見てみようかな)


 シエルは権能『アナーゼ』を発動する。


 周囲にいる者たちの魔力適性を確認していく。


(ナインも、ゴウも、ミナ達も変わりないね)


 そして、カイセンへ視線を向ける。


(カイセンは……)


 その瞬間、シエルの目が少しだけ見開かれた。


(闇属性が70! 上がっている!)


「カイセン! あなたの闇属性適性値が上がっているよ!」


「本当か!」


「ええ、70になってる。まだまだ他の人と同じ適性値ではないけど、魔力量からして、そこらへんの騎士よりは強いよ」


「マジか!」


 カイセンは嬉しそうに笑った。


 鍛錬や実戦を重ねたからか。それとも、他の何かが影響したのか。


 理由は分からない。


 しかし、カイセンは着々と強くなっていた。


「それじゃあ、私は帰るね。残る人は頑張って」


 シエルは会釈をして、鍛錬場を後にした。


 カイセン達は、そんなシエルを見送る。


 その後も、鍛錬を続ける者は残り、終えた者はそれぞれ帰っていった。


 カイセンも今日はここまでにして、部屋に戻る。


 カイセンがシエルを見て顔を曇らせたのには、理由があった。


 昨日の夜、再び夢を見たのだ。


「久しぶりだね。カイセン」


 どこかで聞いた男の声だった。


「過去を見返せ」


 聞いたことのない男の声だった。


「ようこそ、俺の城へ」


 知らない男の声だった。


「やべえ……。これは死ぬ……」


 カイセン自身の声だった。


 そして今回の夢でも、最後だけ映像が見えた。


 以前とは違い、ナインやテクストは死んでいない。


 しかし、シエルだけは死んでいる。


 未来が変わったのかもしれない。


 だが、変わった未来ですら、シエルは死んでいた。


 その未来を見てしまったからこそ、カイセンはシエルを見た時、顔を曇らせたのだ。


(未来は変わったんだ……。シエルも救える)


 そう考えながら、カイセンは眠りについた。


 その後も、鍛錬の日々を送り――。


 六月二十日。


 カイセン達は馬車に乗り、カストルへ向けて出発した。


 到着予定日は六月三十日。


 馬車の中でも、それぞれが戦争に向けた準備を続けていた。


 そして、戦争の作戦もさらに具体的なものへと変更されていた。


 当初は、全戦力でカストルを攻略する予定だった。


 しかし、カストル攻略をすべての戦力で行う必要はないと判断され、作戦が変更された。


 賢人、賢者、そして各国から集められた戦力が、カストルの攻略を担当する。


 それ以外の戦力は、カストルを無視して中央荒野へ向かうことになった。


 ただし、レグルスの戦力については、さらに役割が分けられている。


 強欲の討伐に成功した実績を持つシエル陣営は、色欲――ヴォルスト・アスモデウスの封印を担当する。


 そして、その他のレグルスの戦力は、怠惰と傲慢の封印を担当することになった。


 こうして、人類側はそれぞれの戦場へ向かっていった。


 そして――日は満ちた。


 七月一日。


 予定より一日遅れたものの、一行は無事にカストルが目に入るところまで到着した。


「それでは、健闘を祈る」


 そう言葉を交わし、それぞれが進むべき場所へ向かっていく。


 カストルへ向かう者は、カストルへ。


 中央荒野へ向かう者は、足を止めることなく進み続ける。


 * * *


「よーし! そろそろ行くか!」


 ベルゼブブが立ち上がる。


「そうだね。行こうか」


 アスモデウスも立ち上がり、動き始める。


「はぁー、めんどくさ」


 ベルフェゴールは、数分かけてようやく動き始める。


「行くよ」


 アスモデウスが声をかけた先にいたのは――


「ハグノス」


 カイセンがレグルス王国で出会った少年。


「はーい!」


 その正体は、色欲の配下。


 ハグノス・カイ・オーモス。


「カイセンいるかなー?」

【キャラクター紹介】


ハグノス・カイ・オーモス


年齢:14歳

誕生日:5月5日

身長:160cm

体重:52kg

体格:小柄で細身

髪・目:黒髪・金色の瞳

一人称:僕

好きなもの:楽しいこと

苦手なもの:退屈

好きな言葉:一日一善

適性:雷

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