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この世界で、もう一度  作者: 霜月
第二章 『第三次人魔戦争 409』
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第二章 2 『戦は一日にして成らず』

「鎮まれ」


 イロンの声が、ざわついていた広間を一蹴した。


 先ほどまで響いていた怒号や困惑の声が、少しずつ消えていく。


 広間に集まった者たちは、皆一様にイロンへと視線を向けた。


「カストルが魔族の手によって支配されたことは、もう分かったはずだ」


 イロンは周囲を見渡す。


 そこにいるのは、各国の代表者。そして、それぞれの国が誇る戦闘員たちだ。


 先ほどまでの混乱は、まだ完全には消えていない。


 しかし、ここにいる者たちは皆、戦うために集められた人間だ。


 いつまでも混乱しているわけにはいかない。


「ならば、我々が取るべき行動は一つ。これから起こる戦争への対策を講じることだ」


 イロンの言葉に、周囲から小さく頷く者が現れる。


「確かに、その通りだ」


 そう同意したのは、商国ルプスが誇る騎士団、その団長。


 チーフ・エリモルだった。


「ここにいる者たちをまとめる役目は、君に任せるよ。イロン殿」


 チーフの言葉に、イロンは僅かに目を細める。


「ありがたい判断だ。しかし、なぜ?」


「決まっているだろう」


 チーフは周囲を見渡した。


「この戦争の指揮を執る者には、それ相応の権限が必要になる。ならば、この場にいる者の中で、君が適任だ」


「……なるほど」


 イロンは一度、周囲にいる各国の代表者たちを見る。


 誰も異論を唱える様子はない。


 それを確認すると、イロンは静かに口を開いた。


「しかし、私がこの戦争を統率するということは、この戦争で得られる利益の大半をレグルスが得ることになるが?」


「分かっているとも」


 チーフは即答した。


「そもそも、第一次人魔戦争で最も大きな活躍を残したのも、賢星国家と呼ばれる前のレグルスだと言われている」


「……そうか。ならば、ありがたく頂戴しよう」


 その言葉とともに、第三次人魔戦争における人類側の指揮権は、レグルス王国へと渡った。


「ではまず、第一次と第二次について振り返らせていただく」


 指揮権を得たイロンは、すぐに本題へと入った。


「第一次人魔戦争。賢歴二千四百八十七年に起きた戦争だ」


 イロンの声が広間に響く。


「この戦争で勝利したのは人間。そして、人類側が収めた最大の功績は――七大魔族、全員の討伐だ」


 その言葉に、周囲から僅かにざわめきが起こる。


「そして第二次人魔戦争。賢歴二千五百八十七年に起きた戦争だ」


 イロンは続ける。


「その戦争では、死んだはずの七大魔族が突如として復活した。それは突然の復活だったため、人類側は対応することができなかった。そして――人間は敗北した」


 広間が静まり返る。


「ここで問題となるのが、七大魔族の性質だ」


 イロンは一拍置いた。


「先ほど話した通り、七大魔族は一度討伐されたにもかかわらず、第二次人魔戦争で復活した」


「復活に限度があるのか。それとも無限なのか。それについては、未だに分かっていない」


 イロンは淡々と言葉を続ける。


「その性質から、七大魔族は『不死の魔族』とも呼ばれている」


 そして、イロンは今回の戦争において重要となる話へ移った。


「その対策として作られたのが、封印魔法だ」


 その言葉に、一部の者が反応する。


「この魔法は上位階級にしか伝えられていない。七大魔族を討伐するのではなく、封じることで復活そのものを防ぐための魔法だ」


 イロンは一度、言葉を切った。


 そして、その魔法を生み出した人物の名を口にする。


「作成者は――大賢者、メシアス・アルム」


 その名が、広間に響き渡った。


 すると――。


「そもそも、大賢者はどうした!」


 一人の男が声を上げた。


「なぜこの場にいない! 二人は今も生きているだろうが!」


 その言葉に、周囲からも同意の声が上がる。


「大賢者ヴァイゼ・ゲシヒテは『くだらん』と断ったらしいぞ!」


「大賢者メシアス・アルムはどこにいる! 誰もあいつの居場所を知らんのか!」


「ふざけるな!」


「何を考えているのだ!」


「本当は弱いんじゃないのか!」


 次々と声が飛び交う。


 再び広間が騒然とし始める。


「鎮まれ!」


 イロンが再び声を張った。


 その一喝で、広間は再び静まり返る。


「この場には、賢人は一人、賢者は二人も来ている。今は過去最高の人数だ」


 イロンは、集まった人々を一人ずつ見渡す。


「さらに、獣人の力も借りられる」


