第299話 所詮バケモノ
「ボクはレイ。グージー商会の代表だ。サドラ村に熊が出たと報告を受けて討伐に来た」
フライトユニットに座りながら自己紹介とここに来た理由を告げた。
大男は、ボクを探るように見ている。
その警戒から脳筋って感じではなさそうだ。なんか黒い外套とかしてたら……いや、止めておこう。触れてはいけたい蝕を開きそうだ。
「……おれはガッド。冒険者だ」
惜しい! 際どい! 不死な獣を呼び出す気か? ゴッドなお手々はノーサンキューだぞ!
「もしかして、剣聖だったりする?」
灰色の外套から出る鞘と柄から業物だとわかった。一流の職人が作ったものだ。
「……そうだ。なぜわかった……?」
「別のところで剣聖と剣王にあったことがあるから。まあ、あなたほど体躯のある人じゃなかったがな」
聖剣より拳王のほうが似合ってんじゃね? って人だ。素人が初対面で剣聖と見抜くのは可哀想だろうよ。
「おれ以外にも剣聖がいるんだな」
「捜せば十人くらいいるんじゃない? 十八の短い人生で三人もあったしな。十人いても驚かないよ」
ファンタジーなワールドで剣聖なんてレアくらいなものだろう。もう驚きもないよ。
「十人か。世の中は広いのだな」
「広いよ。とても広い。グージー商会には剣聖に勝てる護衛もいるしね。井戸の中で泳ぐカエルが強いのは井戸の中だけ。大海に出たら自分の実力を知るこたとだろうよ」
目の前の剣聖は強いのだろう。人間離れしたバケモノなんだろう。でも、単独で竜を倒せることは出来ないだろう。竜もバケモノなんだからな。
「小娘がデカいことをいう」
「なら、そこの剣を見てみな。ボクが打ったものだ。その価値を理解出来ないならあなたは井戸の中のカエルってことだ」
天羽々斬は、ボクの最高傑作。全身全霊をかけて打ったものだ。
「このアルブズはお前が倒したのか?」
「アルブズではなくマニュアーだ。DXという。ボクが纏って、熊を蹴り、こうして壊してしまった」
失敗失敗と肩を竦めてみせた。
ガッドさんは、DXのほうに向かい、まだ握っている天羽々斬を見た。
「……神代の剣か……?」
「人の手で打った人の世の剣だよ」
金属は宇宙のものだがな。
「持ってみたいなら腕を斬り落として構わない。ボクの故郷の剣聖は、このマニュアーを一刀両断にした。背中の剣なら腕一本くらいなら斬れるでしょう」
DXはもうダメだ。骨格が死んでいる。直すとしても六割は部品を交換となるだろう。データは残っているのだから造り直したほうが早い。
ボクは金属に愛着は持つが、執着は持たない。よりよいものをより高みを目指す。それが職人ってものだ。




