第288話 ボス呼び
ルクセルはまだ本能というか野生が残っているから扱いやすい。
贅は欲を刺激する。知ってしまえば我慢することは困難だ。
星を出て数百年。もう星の記憶もないだろうに酒を飲むことを辞められないでいる。そして、お酒の味を思い出してしまった。
封じ込められていた酒を求めるDNAが目覚めてしまった。強い衝撃をDNAに刻んでしまった。
「ボクの下に下るならお酒は飲み放題だ。まあ、さすがに任務中は飲んでもらっては困るがな」
なんて言っても今は耳に届かないか。ベロベロに酔っているので、目覚めるのを待つことにした。
目覚めるまでライエンクルの艦橋の艦長席に座ってモニターに映る宇宙を眺めた。
「この光景を見て、ルクセルやグージーはなにを思って、なにを考えてたんだろうな?」
ボクは三十分で虚無となり、四十分後には艦橋の金属部を叩いていた。
反響から金属の違いがわかる。その技術の高さに驚いた。
「ルクセルとグージーの技術が違うな」
同じ金属のようで音が違う。違う工程を辿って似て非なる金属になっている。おもしろいな~。どんな金属が混ざっているんだろう。ボク、気になります。
ジージーに呆れられながらも楽しんで金属を叩いていたら乗員たちが起きて来た。
「酔いは抜けたかい?」
「はい。抜けました」
ビシッと並ぶ乗員たち。自分たちの立場を理解したようだ。フフ。
「じゃあ、星へ向かおうか。もう手持ちのお酒はないからな」
「ハッ! 各員、配置に付け! 出発するぞ!」
艦長のラルドラが配下に命令を下し、配下たちはテキパキと動いてくれた。
「ボス。準備完了です」
なんかボス呼びされた! ってまあ、いいんだけどな。てか、ルクセルにはボス呼びがあるんだろうか?
艦長席はラルドラに譲った。ボクが座っててもなにもできないからな。
「星へ」
「オッケーボス。ライエンクル、発進せよ!」
係留具が外され、ライエンクルが発進された。
グージーの情報網とリンクされているので迷うことはない。ショートワープを使って二時間くらいで到着出来た。
宇宙だと加速より減速のほうが大変のようだ。一時間くらい掛けて星の回転に合わせてから大気圏に突入した。
「誤差修正」
真っ赤に燃えているのにズレた軌道を修正出来るんだ。強襲艦でもあるんだろうか? いや、方向転換してないか? かなり曲がったぞ!? そんなことも出来んのかい!
びっくりしたもののラルドラたちは慌ててはいない。経験があるんだろうよ。
島が正面に見えて来て、信号によって滑走路へと着陸した。
言葉にすればそれだけなことだが、それを可能にした技術力には感動するしかなかった。




