第二章 3 『行く者』
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それから一日が経った。
人々が帰った賢星国家レグルスの王城に、現国王と王位継承候補の四人が集まっていた。
「よく集まったな。我が子らよ」
現国王、リゴロス・レーヴェ・ケーニヒは、玉座に腰掛けながら四人を見下ろしていた。
階段の頂上にある玉座を見上げ、跪きながらイロンが口を開く。
「父様、今日はどういったご用で」
「まずはイロンだ。第三次人魔戦争での指揮権を得たようだな。我が国のためにも、この世界のためにも、勝利を収めてこい」
「ありがたきお言葉。もちろん。勝利を勝ち取ってきます」
リゴロスは、次にミレナへ視線を向ける。
「次にミレナ。お前に戦闘能力がないのは知っている。だが、お前は最も知能に優れている。その知能を活かして、勝利を収めろ」
「はい! 頑張ります!」
そして、リゴロスはローゼを見る。
「ローゼ。お前は昔から、努力せずとも力を持っていた。配下にも、我が国が誇る騎士の名家、アイン家の長男がいる。戦争での活躍、期待しているぞ」
「もちろんです」
ローゼは真面目な顔で答える。
「魔族を殺して、魔王を殺す。そうして、この国を勝利へ導きます。なにせ私は次期王ですから。期待していてください」
イロンとミレナがローゼを睨む。
しかし、ローゼは二人の視線を気にする様子もなく、ただ父親を見つめていた。
最後に、リゴロスはシエルへ視線を向ける。
「シエルよ。お前は小さな頃から努力をしてきた。たしか配下にも、ナイン・レインとテクスト家の次男がいたな。七大魔族という点では、強欲を討伐している。期待しているぞ」
「はい。勝利を私と仲間で勝ち取ってきます」
それだけ言うと、四人はそれぞれ王城を後にした。
シエルは帰りの馬車を待つため、王城の外へ向かっていた。
「シエルちゃん! お疲れ様!」
声をかけてきたのは、ミレナだった。
「ミレナ姉様。お疲れ様です。第三次人魔戦争では、お互い頑張りましょう」
「そうね。私はお父様が言っていた通り、戦闘能力はないわ。でも、この知能で勝利に導いてあげるわ!」
ミレナは笑顔でそう言った。
だが、その胸の内では別のことを考えていた。
(ああ、かわいい。かわいい。かわいい。かわいい。私の人形。箱に詰めて飾りたい。一生、私の屋敷で踊らせていたい。ああ……戦争で死なないといいけど……)
「それでは、馬車が来たので」
シエルが会釈をし、馬車へ乗り込む。
「それじゃあね! 私のシエルちゃん!」
ミレナは手を振りながら、笑みを浮かべていた。
少し経つと、ミレナの馬車もやって来る。
「アルファ、運転ありがとね。ベータ、ガンマ、デルタ、イプシロンもついてきてくれたのね」
ミレナは馬車に乗り込み、四人を見る。
「それじゃあ、帰りましょ。この戦争は、私が王になるための大事な催しなんだから」
* * *
あれから一日後。
カイセン達は、相変わらず鍛錬を続けていた。
「オリジナル魔法……。何がいいかな」
カイセンは鍛錬をしながら、オリジナル魔法について考えていた。
その時、鍛錬場へシエルがやって来た。
カイセンはシエルを見て、顔を曇らせる。
「今日も頑張ってるのね」
「シエル様。お疲れ様です」
テクストが会釈する。
「テクスト達こそお疲れ様。今日は私もここで鍛錬をしようと思って来たの」
王族といえど、シエルも鍛錬をする。
普段はシエル専用の鍛錬場で修行しているが、今日は皆と一緒に鍛錬をしてみたいと思ったのだ。
「それじゃあ、私も混ざるね」
そう言って、シエルは皆と共に鍛錬を始めた。
それからしばらくして、全員がその日の鍛錬を終える。
「ふぅ……」
シエルは息を整えながら、皆の様子を見ていた。
そして、帰る直前にふと思う。
(みんな、適性値が上がってたりするのかな? 久しぶりに見てみようかな)
シエルは権能『アナーゼ』を発動する。
周囲にいる者たちの魔力適性を確認していく。
(ナインも、ゴウも、ミナ達も変わりないね)
そして、カイセンへ視線を向ける。
(カイセンは……)
その瞬間、シエルの目が少しだけ見開かれた。
(闇属性が70! 上がっている!)
