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この世界で、もう一度  作者: 霜月
第一章 『スタート・アゲイン 409』
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第一章 11 『魔城の栗を拾う』

グリフの魔法名変更

バースト→エクスプロシオ

 あれから二日間、居場所を特定するため情報を集めていた。


「おそらくですが、特定できました」


 居場所の特定を行ったのは、レグルス王国の情報組織「インジス」の副長だった。


「確証はないですが、中央荒野に建てられた魔城だと思われます。そこには高位の魔族が住むという情報があるため、他の情報と合わせても可能性は高いかと」


 その時、ナインから念話が入った。


「副長さん。特定させておいて申し訳ないですが、仲間から念話がきました。場所は魔城マインス。副長さんの言った通りです」


「そうですか。居場所がわかったなら何よりです。それでは」


 副長は一礼して部屋を出る。


 シエルはメイドに話しかける。


「すぐにみんなを集めて。お願いね」


 しばらくして、皆が集まった。


「場所は中央荒野に位置する魔城マインス。屋敷を出るのは今から1時間後です」


 誰も嫌がることも反対することもない。

 この男以外は。


「お待ちください」


 静かな部屋に、ヘリオス卿の声が響く。


 皆の視線が一斉にヘリオスへ向けられる。


「ヘリオス卿ですか。どうしました?」


 シエルは落ち着いた様子で尋ねる。


 ヘリオスは一度シエルを見つめ、それからゆっくりと口を開いた。


「相手はただの魔族ではなく七大魔族です。その一角をもし倒すことができたとしても、それは第三次人魔戦争のきっかけになるかもしれない。それを理解していますか?」


 ヘリオスの言葉に、部屋の空気が少し重くなる。


 七大魔族。

 ただの魔族とは違う。


「ヘリオス卿、これは私の憶測にすぎませんが、人間と魔族が手を取り合える日なんて来ません。魔族も戦争の準備をしているという情報が上がっています」


 シエルは迷うことなく言葉を続ける。


「ならば、それが始まるのは時間の問題です。言いたいことはわかりますね?」


 ヘリオスはしばらく黙っていた。


 シエルの言いたいことは理解している。

 だからこそ、簡単に反論することもできなかった。


「その行為が国を危険に晒すとお分かりで?」


「始まる前に脅威の一つを消すと言っているのです。ご不満がありますか?」


 シエルの言葉は冷静だった。


 だが、その奥には七大魔族を討つという強い意志があった。


 ヘリオスはシエルの顔を見つめる。


 止めるべきなのか。

 それとも、この決意を尊重するべきなのか。


 しばらく考えた後、ヘリオスは小さく息を吐いた。


「……わかりました。しかし一日待ってください。議会で話を出してみます。シエル様への忠義にかけて、許可を勝ち取ってきましょう」


 ヘリオスはそう言うと、シエルへ深く頭を下げる。


「わかりました。では信頼していますよ、ヘリオス卿」


 シエルは穏やかに答えた。


 ヘリオスはもう一度頭を下げる。


 * * *


 その頃、カイセンとナインは、マモンの配下達と模擬戦を行っていた。


「お前らにはもっと強くなってもらう。俺の配下と模擬戦でもやってろ」


 模擬戦の相手は、マモンの配下である幹部のうちの一人、モンナテルン。


 細長い手足に、薄汚い服装。


「おまえらぁー、それが本気かぁ? 魔力量が大きくても、そんなんじゃダメだぞぉー」


 カイセンとナインは、モンナテルンの攻撃を避けながら戦っていた。


 しかし、本気は出さない。


 マモンに自分達の実力を知られるわけにはいかなかった。


≪カイセン、大丈夫ですか? 本気を出してはダメですよ。戦闘になった時に実力を知られていてはダメですので≫


≪わかってる。それと一つ話がある≫


≪どうしましたか?≫


≪昨日、嫉妬の魔族の声を聞いた時、一つ思ったことがある。もしかしたら俺は権能が発現して、それが予知夢なのかもしれない≫


≪つまり、予知夢で嫉妬の魔族を見たんですか?≫


≪顔を見てない。だが声は同じだ。間違いない≫


≪なるほど。それで夢の内容は?≫


≪それはあいつが――≫


 カイセンが夢の内容を話そうとしたその瞬間、カイセンに痛みが走る。


「……っ!」


 カイセンは思わず身体を止める。


(まさか、他者への口外は禁止? 意味わからねえ)


