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『リスタート・センター:30歳の私が、謎のモニターと共に頂点を目指すまで』  作者: 真白しろ
2章 GlitcH始動

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episode18

札幌の野外スタジアムでの極寒ライブから数時間後。

暖房がガンガンに効いた控室で、ようやく人間の顔色を取り戻した私たちは、鮫島プロデューサーが持ち込んだタブレットの画面を覗き込んでいた。

「驚いたぞ。札幌のゲリラライブの映像が、もう世界のSNSでミリオン再生を突破している。しかも……」

鮫島が画面をスクロールすると、そこには様々な言語の熱狂的なコメントと、現地のニュースメディアの見出しが溢れ返っていた。

『The Frozen Monsters(凍てつく怪物たち)』

『雪原をハッキングした日本の異常なアイドル』

『致死量のノイズに感染した!』

「ふふっ、大騒ぎですねぇ。真っ白な雪と、私たちの真っ黒なノイズ……最高のコントラストでしたから」

アカリが温かいお茶を入れた紙コップを両手で包み込みながら、嬉しそうに笑う。

「当たり前よ。私の光と熱量は、吹雪の絶望感すらも最高の演出に変えちゃうんだから」

ランが、すっかり乾いた髪を優雅にかき上げながら傲慢に言い放った。

「ひぃぃ……でも、もう雪の中はこりごりですぅ……。足の指がもげるかと思いました……」

マコがまだ少し震えながら、巨大なヒーターの前から離れようとしない。その隣では、サエが毛布にくるまって完全にミノムシ状態になり、幸せそうに寝息を立てていた。

「同感ね。美しさを保つには過酷すぎる環境だったわ。次はもっと、私たちのパフォーマンスに相応しい場所を用意しなさいよね」

レイカが呆れたようにため息をつきながら、鮫島をキッと睨みつける。

「わ、わかっているとも! 今回のバイラルヒットのおかげで、アジアのプロモーターたちから即座に連絡が入った。台湾、シンガポール、タイ……次は灼熱の熱帯エリアだ!」

鮫島が興奮気味に広げた世界地図のデータを見て、私は低く嗤った。

「極寒の次は灼熱。……悪くないわね。どんな過酷な環境だろうと、私たちがその空間のシステムを完全に書き換えてやる」

私はタブレットの画面を操作し、これからのツアーの軌跡を真っ赤なラインで引いていった。

「アジアの熱気の中で、私たちの毒をさらに濃く培養する。そのままヨーロッパの格式高い音楽シーンに泥を塗りたくり、最後はエンタメの頂点、北米大陸のド真ん中に致死量のウイルスを撃ち込む」

私はメンバーたちを見渡した。

「世界中のオーディエンスの理性を焼き切って、私たちのノイズなしじゃ生きられない体にしてやるの。すべてを黒く塗りつぶすパレードのスピードを上げるわよ」

「あはっ! 世界中の人が私たちの前で狂っちゃうなんて、ワクワクしますっ!」

アカリが狂気を孕んだ瞳を輝かせる。

「いいわ。私の圧倒的な輝きで、世界中の視線を独占してあげる」

ランが不敵な笑みを浮かべ、レイカがピンヒールを鳴らして優雅に頷いた。

「……暑いのは嫌いだけど、お姉さんの音なら、どこでも歌う」

毛布の中から、サエがぼそりと呟く。

「ひっ、ひええ……! い、胃薬のストック、スーツケースいっぱいに詰めておきますぅ……っ!」

マコが涙目で決意を固めた。

六人の怪物を乗せた反逆のパレードは、凍てつく北の大地を完全に制圧し、いよいよ国境を越える。

世界中を未曾有の熱狂という泥沼へ引きずり込むための、本格的な「感染拡大パンデミック」が、今ここから始まるのだ。

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