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この世界で、もう一度  作者: 霜月
第二章 『第三次人魔戦争 409』
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第二章 1 『二度あることは三度ある』

誤字修正

 賢歴三千二十四年六月一日。


 この日、賢星国家レグルスの王城に、全世界の人類側戦力が集う。


 議題は、第三次人魔戦争。


 王城の広間。


 そこには、大きな円形の空間が作られていた。


 壁際には各国の代表者や護衛が立ち並び、その中央には、今回の話し合いに参加する権力者や戦闘員が集まっている。


 そして、広間の中央。


「どういうことだ。なぜカストルの戦力が一人もいない」


 そう声を上げたのは、リベル・アイン。


 アイン家の長男、テクストの兄である。


 リベルの視線の先。


 そこにいるはずの人間が、いない。


 カストル帝国の代表者。


 その護衛。


 そして、カストルが誇る戦闘員たち。


 誰一人として、この場にはいなかった。


「確かに妙だな」


「カストルはまだ来ていないのか?」


「もう始まるぞ」


 周囲からも疑問の声が上がる。


 リベルの言う通り、カストルから来た人間は一人もいなかった。


 言わずもがな、異常事態だ。


 カストルは、もともと交流的な国ではない。


 他国との交流も少なく、外の世界に積極的に関わる国ではなかった。


 だが。


 戦争となれば話は別だ。


 第一次人魔戦争。


 そして、第二次人魔戦争。


 どちらの戦争でも、カストルは積極的に参加していた。


 それほどまでに、人類側にとってカストルは重要な戦力だった。


「何かあったのか?」


 誰かが呟く。


「いや、考えすぎだろう」


 別の者が答える。


「単純に遅れているだけかもしれない」


 その言葉に、何人かが頷く。


 リベルも、今はそれ以上追及することはしなかった。


 しかし。


 胸の奥に残る違和感だけは、消えなかった。


 そんな国が。


 第一次も。


 第二次も。


 人類側として戦った国が。


 なぜ今回だけ、誰一人として姿を見せないのか。


 そして。


「カストルの国旗を掲げた馬車が今到着しました!」


 衛兵の報告が、広間に響き渡った。


 その瞬間。


 広間にいた者たちは、揃ってそちらを見る。


 王城の入口。


 カストルの国旗を掲げた馬車から十三人降りてくる。


「来たか」


「ようやく到着したんだな」


 先ほどまで漂っていた緊張が、少しだけ和らぐ。


 リベルも、小さく息を吐いた。


 どうやら余計な心配だったらしい。


 先頭に立っていた男は鋭い目つき。


 そして、少し人間離れした赤い肌。


 その姿を見た者たちは、一瞬だけ戸惑う。


 だが。


 すぐに納得した。


 獣人だ。


 カストルは、賢星国家の中でも特に獣人文化が根付いている国。


 獣人が代表者として現れること自体は、何も不思議ではない。


 彼らは何も言わず、広間へと歩いてくる。


 その姿を見ながら、リベルは考えていた。


 ――妙だ。


 何かがおかしい。


 だが、その正体が分からない。


 そして。


 十三人の先頭に立つ男が、広間の中央へと歩み出た。


 誰もが彼を見る。


 男は周囲を見渡し――。


「今から一ヵ月後、我ら誇り高き魔族は、第三次人魔戦争の宣戦布告をする」


 その言葉を聞いたコンマ数秒後、真っ先に動いたのは、第一王子、イロン・レーヴェ・ケーニヒだった。


 イロンの手に魔力が集まる。


 次の瞬間。


 槍が、魔法によって生成された。


 そのまま、宣戦布告をした魔族へと踏み込む。


 槍が振り抜かれた。


 そして――。


 魔族の心臓を貫いた。


「……ッ」


 魔族の身体が大きく揺れる。


 直後。


 その身体が爆発した。


 爆風が広間を走る。


 だが、爆発そのものの規模は大きくない。


 周囲の者たちはすぐに体勢を立て直す。


 しかし。


「あーあ。死んじゃった」


 爆発したものとは違う魔族が、


「我らは七大魔族の第一柱、傲慢のアロガンツ・ルシファー様の配下達、『テューマ』」


 その言葉に、広間の空気がさらに張り詰める。


 イロンは再び槍を構える。


 そして。


「――消えろ」


 二体目の魔族を、槍で刺し殺す。


 魔族の身体が爆発する。


 リベルは、その光景を見ながら冷静に思考していた。


(あと十一体……)


 リベルは周囲を見渡す。


 この場所には、王位継承候補。


 各国の代表者。


 そして、各国を代表する戦闘員たち。


 これだけの人間が集まる場所で、さらに爆発が起きればどうなる。


(おそらく、死がトリガーになっている爆発つきか)


 爆発の範囲は大したものではない。


 だが、ここは王城の中。


 逃げ場が限られている。


 建物の内部で連続して爆発すれば、話は変わってくる。


 必然的に皆が取った行動は――。


 主人を守ること。


 テクストやカイセンは、シエルを。


 第二王女、ローゼの配下であるリベルは、ローゼを。


 イロンは配下を持たない主義だから、自分自身を。


 それぞれが己の欲のために動く。


 その場にいた者たちが、それぞれの守るべきものの前へ立つ。


 魔族から目を離さない。


 次に何が起きても対応できるように。


 幸い、魔族の爆発のトリガーは死。


 ならば。


 何もしなければ、害はない。


 ――そう思われた。


 しかし。


 その直後。


 ドンッ!!


