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この世界で、もう一度  作者: 霜月
第一章 『スタート・アゲイン 409』
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第一章 14 『会うは別れの始め』

 マモンを倒したテクストは床に膝から倒れ落ちる。


(封印をしたかったが私はやり方を知らないからな……。まずい、意識が……)


 倒れ込んだテクストには違和感があった。


 左目に手を当ててみると、先ほどまでなかった切り傷ができており、左目はもう何も映していなかった。


(代償は貰ったぞ)


 その一言だけが頭の中で響いていた。


 その時、アメノイワトが解除され、カイセンとシエルが戻ってきた。


「シエル様! ご無事で何よりです」


 自分の方が傷が酷いことなど気にせずテクストはシエルの心配をする。


「大丈夫!? テクストは無事なの? 左目が!」


 シエルはテクストの目の傷や体中を見て慌てる。


「はい。しかし、私は封印魔法が使えず、強欲は息絶えました。拘束などの手を考えずに行動してしまい、申し訳ありません。」


 その失敗にシエルは怒ることなく、優しく接する。


「いや! 大丈夫だよ。よく頑張ったね。あとは任せて」


 その言葉を聞いたテクストは安心して気を失う。


 シエルがテクスト達をどうやって馬車まで運ぶかを迷っていた時、部屋の入り口で気絶していたミナが意識を取り戻す。


「あれ……。シエル様! 大丈夫ですか?」


 そんな会話をしている時、後ろの方から足音が聞こえる。


 その足音の正体は意識を取り戻したゴウが走って来る音だった。


「大丈夫ですかー! シエル様!」


 皆が最初にシエルの心配をしてくれることにシエルは少し喜びを感じつつ、「大丈夫」だと返事をした。


「他のみんなは大丈夫かな?」


 その言葉を聞きミナの顔が一気に暗くなる。


「申し訳ありません……。私の実力不足でグリフが魔族の手で……」


 それ以上言葉を続けなくとも全員理解した。

 生きたグリフにはもう会えないことを。


 暗い雰囲気で立ち止まるわけにいかず、ゴウが、気絶したテクストとカイセンを担ぎ帰ることになった。

 他の部屋でナインを見つけ、ナインもゴウが担いだ。


 グリフの死体は腐らないように水の応用で氷を出して親族の元まで運ぶことにした。


 被害は大きくとも目的は達成した。

 封印自体はできなかったが、七大魔族の討伐という、王国から提示された条件は達成したはず。


 シエル達は馬車に乗り中央荒野を出てカストルにある転移魔法にてレグルスへ帰還した。


 * * *


 シエル達が魔城マインスを出た少し後。


「やっと出られた……」


 レヴィアタンは魔力が尽きていたため入る時にカスマを使えても、出る時の魔力は残っておらず、魔力の回復に時間を取られていた。


「マモンのところに行かなくては!」


 そう言うと残り少ない体力で走り、最後にマモンを見た部屋に行く。


 その部屋を見たレヴィアタンは唇を噛み、涙を流す。


 レヴィアタンの目に映っていたのはマモンの死体。


「嘘だ。嘘だ。嘘だぁ!」


 現実を受け入れない。

 しかし目の前の光景は変わらない。

 何度瞬きをしても、マモンは立ち上がってくれない。


「許さない。許さない。許さない」


 今のレヴィアタンにある感情は大きく分けて三つ。


 悲しみ。


 怒り。


 そして、嫉妬。


 自分は最も大切な人を奪われたのに、大したものを失っていない者への嫉妬。


「あのクソ女ども……絶対に殺してやる……絶ッ対に殺してやる……!!」


 その悲鳴のような叫びは誰にも届かない。


 * * *


 レグルス王国に帰還した一行は、疲れを取るために休憩の時を過ごした。


 仲間の死などを思うと休んでいられない気もしたが、肉体も限界であり、そうするしかなかった。


 マインスに突入した仲間が休息を取るなか、シエルは報告書を書いていた。


「後ででもよろしいのですよ?」


 話しかけてきたのはヘリオスだった。


「そういうわけにはいきません。報告書はなるべく早く出さなくては」


「それならば、私が書きますのでシエル様は休みながら声に出してもらえれば」


 しかし、ヘリオスの提案をシエルは断る。


「これは私の仕事ですから、これぐらいできないと王にはなれません」


 そう返されてしまうとヘリオスには何も言えることはなかった。


 そうして時間が経っていくうちに、日は暮れ、あっという間に夜になる。


 皆は眠りにつき、その日は終わる。


 報告書


 報告者:レグルス王国 第三王女 シエル・レーヴェ・ケーニヒ

 報告日:賢歴年三千二十四年五月下旬


 ⸻


 一、目的


 魔城マインスにて仲間の救出、及び、魔族の討伐。


 ⸻


 二、結果


 交戦の結果、七大魔族の第六柱、強欲のガイツ・マモンの封印には失敗したものの、討伐には成功した。


 これにより、敵勢力に対して一定の戦果を挙げることができた。


 ⸻


 三、被害状況


 味方の被害:グリフ・ダンクが死去

 敵の被害:七大魔族の強欲を討伐。強欲の幹部を二体討伐。


 ⸻


 四、所見


 今回の戦闘により、敵勢力の一角を撃破できたことは大きな戦果である。


 今後の対応については、今回の戦闘で得られた情報をもとに慎重に判断する必要がある。


 以上、報告する。


