第273話 脱出ポッド
「レイ。この港から他の大陸に行けるわ」
十分もしないで港を見付けた。
ここから二百キロは離れているかな? 歩くとなると大変だ。肉体強化されたルクセル人でも一苦労だろうよ。
「あれから四日。休むのもそこそこで走るなら着いている頃か」
ルクセル人はDNAを弄って肉体を強化している。どこぞのコーディネートがシードしちゃっている感じだ。
まあ、このファンタジーワールドでは中堅冒険者にも届いていない。単独で勝てる魔物も少ないだろうよ。
「それなら船に乗って、逃げられない海上で捕まえようか。それより先に、脱出ポッドのルクセル人を捕まえようか」
ボクとしてはそちらのほうが気になるんだよな。
「なぜ?」
「これまで、脱出ポッドでこの星に降りた事例ってある?」
「……わからないわ……」
「そんなこと想定もしてなかった、って顔だな」
まあ、ボクも考えもしなかったが。
「ハラーシたちは重力兵器に巻き込まれてこの宇宙に来たわけだが、グージー側に脱出ポッドを使ってこの星に落ちた者はいる。ジージーは特別な事例みたいだったが」
ジージーのシャレインは重力波を浴びたようで、計器がダウンして星に落ちたって話だ。
「ルクセル側としても別の宇宙に来てしまったとか想定外だったことだろうよ。船に被害があって逃げ出さなければならない。まあ、わかる。わかりはするが、ルクセルの上層部が下に退避命令なんて出す? 兵士を使い捨てにしか思ってない上層部が? 仮にしていたら脱出ポッドは雨のように降っていたことだろうよ」
でも、その事例を観測出来なかった。なぜだ?
「脱出ポッドを使えたのがたまたまか、それとも上層部しか使えなかったのか、気にはなるよな」
合流しようとしてしなかった。索敵兵の独断か。情報を託されたか。囮にされたか。憶測しか出来んが、脱出ポッドに乗っていたヤツはまだこの大陸にいるのは確か。索敵兵のように大陸を渡る行動には出なかった。
「……出なかったのではなく、出る必要がないのか?」
スマホを出してトウジに繋いだ。
「どうした?」
「超能力者に、精神に干渉出来る者がいたりする?」
「隊長がそれだな。かなり強い超能力だ。グージーの頭にも干渉出来た」
いるな、そいつ。ってことは、脱出ポッドにいたのはかなり上の立場のヤツだろう。
「そいつに対抗出来る?」
「無理だ。近付いただけで支配される」
「ハラーシ。グージーに対策は?」
額に汗を浮かばせている。あら珍しや。
「……ないそうよ」
「なるほど。罠に掛けられそうだったのか」
ルクセルにはかなり頭のキレるヤツがいそうだわ……。