 そして、言い切った。


「それ以上を求めて、どうする」


 誰も、言い返すことはできなかった。


「では、次に誰がどの七大魔族を担当するかだ」


 イロンは話を先へ進める。


「現在、封印もされておらず、生きている七大魔族は五人。傲慢、怠惰、暴食、色欲、嫉妬だ」


 イロンは、五つの名を一つずつ口にする。


「憤怒は大賢者メシアス・アルムが、封印魔法の実験で封印した」


 そして、もう一人。


「強欲は、第三王女のシエルとその配下が、封印に失敗したものの討伐した」


 その言葉に、何人かがシエルの方へ視線を向ける。


「ならば、我々エイリが暴食と嫉妬を担当しよう」


 チーフが名乗りを上げる。


「ならば、私たち賢者と賢人、各国の戦闘員は怠惰を担当しようか」


 そう話したのは、一人の賢者だった。


「分かった」


 イロンは頷く。


「ならば、私たちが傲慢と色欲を担当する。そして、全てを封印し終えたら、残った戦力で魔王を討伐する。それでいいか?」


 イロンは広間を見渡す。


 誰も異論を唱えない。


「これはあくまで予定だ。今の割り振りを無視して、見つけた七大魔族を相手にしてもらってもいい」


 こうして、第三次人魔戦争へ向けた話し合いは進み、その日は終わった。


 翌日。


「昨日はすごい日だったな」


「そうですね。戦争は一ヶ月後……。はっきり言って、僕は戦争なんてやりたくないんですけどね」


 カイセンとナインは、鍛錬場で話をしていた。


「戦争が近いんですから、今日からはいつも以上に厳しい修行をしますよ」


「おう!」


 カイセンは気合いを入れる。


 まず始めたのは、アメノイワトの安定化だった。


 これまでは、発動するだけでも魔力の消費が大きく、維持することも難しい。


 戦闘中に安定して使えなければ、実戦では使い物にならない。


 だからこそ、今のうちに欠点を潰す必要があった。


 修行方法は単純だ。


 発動する。


 維持する。


 消えたら、また発動する。


 そして、気絶したなら、目を覚ました後にまた発動する。


 何度も、何度も繰り返す。


 カイセンへの負担は、とてつもないものだった。


 それでも、カイセンは修行をやめなかった。


 戦争が一ヶ月後に迫っている。


 その事実が、カイセンを動かしていた。


 その間、ナインもまた修行を続けていた。


(僕ももっと強くならなくては……。もしかしたら、あの日の魔族もいるかもしれない……)


 ナインは、かつて失った友人のことを思い出しながら、魔力を集中させる。


 過去の恐怖を振り払うように、何度も魔力を練り上げていく。


 やがて、カイセンは魔法の修行を終え、次は剣術の修行へと移った。


 最近、カイセンがダインスレイヴを使うことは減っている。


 それでも、剣術を学んでおいて損はない。


「昨日、お前の兄ちゃんっぽいのがいたよな」


「ああ。あれが私の兄、リベル・アインだ」


 カイセンとテクストは、剣を交えながら話をしていた。


「……仲悪いんだっけか?」


「難しいな。兄は私を軽蔑していた。しかし、嫌われていると感じたことはなかった」


 テクストは剣を振る。


 カイセンはそれを受け止め、後ろへ下がった。


「そもそも、軽蔑していたというのも、私の思い違いなのかもしれない。幼い頃の私の記憶は、優しい兄のことばかりだ。『一族の恥が』と言われた記憶もあるが、それは追い詰められた私が、そう受け取ってしまっただけなのかもしれない」


「難しいな」


 カイセンは、あまり理解できていない様子だった。


「そうだろう。貴族というのは、難しいものだ」


 テクストは少し笑った。


「なら、捨ててみたらどうだ?」


 テクストは疑問の表情を浮かべる。


「何を?」


「貴族の地位をだよ。邪魔なら捨ててしまえよ」


 その言葉に、テクストは笑ってしまう。


「流石に捨てられないさ。私はアインの人間として生きるのが苦痛なわけではない。むしろ、堂々とアインを名乗れるように努力しているほどだ」


「そうなのか。なら、お互い頑張らないとな!」


「そうだね」


 二人は会話を続けながら、剣を交えていた。


「そういえば、目はもう慣れたのか?」


「ああ。最初は違和感があったが、今では以前と見劣りしないくらいには動けるようになった」


「そうか。なら、よかった」

【キャラクター紹介】


イロン・レーヴェ・ケーニヒ


年齢:24歳

誕生日:7月11日

身長:180cm

体重:72kg

体格:細身で引き締まっている

髪・目:金髪・深い青紫

一人称:私

好きなもの:槍

嫌いなもの:無能

好きな言葉:勝利


適性:土

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