≪悪い、なんでもない≫


≪え? はい。わかりました≫


 * * *


 一日後。


「議会にて許可を取ってまいりました。しかし、条件付きです」


 ヘリオス卿の言葉を聞き、皆の顔が明るくなる。


「条件ですか?」


 シエルの疑問に対して、ヘリオス卿は答える。


「七大魔族の一角の討伐。これが不可能ならば王位継承戦からの脱落とする、とのことです。それでも行きますか?」


「はい。もちろんです」


 シエルは悩むこともなく即答する。


「ではせめて、シエル様はお残りください。それが私の願いです」


「申し訳ありませんが、私は行きます。それが私の王としての在り方です」


「……わかりました。では、ご武運を」


 シエル達は屋敷を出て、レグルス王国をも後にする。


 向かったのは、国の近くにある転移の間。


 大賢者メシアスが設置した転移魔法陣がある場所だ。


 全部で三つあり、それぞれ賢星国家の付近に設置されている。


 中ではなく付近に設置している理由は、国同士の不法侵入を防ぐためである。


 転移の間に着いたシエル達は魔法陣を起動し、中央荒野に最も近い北東に位置する賢星国家カストルへ移動する。


「ここから二日ほど馬車で進んだところに魔城マインスが建てられています」


 シエルの屋敷のメイドが喋る。


 彼女には馬車の御者兼、案内役としてついてきてもらっている。


(二日か……)


 テクストが手を固く握る。


(私は……負けない)