 レグルス王国 第三王女 シエル・レーヴェ・ケーニヒ


 これを読んでいるのは現国王、リゴロス・レーヴェ・ケーニヒ


 シエルの父親である。


「封印は失敗か。まあ、よかろう。シエルよ、強欲の討伐は世界に対して、大いなる貢献となる。誇れ、お前を支援する権力者も増えるだろうな」


 有難いお言葉。

 この上ない言葉。


「ありがとうございます。お父様」


 シエルはただただ父親に褒められることに喜びを覚えた。


 * * *


 レグルスからは大きく離れた土地、魔陸トイフェルに位置する地。


 そこには、高位な魔族が集まっていた。


「ガイツ・マモンが死んだ」


 その言葉は魔陸に衝撃が走った。


 戦力の圧倒的な低下。

 それに対する人間の行動は容易に想像できる。


 第三次人魔戦争が始まる。


 魔族の中で意見が分かれる。

 だが、実力主義の魔族の社会でただの魔族に発言力はあるわけもなく、決定権を持つのは、魔王か、七大魔族だけだ。


「戦争を始めるぞ」


 七大魔族の中で最初に声を上げたのは七大魔族の第一柱、傲慢の魔族。

 魔王の次に強いとされる男。

 誰もその意見に逆らえるわけがなかった。


「戦争の開始は」


 魔族が皆、傲慢を見る。


「二ヶ月後だ」


 * * *


 あれから一週間が経った。


 カイセン達は肉体も回復した。


 そのため、今日も修行に明け暮れる。

 ナインの元で魔法を習う。

 テクストの元で剣技を覚える。


 そして、明日はカイセンが待ちに待った休日。


 さすがのカイセンも毎日レベルの高い修行をしていては肉体が壊れてしまう。

 そのため定期的に休日をとっていた。


(今日は商店街でも行くか)


 カイセンが貧民街への入り口を出てすぐに広がっていた場所のこと。


 最初に硬貨について教えてもらった馬肉屋はカイセンの行きつけの屋台になっていた。


「おっちゃん! いつものくれ」


 馬肉にも味付けが色々あるが「いつもの」で通じるようになるほどには食べていた。


「おうよ! いつものね」


 商店街には他にも様々なものがある。


 それを見て回るのが楽しみの一つだった。


 カイセンが新しく入荷された買うつもりもない武器を見ていると、後ろから話しかけられる。


「ねえ、ねえ、それ買うの?」


 若い男、いや、少年と言うべきか。

 背丈は中学二年生ぐらいで黒髪のどこにでもいる男の子だった。


「いや、買うつもりはないけど」


 カイセンが答えたことで、少年はさらに質問した。


「お兄さんは何をしている人?」


 カイセンが言葉に詰まる。

 王女の仲間と正直に話していいのかわからなかった。


「冒険者みたいな感じだ」


「へえ! 冒険者なんだ。名前は?」


 少年は目を輝かせながら聞いてくる。


「カイセンだ」


「カイセンっていうんだ。ねえ、カイセン」


 少年はカイセンを見つめる。


「僕の名前はハグノス・カイ・オーモスっていうんだけど、冒険の仲間に入れてくれない? 僕、興味あるんだ」


(……どうしたものか。当たり前だが、冒険者じゃないから仲間に入れるなんてことはできねえし)


「ハグノスだよな? 親は?」


「親……」


 ハグノスがなかなか答えないのを見てカイセンは察する。


(誰にも話してねえけど、俺も父親が死んでるからな……)


「悪いけど俺の冒険に連れていくのは無理だ!」


 断らなければいけないという思いと悲しませたくない気持ちが激突した。その結果、出た言葉だった。


「……そっか。なら今日、一日は一緒に遊ばない?」


 カイセンはそのお願いを断ることはできなかった。


「わかった。でも何するんだ?」


「ここら辺、色々見て回ろうよ」


「わかった」


 その後、カイセンとハグノスは色々なものを見て回った。

 食べたり、見たり、遊んだり、そしてまた食べたり。


 子供に振り回された日ではあったが戦いで疲れたカイセンの心は少し癒された。


「えー。もう帰っちゃうの?」


 帰ると言ったカイセンをつぶらな瞳で見つめる。


「ああ。もう日も暮れてきたしな」


「そっか、明日は?」


「明日はやることがあるから無理だ」


「ええ、じゃあ何すればいいの?」


 その時、誰かの悲鳴が響く。


 馬車に乗せていた丸太が坂に転がり落ちてきている。


 そして、それは一人の女の子に当たりそうになる。


「あぶねえ! グロブス・テネブラルム!」


 黒い球体が丸太を誰もいない方に吹き飛ばす。


(うまくコントロールできてよかった……)


「あ、そうだ」


 カイセンがハグノスを見る。


「暇なら、一日一善するのはどうだ?」


 ハグノスは疑問の表情を浮かべる。


「一日一回、良いことをするってことだよ」


「さっきみたいに?」


「さっきのほどじゃなくていい。例えば、ゴミ拾いをしたとか、落とし物を届けたとか。そういうのをやってみたらどうだ?」


「面白そう! やってみる」


 ハグノスはそれを聞いた後、満足したのか手を振って帰って行った。


(さて、俺も帰るか)


 こうして、カイセンの貴重な休日は終わった。

この世界で、もう一度を読んでくださりありがとうございます!

よければアドバイス等をお願いします。

投稿頻度が下がった場合は申し訳ありません。

訂正することが多いのでできるだけ減らせるように頑張ります。

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