第290話 唆し
ソドが艦橋のコンソールを叩いてライエンクルの状態がどうなっているかを確かめた。
「完全にグージー側に支配されていますな」
「まあ、仕方がないだろう。ルクセル側のほうが損傷が甚大なんだから。あのまま戦っていたら滅ぼされていたよ」
そして、この星がメチャクチャにされていたことだろう。ほんと、ジージーと知り合えたことが奇跡でしかないよ。
「そう、なんですがね。わかっていても納得は出来ません」
「グージーの技術を知れるいい機会だと思えばいいし、ルクセル人の数を考えたら戦艦二隻あれば充分だろう。双方、まずは本隊と合流しなくてはならないんだからな。元の宇宙に還ってすぐ戦闘とはならないんだから」
次元を越えた場所に双方の仲間がいるとは思えない。いたとしても観測衛星くらいだろう。消えた仲間を捜すなんてことするとも思えないしな。どちらも兵士なんて使い捨てにしてんだからさ。
「君たちが取れる選択肢は少ない。元の宇宙に還りたいなら現状を受け入れることも必要だ。まだ、グージーに手が入ってない戦艦があるんだからな。生き残れるなら戦艦一隻くらい差し出すくらい許容しなよ」
「……あなたは狡猾ですね……」
なんか宇宙人に呆れられてる!
「狡猾じゃないと生き残れない時代だったし、戦争はただ殴り合えばいいってものでもない。それでどうにか出来るなら君たちの戦争は終わっているよ。双方、共倒れって結果でね」
「上層部に聞かせたい言葉ですね」
へー。そういうこと考えていたんだ。
「現状を変えたいなら変えられる立場になるしかないね。上は下の言葉なんて聞きやしないんだからさ」
上には上の正義があり、下の正義など雑音としか思ってない。自分の声を上げるには上に立つしかないのだ。
「唆しているんですか?」
「事実を言っているだけさ。君の声は上に届いたことはあるかい? 下の声に耳を傾けたことはあるかい? あったのなら謝罪させてもらうよ」
「いえ、そのとおりでした」
宇宙が違っても戦争をする知能の持ち主ならそう変わりはないさ。戦争なんてエゴでやってんだからな。
「下剋上、簒奪、革命、下だった者が上を破って立つなんて歴史を探ればいくらでもある。ルクセルにもあったはずだ。上を食らい立ったヤツが、な」
身分があり、地位があるなら必ず起こっている。独裁者は長続きしないと相場が決まっているのだから。
「煽らないでください」
「やるやらないはソド次第。でも、今が好機だとボクは思うな」
ククッと笑ってみせた。