「カイセン! あなたの闇属性適性値が上がっているよ!」
「本当か!」
「ええ、70になってる。まだまだ他の人と同じ適性値ではないけど、魔力量からして、そこらへんの騎士よりは強いよ」
「マジか!」
カイセンは嬉しそうに笑った。
鍛錬や実戦を重ねたからか。それとも、他の何かが影響したのか。
理由は分からない。
しかし、カイセンは着々と強くなっていた。
「それじゃあ、私は帰るね。残る人は頑張って」
シエルは会釈をして、鍛錬場を後にした。
カイセン達は、そんなシエルを見送る。
その後も、鍛錬を続ける者は残り、終えた者はそれぞれ帰っていった。
カイセンも今日はここまでにして、部屋に戻る。
カイセンがシエルを見て顔を曇らせたのには、理由があった。
昨日の夜、再び夢を見たのだ。
「久しぶりだね。カイセン」
どこかで聞いた男の声だった。
「過去を見返せ」
聞いたことのない男の声だった。
「ようこそ、俺の城へ」
知らない男の声だった。
「やべえ……。これは死ぬ……」
カイセン自身の声だった。
そして今回の夢でも、最後だけ映像が見えた。
以前とは違い、ナインやテクストは死んでいない。
しかし、シエルだけは死んでいる。
未来が変わったのかもしれない。
だが、変わった未来ですら、シエルは死んでいた。
その未来を見てしまったからこそ、カイセンはシエルを見た時、顔を曇らせたのだ。
(未来は変わったんだ……。シエルも救える)
そう考えながら、カイセンは眠りについた。
その後も、鍛錬の日々を送り――。
六月二十日。
カイセン達は馬車に乗り、カストルへ向けて出発した。
到着予定日は六月三十日。
馬車の中でも、それぞれが戦争に向けた準備を続けていた。
そして、戦争の作戦もさらに具体的なものへと変更されていた。
当初は、全戦力でカストルを攻略する予定だった。
しかし、カストル攻略をすべての戦力で行う必要はないと判断され、作戦が変更された。
賢人、賢者、そして各国から集められた戦力が、カストルの攻略を担当する。
それ以外の戦力は、カストルを無視して中央荒野へ向かうことになった。
ただし、レグルスの戦力については、さらに役割が分けられている。
強欲の討伐に成功した実績を持つシエル陣営は、色欲――ヴォルスト・アスモデウスの封印を担当する。
そして、その他のレグルスの戦力は、怠惰と傲慢の封印を担当することになった。
こうして、人類側はそれぞれの戦場へ向かっていった。
そして――日は満ちた。
七月一日。
予定より一日遅れたものの、一行は無事にカストルが目に入るところまで到着した。
「それでは、健闘を祈る」
そう言葉を交わし、それぞれが進むべき場所へ向かっていく。
カストルへ向かう者は、カストルへ。
中央荒野へ向かう者は、足を止めることなく進み続ける。
* * *
「よーし! そろそろ行くか!」
ベルゼブブが立ち上がる。
「そうだね。行こうか」
アスモデウスも立ち上がり、動き始める。
「はぁー、めんどくさ」
ベルフェゴールは、数分かけてようやく動き始める。
「行くよ」
アスモデウスが声をかけた先にいたのは――
「ハグノス」
カイセンがレグルス王国で出会った少年。
「はーい!」
その正体は、色欲の配下。
ハグノス・カイ・オーモス。
「カイセンいるかなー?」
【キャラクター紹介】
ハグノス・カイ・オーモス
年齢:14歳
誕生日:5月5日
身長:160cm
体重:52kg
体格:小柄で細身
髪・目:黒髪・金色の瞳
一人称:僕
好きなもの:楽しいこと
苦手なもの:退屈
好きな言葉:一日一善
適性:雷




