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『リスタート・センター:30歳の私が、謎のモニターと共に頂点を目指すまで』  作者: 真白しろ
1章 人生リスタート

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16/49

episode16

巨大なスタジオに組まれた、ピラミッド型のセット。

頂点に向かって階段が伸び、1位から60位までの椅子が冷たくライトアップされている。

いよいよ、『NEXT GATE』最初の生存者発表――第1回順位発表式が始まった。

「……第28位、マコ」

「ひぐっ、うわあああん! ありがとうございますぅぅ!」

名前を呼ばれたマコは、メイクが崩れるのも構わずに号泣し、私とレイカに抱きついてから階段を登っていった。

続くレイカは12位。彼女のプライドを満たすには少し物足りない順位だったようだが、「まあ、最初はこれくらいで許してあげるわ」とツンとすまして席についた。

そして、あの圧倒的なボーカルを見せつけたサエは、なんと一気に5位(デビュー圏内)にランクイン。「椅子、ふかふかで眠い……」と、上位の席でも相変わらずマイペースを貫いていた。

(よし。Fチームは全員、生存確定ね)

私は小さく息を吐いた。

そして、発表はついに最上位――「トップ3」へと差し掛かる。

「第3位。……圧倒的な愛嬌と計算し尽くされたカメラアピールで、視聴者を魅了しました。夢乃アカリ」

「ありがとうございますっ! 皆さんの応援のおかげです!」

アカリは両手で顔を覆い、完璧な「嬉し泣き」の表情を作ってカメラにお辞儀をした。

しかし、私の視界のシステム画面は、彼女の本当の精神状態を無情にも暴き出していた。

> [ ターゲット:アカリ ]

> [ 表情管理:100%(完璧) ]

> [ 裏ステータス『嫉妬』『屈辱』が急上昇中 ]

> [ 解析:1位になれなかったこと、そして「誰」に負けたのかに対する強烈なストレスを検知 ]

>

アカリが3位の椅子に座る。

つまり、残る1位と2位の席を争うのは、絶対的エースのランと……。

「それでは、栄えある第1位候補、2名の名前をスクリーンに映し出します」

鮫島プロデューサーの重々しい声と共に、巨大モニターが切り替わる。

そこに大写しになったのは、涼しい顔で正面を見据えるランと――無表情で静かに佇む、私の顔だった。

「……嘘でしょ。あの『Fチーム』のミオが、1位候補……!?」

「バグみたいなパフォーマンスだったのに……ネットの票、どうなってんの!?」

スタジオの候補生たちが一斉にざわめき、私に視線を突き刺す。

当然の反応だ。王道を突き進むランと、インターネットの深淵から這い上がってきたような異端の私。光と影の頂上決戦。

「……結果を発表する」

ドラムロールが鳴り響き、モニターにデカデカと順位が表示された。

第1位:白鳥 ラン(1,250,400票)

第2位:神崎 ミオ(1,180,900票)

「第1位は、白鳥ラン! そして第2位、神崎ミオ! 驚異的な追い上げでしたが、一歩及びませんでした!」

(……完璧な順位ね)

私は内心でガッツポーズをした。

ここで1位になってしまえば、「追われる側」としての強烈なプレッシャーとアンチの標的になる。ネットのオタクたちが一番熱狂するのは、「圧倒的な女王の首を狙う、底知れないダークホース(2位)」という構図なのだ。30歳の社会人経験が弾き出した理想的なポジションである。

私はゆっくりと立ち上がり、ピラミッドの階段を登り始めた。

3位の席に座るアカリの前を通り過ぎようとした瞬間、彼女がマイクに入らないほどの小声で、ふわりと笑いかけてきた。

「……おめでとうございます、ミオちゃん。奇抜な『ポエム』のパフォーマンス、面白かったですよ」

声は甘いが、目は全く笑っていない。

「でも、スパイスって最初は新鮮でも、毎日食べてたら飽きられちゃうんですよね。いつまでも『ゲテモノ枠』が通用するとは思わないでくださいね?」

あからさまな牽制。

10代の女の子特有の、陰湿で鋭いマウント。普通ならここで怯むか、怒って言い返してしまうだろう。

しかし、私の中身は職場の修羅場をくぐり抜けてきた30歳だ。

私は歩みを止めず、アカリを見下ろしたまま、ふっと口角を上げた。

「忠告ありがとう、アカリちゃん。でもね、スパイスって一度その『刺激』を知っちゃうと……普通の甘いだけの味じゃ、もう物足りなくなっちゃうのよ」

「……っ」

アカリの完璧な笑顔が、一瞬だけピクリと引きつった。

> [ システム通知 ]

> [ アカリからの『警戒レベル』が限界突破しました ]

>

私はそのまま彼女の横を通り抜け、第2位の席――最上段の、ランのすぐ隣へと辿り着いた。

ランは腕を組み、私を真っ直ぐに見据えていた。

最初に出会った時の「有象無象を見る目」ではない。明確な「脅威」を認識した、鋭い捕食者の目だ。

「……ミオ」

ランが、静かに口を開く。

「グループバトルまでは、ただの目障りなバグ(異物)だと思ってた。でも、今は違う。あなたは、私のステージを汚す『敵』よ」

「光栄ね、絶対的エースにそんな風に言ってもらえるなんて」

「……次で、完全に潰してあげる。あなたみたいな邪道が、私の隣に立つなんて許さない」

その剥き出しの闘争心に、私の背筋がゾクッと粟立った。

これだ。前世で私がどれだけ手を伸ばしても、決して触れることすら許されなかった、トップアイドルたちのヒリヒリするような世界。

私は、2位の椅子に優雅に腰を下ろし、隣のランに向かって、30歳の余裕をたっぷりと含んだ微笑みを向けた。

「潰せるものなら、潰してみなさいな。……でも、足元には気をつけて。私の『毒』は、もうあなたのファンにも回り始めてるみたいだから」

ピラミッドの頂点で、ランとアカリ、そして私の視線が激しく火花を散らす。

この瞬間、私は『余り物チームのリーダー』から、『NEXT GATE』をかき回す最大の台風の目へと、完全に昇格を果たしたのだ。

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