第263話 ロンガ一家
作業用マニュアーを起動。上部ハッチを開けて甲板に出た。
軽量化しているので、四百キロもないはず。渡し板も二枚重ねにして鉄板で補強したもので、荷物を持っても充分渡れることが出来た。
三機のマニュアーを使ったので荷物は数分で降ろすことが出来た。
出島から陸までの橋も石で造られていたので、渡るのも許された。
一時間もしないでマルシェン号を出港させ、沖に錨を下ろして小舟でやって来てもらった。
船に忍び込もうとするバカもいるだろうから、入ったら死ぬ罠を仕掛けておきました。まったく、海の上でよかった。
港は国の管理で、下請けとして○○一家ってのが仕切っていた。
口利き屋もいて、ロンガ一家ってのを紹介してもらい、所有している倉庫を貸してもらった。
「……こいつは、アルブズではないんだな……?」
ロンガ一家の上役っぽい男が担当してくれている。
「そのアルブズを見たことがないんで、違いを言えと言われても困るな。逆に、このマニュアーは、アルブズと似ているのか?」
「そう、言われると困るな。おれも実際見たわけじゃないから」
「ってことは、一般に知られているわけでもなければ、よく見るものではない、ってことか」
「まあ、そうだな。お伽噺の中の存在に近いな」
ウワサ話が広まっている、的な感じだ。実際、見た者は皆無。でも、マニュアーをアルブズだと思ってしまうくらいには脳に刻まれている、ってところだ。
なんだろうね、これは? オバケを見たことはないが、オバケは怖いってのとよく似ているな。昔、恐ろしいことでもあったのだろうか?
「こいつは道具だ。剣と変わりはない。悪意を持って人を傷付けようと思って乗らないとなにもしないよ。そもそも、これを斬るヤツがいる。剣聖や剣王、そんなヤツらは試し斬りにされているよ」
「あー。剣聖なら納得だ。あいつらのほうが断然バケモノだからな」
あいつら? 複数形? 剣聖ズがいるってことか?
「船長。剣聖がいるなら剣が売れそうですね」
二人の会話に口を挟む。剣聖の話を引き出せと、案に伝えた。
「そうだな。手に入れた一本はマニュアーでも斬り裂く。剣聖なら欲しがる一本だろう」
どんなものかをロンガ一家に見せた。
「剣は素人だが、とんでもないってことだけはわかる」
ほー。いい目をしているじゃないか。商人としても優秀なようだ。
「剣聖様とお近づきになれるなら売上の半分をロンガ一家に差し出しますよ。金の板十枚で売ろうと思ってますので」
掛かっている費用はボクの手間賃だけ。半分取られようがまったく損はしない。剣聖だって損はしない。それだけの一本だからだ。




