第291話 同僚探り
なんて悪魔の囁きはひとまず横に置き、ボクはマニュアーの訓練を兼ねて物資の運び入れをした。
本当なら宇宙で物資補給をするので重力に縛られることはないが、地上だど重力が重荷になる。手順も変わる。時間も掛かる。
しかし、マニュアーの訓練には適している。四日間でかなり上達した実感出来た。
「……あなた自ら動くのですね……」
なんかソドに呆れられている。なんで?
「わたしたちの上司が下より働くなどルクセルにはなかったので」
「まあ、命令系統をしっかりするためにも必要なことだが、ボクはそんな強大な組織を築いているわけじゃない。ボクの下にいるなら食わせる。自分で稼いで食べたいなら出て行っても構わない。それだけさ」
「あなたの下にいると堕落しそうですよ」
「人ってのは堕落する生き物だ。したいのなら堕落すればいいよ」
「働かざる者食うべからず、なんでしょう? 追い出されたくないなので命令してください。命令がないとわたしたちは動けないので」
「面倒だね。まあ、暇なら元同僚を探ってよ。元の宇宙に還るには人手がいる。マニュアーを操れる者が欲しいんでね」
「ボスの配下にするので?」
「ボクは大規模組織を運営する力はないよ。精々、百人くらい。それ以上はお断りさせてもらうよ」
百人くらいなら誰かを代理に立てて、ボクは鉄を打たせてもらうさ。
「それだとグージーが許さないのでは?」
「グージーはまだ感情より計算を優先させるヤツらだよ。目的が果たされるまでは許容するさ」
「……確かに、グージーがやりそうなことです……」
「それに、ルクセルはルクセルで動いてくれたほうがボクとしてもありがたいよ。グージーが支配出来ないシステムがあるのは一つの策となるからね」
ルクセルにもグージーにも保険という概念がないから困るよな。
「……あなたは、どこまで、なにを考えているのですか……?」
「ふふ。考えのわからない者は怖いかい?」
「そうですね。なにを考えているかわからないことが、これほど恐ろしいとは思いませんでしたよ」
「それが当たり前なんだよ。他人がなにを考えているかわからないことはね。でもさ、付き合いが長くなると相手がなにを考えているかわかるようになるものだ。君から見てボクは、ルクセルやグージーを抑え付けて上に立ちたいような野望溢れるヤツに見えるかい?」
「見えません」
「それは能力でわかったのかい?」
「いえ、行動によってです」
「それが答えさ。ウソを付いているヤツは行動に矛盾が出て来る。それか、相手を信じさせるために否定しなくなる。相手の望む答えしか与えなくなる。人なんて心など読む必要もないくらい単純なのさ」
まあ、真のウソ付きだと見破るのも大変だけどな。




