第279話 三竦み
「なにかを得るためになにかを失う。仕方がないこととは言え、こんな星に落ちたらその捨てたものが必要になる。適応出来なければ自分たちが捨ててきたものに排除されるんだよ」
因果応報、諸行無常、歴史は繰り返される。
「まったく、皮肉としか言いようがないな」
技術が発展しようと人が発展しなければ意味はない。捨てることでしか先に進めない人間の限界なんだろうな。
「でも、おもしろくもある。ルクセルとグージー。別の方向に思想が向かっているよね。ルクセルは身分主義。グージーは全体主義。馴染めるわけもないし、反発もし合う。でも、その間を繋げるものがあれば協力は出来る。見ていて飽きないよ。君たちにしたら心中穏やかではいられないだろうがね」
どちらの主義も命令には逆らえない。目的のためなら従えるのだ。もちろん、調和なんてものは生まれないがな。
「おもしろい、ですか」
「嫌な響きかい?」
「そう、ですね。なにか、上から見られているようです」
「自分が上から見下ろしのはよくて、自分が下に見られるのはおもしろくない。まさに身分主義の社会だよな。上であることが当たり前すぎて自分が下になることなんて考えもしなかった。でも、感情を制御出来ているのは元の宇宙に帰らなければならない身分に生じた義務と勤めがあるから。だからボクの言葉でも黙って聞いていられるんだ」
ソドの表情は変わらない。変わらないが、ボクの言葉には耳を傾けているが感情を持っていることを示している。
機械のような存在が理想なら、数百年前に肉体を捨てているはずだ。身分がある社会で身分を、いや、存在を捨てるようなことしないだろうよ。
「まあ、その分、グージーよりはわかりやすくて助かる。グージーは命令一つで敵に回る。ボクが失敗したり邪魔だと感じたらあっさり切るだろう。その点、ルクセルは欲がある。自分に得がある限り、多少の不利益を得たとしても許容できる隙間があるからな」
グージー側にデなカルチャー的な衝撃が生まれたら望みはあるが、今のところデなカルチャーを受けたのは極一部。元の宇宙に戻ればアップグレードされるかデリートされるだろうよ。
「レイは、それが目的なのですか?」
「そうだね。今、この星は三つの勢力がある。グージーにルクセルにボクだ。まあ、ボクの勢力は弱いがグージーとルクセルの要を握っている。ボクなしでは元の宇宙に帰れないのだから対等の勢力と言っていいだろうよ」
三竦み状態。この状況状態を利用させてもらうとしようじゃないか。ククッ。




