第267話 アイス屋初めました
アイスは飛ぶように売れた。
魔法がある世界なのだから氷菓子があっても――いや、魚を冷やすための氷があったから魔法使いが出しているんだろう。それでいて氷菓子が生まれないってあるのか?
「氷菓子なんで貴族の食い物だ」
とのことだった。あるにはあったんだ。そりゃそうだよな。ないわけがないんだよ。ただ、高価なものだったわけか。
「銅貨三枚は安すぎたか?」
元の世界の感覚で言えば三百円くらい。ちょっと高めに設定したのだが、全然そうではなかったようだ。ロンガー一家だけでアイスが売り切れになってしまった。
「もうないのか?」
「いえ、ありますよ。ただ、まさかこんなに売れるとは思わなかったもので」
自分がそんなにアイスを食わないタイプだからか、アイスの需要など考えもしなかった。ハルアに言われてやったまでだし。
「それはよかった。夏に食べたいものだしな」
「食べすぎてお腹を壊さないようにお願いしますね」
そこは自己責任。こちらに言われても困るんで。一応、食べすぎ注意の貼り紙を出しておこう。
「ロンガー一家に卸すので、そちらでやってみませんか? 作るのと管理するのに魔道具を必要とするので、グージー商会が七。ロンガー一家が三、でどうでしょうか?」
「ロンガー一家が四でグージー商会が六だ」
「なら、屋台や人の手配はそちら。こちらはアイスを卸すだけです。商売の問題はそちらで解決してください。品質での問題だけ、こちらが責任を持ちます」
アイスは溶ける。それがわかっているのならそれでも構わないさ。
「……わかった。そちらが七。こちらが三だ。アイスが溶けない屋台はそちらで用意してくれ」
「話のわかる方でなによりです。屋台はこちらで用意致しましょう」
「ハァー。手強いねーちゃんだ」
「では、お互い納得出来る契約書を作りましょうか」
ボクは口約束でも構わないんだがな。そのほうが簡単に切れるし。でも、契約書を交わしたほうが商人っぽいだろうよ。
ロンガー一家のところで契約書を交わし、アイスの販売はお任せとなった。
「いいね。売上のすべてが利益になるって」
その稼いだお金でオレンジやメロン(に似たようなもの)を買う。宇宙でもオレンジ味やメロン味のアイスは人気なんだとか。日に日にグージーの欲望が育っている。プロトなカルチャーが増大しているよ。クク。
「てか、ハルア食べすぎ。お腹壊すよ」
プロトなカルチャーが芽生えたのか、ずっとアイスを食べているハルアさん。胃は金属じゃないんだから自重しなさいよ。
「大丈夫。わたしの胃は自己修復が早いから。あと、熱いコーヒーも飲んでる」
下痢になっても知らんからな。まったく、プロトなカルチャーに目覚めすぎだ。




