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『リスタート・センター:30歳の私が、謎のモニターと共に頂点を目指すまで』  作者: 真白しろ
1章 人生リスタート

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17/34

episode17

第1回順位発表式の放送終了後。

合宿所のベッドの中で、私はスマホのブルーライトを顔いっぱいに浴びながら、静かに口角を上げていた。

視界の端では、システムが弾き出した凄まじいデータが滝のように流れている。

> [ リアルタイム・エゴサーチ&トレンド分析 ]

> [ 現在のハッシュタグ:#NEXTGATE #神崎ミオ2位 ]

> [ エンゲージメント総数:前週比 450% UP ]

> [ ファン層解析:10代(20%)、20〜30代(70%)、その他(10%) ]

> [ 警告:アカリ・ラン陣営からの『ヘイトスピーチ(アンチコメント)』が急増中。炎上バフが発動します ]

>

「……完璧な客層ね」

私は思わず呟いた。

王道のキラキラアイドルを応援するのは、主に同年代の中高生だ。しかし、私のファン層の70%は『20〜30代の大人』。つまり、かつての私のように、社会の理不尽に揉まれ、「自由に使えるお金(可処分所得)」を持っている層なのだ。

オーディション番組において、この層を味方につけることは、何よりも強力な武器になる。

タイムラインには、私を巡って賛否両論の嵐が吹き荒れていた。

【 アンチ陣営:王道至上主義 & ライバルファン 】

@ran_is_absolute

『神崎ミオが2位とかマジで納得いかない。アイドルのオーディションでポエム読んで、体力ないの誤魔化してるだけでしょ。ランちゃんの隣に立つ資格ない #NEXTGATE』

@akari_love_angel

『絶対アカリちゃんが2位であるべきだった! ミオって子、いっつも気怠そうで何考えてるかわかんないし、全然可愛くない。アカリちゃんの涙見てこっちも泣いた ミオはアイドル舐めてる』

@pure_idol_otaku

『Fチームの時から思ってたけど、あのサブカル臭キツすぎ。アイドルのステージに鬱展開とか求めてないんだわ。さっさと落ちてほしい』

【 ミオ狂信者陣営:インターネット・サブカル層 & 限界社会人 】

@night_glitch_00

『神崎ミオ、最高すぎんか??? あの王道キラキラ空間に放り込まれた異物感。完全にシステムのエラー(バグ)じゃん。あの気怠げなアンニュイさに脳が焼かれる……』

@deep_web_resident

『ミオのパフォーマンス、完全にインターネットの深淵。可愛いとかポップとかそういう次元じゃなくて、致死量の毒。あの冷たい目で見下ろされたいオタク、絶対私以外にも10万人はいる』

@saori_oshikatsu

『アンチが「可愛くない」って騒いでるけど、お前ら何もわかってない。ミオ様は「可愛い」じゃなくて「宗教」なの。あの17歳とは思えない人生3周目みたいな達観した目に、私はボーナス全額突っ込む準備ができてる』

@subcal_girl

『1位発表の時のあのミオちゃんの余裕の笑み見た!? アカリちゃんが牽制したのにノーダメージで、逆にラン様に喧嘩売ってたww メンタル鋼すぎる。もう一生ついていく』

> [ システム通知 ]

> [ パッシブスキル『賛否両論(炎上予備軍)』の効果により、アンチのコメントがコアファンの『課金意欲』と『投票熱』を煽っています ]

>

「ふふっ、アカリちゃんのファンが騒げば騒ぐほど、私の狂信者ファンたちが結束していくわね」

私はSNSをスクロールしながら、悪役令嬢のような笑みを浮かべていた。

アンチが「あんなのアイドルじゃない」と叩けば叩くほど、インターネット・サブカルチャーを愛する層や、日々の生活に疲れた大人たちが「私たちがミオをデビューさせて、あの綺麗な世界をバグらせてやる!」と熱狂していく。

まさに、劇薬。

30歳の私が仕掛けた「アンニュイ」と「グリッチ(異物感)」というコンセプトは、見事にターゲット層の心臓をぶち抜いたのだ。

その時、コンコンと控えめなノックの音がして、ドアの隙間からマコが顔を覗かせた。

「ミオちゃん……起きてますか……?」

「どうしたの、マコ。あんまり夜更かしすると肌に響くわよ」

「あ、あの……スマホ、見ましたか? アカリちゃんのファンが、ミオちゃんのことすごく悪く言ってて……私、悔しくて……っ」

マコは自分のことのように涙ぐんでいた。隣を見ると、いつの間にかサエも私のベッドに潜り込んでおり、レイカは腕を組みながらドアの前に立っていた。どうやらFチームの面々も、SNSの荒れ具合を見て心配して集まってきたらしい。

「あなた、平気なの? ネットで『性格悪そう』だの『ゲテモノ』だの言われてるわよ。……べ、別に心配してるわけじゃないけど!」

レイカがそっぽを向きながら言う。

私はスマホを置き、クスッと笑った。

「レイカ。アイドルにとって一番怖いのは何だと思う?」

「え? ……スキャンダル、とか?」

「違うわ。『無関心』よ」

私はベッドの上に胡座をかき、17歳の少女たち(可愛い猛獣たち)を見回した。

「100万人に『まあまあ可愛いね』って忘れられるより、10万人に親の仇みたいに憎まれて、別の10万人に『こいつがいなきゃ生きていけない』って狂信的に愛される方が、この世界じゃ強いの。今の私は、完全に後者。……だから、炎上なんてただの無料広告よ」

30歳のリアルすぎる業界分析に、レイカはポカンと口を開け、マコは「……ミオちゃん、やっぱり人生何回かやってます?」と真顔で聞いてきた。

「んー……ミオお姉さんは、それでいいの? 嫌われない?」

ベッドに丸まったサエが、眠そうな目で私を見上げる。

「私はね、サエ」

私は彼女の頭を撫でながら、窓の外の月を見上げた。

「万人受けする可愛いお人形になるために、ここに来たわけじゃないの。私をバカにした奴ら全員を見返して、この狂ったシステムの頂点に立つために来たのよ」

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