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『リスタート・センター:30歳の私が、謎のモニターと共に頂点を目指すまで』  作者: 真白しろ
2章 GlitcH始動

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42/49

episode13

曲のクライマックス。

ベース音が心臓の鼓動のように速くなり、赤いストロボが私たちの輪郭を断片的に闇へ焼き付けていく。

「――さあ、全部壊して」

マコのウィスパーボイスが、張り詰めた糸を断ち切る合図だった。

それを皮切りに、ランがすべてを焼き尽くすようなハイトーンのフェイクを響かせ、サエのノイズがそれに絡みつく。レイカのステップがステージを鋭く切り裂き、アカリがカメラレンズを舐めるような視線を送る。

そして私が、最も重く、最も冷酷な言葉でトラックの最後を締めくくる。

「System Shutdown」

ドォォォォン……。

最後の一音と共に、ステージの全照明が完全にブラックアウトした。

数秒の、永遠にも似た静寂。

そして。

「うおおおおおおおおおおっ!!!」

新国立劇場の分厚い壁が軋むほどの、爆発的な大歓声。

先ほどのLuminaの時に起きた感動の拍手とは全く質の違う、腹の底から湧き上がるような、理性を失った熱狂の咆哮だった。

格式高い審査員たちでさえ、圧倒的な暴力とも言えるパフォーマンスを前に、呆然と口を開け、あるいは無意識に立ち上がって拍手を送っていた。

照明が再び灯った時、私たちは誰一人として笑顔を見せず、ただ荒い息を吐きながら、焼け野原になった客席を冷たく見下ろしていた。

「……ふふっ、最高の眺めね」

ランが汗を拭いながら、小さく呟いた。

番組はそのまま、運命の結果発表へと移った。

ステージ上に、大賞候補のアーティストたちが横一列に並ぶ。

私たちのすぐ隣には、顔面を蒼白にさせ、震える手を必死に握りしめているLuminaの五人がいた。優花は、もはや真っ直ぐ前を見ることすらできていない。

「それでは、今年のジャパン・ミュージック・アワード、栄えある大賞の発表です」

司会者の声が響き、ドラムロールが鳴り響く。

会場中が息を呑み、日本中の数千万人がテレビ画面を凝視する、数秒間。

「……今年の音楽界を席巻した、新たなる怪物たち。大賞は――『GlitcH』の皆さんです!!」

金の紙吹雪が、爆発音と共にステージに舞い散る。

会場から割れんばかりの歓声と悲鳴が入り混じった声が上がった。

その瞬間、隣でLuminaの優花が、ついに張り詰めていた糸が切れたように泣き崩れた。他のメンバーたちも、現実を受け入れられずに顔を覆っている。

絶対王者の城が、完全に崩落した瞬間だった。

司会者に促され、私たちはステージの中央へと進み出た。

重厚なクリスタルで作られた、大賞のトロフィー。

私がそれを無造作に片手で受け取ると、マイクが向けられた。

「おめでとうございます! デビューからわずか半年、音楽界の頂点に立った今、どんなお気持ちですか!」

私は、泣き崩れるLuminaや、手のひらを返したように拍手を送る大人たち、そしてカメラの向こうの数千万人を見渡した。

「……気持ち? そうね」

私はマイクを引き寄せ、三十年分の人生の執念と、NILとしてのプライド、そしてGlitcHのリーダーとしてのエゴをすべて込めて、低く嗤った。

「システムは完全に書き換えられたわ。綺麗で無難な嘘の時代は、今日で終わり」

会場が水を打ったように静まり返る。

「私たちがGlitcHバグ。……あなたたちはもう、私たちの猛毒なしじゃ生きられない体になっているわ。せいぜい、これからも私たちの泥沼で踊り狂いなさい」

カメラに向けて、ランが不敵に笑い、アカリが舌を出し、サエが欠伸をし、レイカが誇り高く顎を上げ、マコが強く前を見据えた。

放送事故スレスレの、最悪で最高の受賞スピーチ。

しかし、数秒後には、それに呼応するように、会場から地鳴りのような歓声が湧き起こった。

こうして、私たちGlitcHは、誰にも媚びず、誰のルールにも従わないまま、日本のエンターテインメントの頂点という王座を強奪したのだ。

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