第297話 狂っている
「うわ~! いっぱいいる~!」
数は報告されてだが、こうして近くで見ると、五十頭って凄い数だった。
「あれ、全滅させていいのか? この星からいなくならないか?」
どんな心配だ?
「問題ないよ。一、二年もしたら増えるから」
ファンタジーの繁殖力をナメんなよ。世界のどこで魔物の被害が起こっているワールドだぞ。
「ハゼフはアサルトライフルで攻撃。ボクは撃ち漏らしたのを攻撃。ハラーシは逃げたのを追い掛けて殺して」
「「オッケー」」
ってことで、ハゼフが弾丸をばら撒いて均等に熊へと当てた。お見事。
それでも三十発なので、切れたらベアーズが四方に八方に逃げ出した。
「ヒャッハー! 狩りの始まりだぁ~!」
「なんの叫びだよ?」
「お約束ってヤツだ」
まったく、お約束や様式美って概念がないヤツらはイヤだよ。このノリに付き合ってくれる存在が欲しいものだ。
天羽々斬を振り上げながら逃げたベアーズを追い掛けた。
「ハラーシ、動けないヤツはお願い!」
動けぬ獲物に用はない。動いているヤツだけが獲物なのだ。
「走るの速いな」
熊が速く走れるとは知っているが、DXも速く走れるようにはなっている。だから振動が凄い。衝撃キャンセラーが貧弱すぎる!
森の中じゃなければフライトユニットで飛ぶのだが、そのフライトユニットが障害になっている。
「上手く行かんな~。でも、楽しい~!」
この不自由感も不便感も、操っている感があって実によろしいではないか。
「これよこれ! これが楽しいんのだ!」
車を自動運転にさせてなにがおもしろい? そりゃあ、便利だろうさ。だが、便利が楽しいとは思えない。不便が苦痛とも限らない。体に感じる快感。上手く行かないものを上手くさせようとする過程。そして、それを征服したときの達成感。
「楽しいぃ~!」
だからベアーズよ。ボクのために死んでくれ。DXをよりよいものになるための糧になってくれ。ボクもいずれ誰かのために死んであげるからさ!
「……うちのボス、狂ってんな……」
「……そうね……」
SFワールドからやって来た人たちの評価、謹んでお受け致しましょう。認めよう。
「ああ、ボクは狂っているのさ!」
前世から。転生しても。ボクは狂っていたのさ!
「レイスラッシュ!」
ちょっとハニーでフラッシュな言葉を言っちゃいそうになるが、いろいろ流行りの女の子ではないのでグッと堪えた。あ、ボクのお尻はそんなに大きくないのでご注意を。
「おら、泣いて死ねや、ベアーズ!」
天羽々斬を振るい、必死に逃げるベアーズを斬り殺して回った。