 十体全員が、同時に爆発した。


「――ッ!」


 先ほどまでとは比べものにならない爆風が、広間全体へと広がる。


 立っていた者たちは、それぞれ身を低くする。


 誰かが誰かを庇い。


 誰かが魔法で爆風を防ぐ。


 広間の中を爆風が駆け抜け、何名かの戦力者が負傷する。


 そして。


 爆発の煙が晴れていく。


 そこには、最後に残った一人の魔族が立っていた。


 その魔族は、ゆっくりと口を開く。


「戦争の場は中央荒野だヨ」


 余裕のある声だった。


 その言葉に、何人かが身構える。


 だが、魔族は気にする様子もなく続けた。


「もちろん。カストルの転移魔法陣の場所は封鎖済ミ。頑張ってきてネ」


 その言葉と同時に。


 最後の一人も爆発した。


 静寂。


 誰も、すぐには言葉を発しなかった。


 カストルは魔族に乗っ取られていた。


 ならば。


 今回、カストルから誰一人として来なかった理由も。


 今ここへ十三体の魔族がやって来た理由も。


 すべて繋がる。


「今すぐにカストルに連絡を入れろ!」


 商国ルプスの騎士団、エイリの団長が声を張る。


 すぐに念話による通信が試みられる。


 この世界の連絡手段は、念話か手紙。


 今回、招く際は、手紙を使った。


 何度も試みる。


 だが。


 繋がらない。


 繋げる相手が見つからない。


 その結果を聞いた者たちは、誰も口を開かなかった。


 それはつまり。


 カストルが魔族の手に落ちたという事実を、裏付けるものだった。


 カストルが一体いつから魔族に落ちていたのか。


 つい最近なのか。


 それとも――。


 昔からなのか。


 その答えは。


 * * *


 大きな机を囲むように、七つの椅子が並べられている。


 そのうち四つには、誰かが座っていた。


「でさー、でさー。なんで乗っ取りしてた事言っちゃうわけ?」


 見た目は幼い男。


 喋り方も子供のようで、椅子に座っているというのに足が地面に届いていない。


 その男の正体は――。


 七大魔族の第四柱、暴食の魔族。


 フェレライ・ベルゼブブ。


「いいじゃないか。間抜けな人間達にはこれくらいのハンデを上げなくては」


 そう言ったのは、圧倒的な顔立ちを持つ男だった。


 理想的な身体。


 声すらも美しい。


 その正体は――。


 七大魔族の第三柱、色欲の魔族。


 ヴォルスト・アスモデウス。


「前回の第二次人魔戦争が起きたのは四百三十七年前。その長い期間乗っ取られていることに気づかないんだからさ」


「今回も僕はやらなくていいよね?」


 気怠そうに話す男。


 その正体は、七大魔族の第二柱。


 怠惰の魔族、ファウルハイト・ベルフェゴール。


「いや、ダメでしょー。ベルルが第二次の時に戦わなかったの忘れないからね?」


 ベルゼブブの愚痴に、アスモデウスは同意する。


「本当だよ。あれに関してはとてもムカついた。そうだろう?」


 アスモデウスが、自分の配下を見る。


「えー。僕はそんな前から生きてるわけじゃないので、わかんないや」


 そう聞き、アスモデウスは過去を見返す。


「……そういえばそうだったな」


「でもなんで中央荒野なの? どんどん侵略していけば良くない? 第二次でカストルだけ乗っ取ったのも、よくわかんないしさ」


「不利な状況で勝っても俺は嬉しくない」


 ベルゼブブの疑問に対し反応したのは一人の男だった。


「一方的な侵攻ではなく、一方的に、完膚なきまでに、蹂躙したい」


 男は、静かに笑う。


「その瞬間に見る人間の顔が、俺の喜びとなるから――な」


 七大魔族の第一柱。


 傲慢の魔族。


 アロガンツ・ルシファー。


 第三次人魔戦争は、もう止められない。


 どちらかが何かを失うまで。


 戦争は――。


 終わることはない。

【キャラクター紹介】


リベル・アイン


年齢:24歳

誕生日:6月6日

身長:181cm

体重:74kg

体格:細身で引き締まっている

髪・目:茶髪・赤

一人称:私

好きなもの:不明

苦手なもの:なし

好きな言葉:不明

所属:ローゼの配下


適性:炎

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