 そして二日間の移動を経て、シエル達はマインス付近に到着する。


「それでは、私はここまでです。誰も欠けることなく帰って来られることを祈っております」


 メイドは一礼する。


「エマ、あなたはここに残っていてね」


 シエルの言う通り、エマはメイドの護衛として馬車に残る。


「おっけー。アタシが絶対守ってやんよ!」


 魔城マインスに侵入するのは、シエル、テクスト、ミナ、グリフ、そして肉体戦闘が得意で黒髪でオールバックの大柄な男、ゴウ。


 以上五名が、シエル陣営の最大戦力である。


 マインスの城内。


 強欲の幹部の一人、マズルがシエル達の侵入に気づく。


「マモン様」


 マズルは細身の黒髪の男の魔族。


「どうした? マズル」


「侵入者です。どうしますか? 私が倒してきましょうか?」


 マモンは少し考える様子を見せる。


「お前が行くほどじゃない。ンダンボに任せておけ」


「わかりました」


 マズルはそう言うと、部屋を出ていく。


 シエル達はマモンの配下である魔族達と戦闘を繰り広げていた。


 配下は大して強くなく、苦戦はしなかった。


「案外弱いな、これなら余裕かもな!」


 グリフが高を括る。


 シエル陣営も他の兄妹と比べたら弱いだけであって、世界で見たら強者に入るレベル。


 この程度で負けはしない。


 グリフが魔族へ向かって炎を放つ。


「エクスプロシオ!」


 炎が魔族へ向かって飛んでいく。


 魔族が避ける。


 しかし、その直後に炎が爆発する。


「ぐあっ!」


 魔族が吹き飛ぶ。


 その横から別の魔族がテクストへ向かって攻撃する。


 テクストは剣を抜き、その攻撃を受け止める。


「ふっ!」


 テクストが剣を振る。


 魔族は後ろへ下がって避ける。


 その隙にシエルが魔族へ近づき、氷の剣を振るう。


 魔族は攻撃を受け、倒れる。


 残った魔族もゴウによって倒されていく。


 敵の魔族を一蹴し、奥へ進もうとした時、突然、周りの壁が破壊される。


「オラァ!」


 大柄で黒髪の男の魔族。


「お前らが侵入者だな。強欲の幹部が一人。ンダンボ。来いよ、ぶっ潰してやらぁ」


 ンダンボは手招きをしながら構えを取る。


 真っ先に飛び出したのは、肉体戦闘を得意とするゴウ。


 所持している魔力を全て肉体の強化に使用する。


「お前! 拳で戦うタイプだな! 楽しめそうだ!」


 ンダンボも肉体に全ての魔力を注ぎ込む。


「お前も拳か! 面白そうだな!」


 ゴウが地面を蹴る。

 ンダンボも同時に踏み込む。

 二人の拳が正面からぶつかる。


「オラァ!」


 ゴウが拳を振り抜く。

 ンダンボは腕で受け止める。

 そのままンダンボが反対の拳を繰り出す。

 ゴウは身体を横へ動かして避ける。

 ンダンボが追撃する。

 ゴウも拳を振るう。

 再び拳と拳がぶつかる。


「やるなぁ!」


「お前もなぁ!」


 二人は何度も拳をぶつけ合う。


 シエル達はンダンボをゴウに任せて先に進む。


 マズルはマモンのいる部屋に戻っていた。


「はぁ、ンダンボが一対一を始めたため五人のうち四人がまたこちらへ近づきました」


「わかった。じゃあ次はモンナテルン! お前が行ってこい!」


 マモンの声を聞き、モンナテルンは声の方向に振り返る。


「はぁーい。じゃあまた後で遊んでやるよぉ。二人ともぉ」


 モンナテルンはくらくらと揺れながら部屋を出て、シエル達のところに行く。


「お前らが侵入者かぁ。俺は強欲の幹部が一人、モンナテルン」


 モンナテルンは小刻みに揺れながら喋る。


「よぉろしく〜」


「ここは僕とミナで引き受ける」


 グリフが真っ先に動き出し、ミナもそれに続く。


「シエル様とテクストさんは先に行ってください!」


「エクスプロシオ!」


 グリフは炎属性の適性を持っており、炎を爆発させるように扱う。


 グリフがモンナテルンへ向かって炎を放つ。


 モンナテルンは身体を横へ動かして避ける。


 しかし、炎が爆発する。


「おっとぉ!」


 モンナテルンは爆発から逃れるために後ろへ飛ぶ。


 その隙に、シエルとテクストがモンナテルンを越えて先へ進もうとする。


「お前ら、行かせるわけがないだろぉ?」


 モンナテルンが追おうとする。

 しかし、グリフが前に立ちはだかる。


「仕方ないなぁ〜」


 モンナテルンがグリフへ向かって距離を詰める。

 グリフは炎を纏わせて迎え撃つ。

 二人の攻撃がぶつかる。

 モンナテルンがグリフを押し込む。

 その横からミナが攻撃する。


「マサカサ」


 しかし、モンナテルンには特に何も起きない。


「んん〜? 何かしたのぉ? よくわかんないからさっさと終わらせるねぇ」


 そう言ってモンナテルンが距離を詰めようとした時、なぜかモンナテルンとミナとの距離は広がっていた。


 ミナが動いたわけではない。

 モンナテルンが下がったのだ。


「なんだこれぇ。これが君の魔法?」


「これは私の権能、マサカサです」


「権能かぁ、どうりで強い能力なわけだぁ。感覚の反転……」


 モンナテルンはもう一度ミナへ近づこうとする。


 しかし、今度は思った方向とは逆に身体が動く。


「うわぁ、こっちぃ?」


 モンナテルンがよろめく。


 グリフがその隙を逃さない。


「エクスプロシオ!」


 炎がモンナテルンへ向かって飛んでいく。


 モンナテルンは身体を捻って避ける。


 炎が壁にぶつかり、爆発する。


「危ないねぇ〜」


 モンナテルンは距離を取る。


「あ、でももう元通りだぁ」


 ミナのマサカサの効果が切れ、モンナテルンは普段通りに身体を動かせる。


「でも厄介だねえ、戦いの途中で急にそれ使われたらパニックになっちゃいそうだ」


 グリフとミナは再び構える。


 モンナテルンも二人を見て、小刻みに身体を揺らす。


「それじゃあ、もう一回遊ぼうかぁ〜」


 モンナテルンが二人へ向かって走り出す。


 * * *


 場所は少し戻って、ゴウとンダンボの戦いはまだ続いていた。


「オラァ!」


 ンダンボが拳を振る。

 ゴウは腕で受け止める。

 そのままゴウが拳を振り返す。

 ンダンボも拳で受け止める。


「お前が魔族ならライバルにしてやっていたかもな!」


「お前が人間だったら相棒にしていたかもな!」


 二人は拳を合わせるうちに、少し打ち解けていた。

 しかし二人は人間と魔族。

 戦いを止めることは許されない。

【キャラクター紹介】


シエル・レーヴェ・ケーニヒ


年齢:17歳

誕生日:11月2日

身長:158cm

体重:46kg前後

体格:細身

髪・目:白銀・深い青紫

一人称:私

好きなもの:白色の物

苦手なもの:暑い食べ物

好きな言葉:仲間


権能:アナーゼ

相手の魔力量、魔力適性、権能の有無を見抜く。また、相手の魔力の変化から、敵意や悪意などの感情をある程度読み取ることができる。

適性:光、水

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