第262話 アルブズ(石人)
「……随分と綺麗だな……」
「魔道船ですから」
「魔道船?」
「おや、この辺にはないのですか? 魔法の力で動く船を魔道船と呼ばれています。わたしの生まれた国では一般的な船になりつつありますが」
ロックスって口回るな~。コミュニケーション能力高かったんだな。
「外国にはそんな船があるのだな」
「違う国では海賊船が跋扈したり、大砲という鉄の玉を放つ船まであります。わたしも海賊に捕まって死ぬ目に合ったものです。ここの海にも海賊はいますか?」
「いや、幸いにもいないな」
「それはなによりです。あいつらは下劣なやからですからな。ご注意ください」
「……海賊か。注意するとしよう……」
「あと、こちらに巨石獣とか巨石兵と言った石や金属の巨人とかいますか? これと同じようなものなのですが」
布を捲ってマニュアーを役人に見せた。
「こ、これは、アルブズ」
「アルブズ、ですか? こちらではそう呼ぶので?」
「あ、ああ。アルブズではないのか?」
「アルブズを見たことがないのでなんとも言えませんが、これはマニュアーと呼ばれる魔道鎧ですね。人が中に入って動かすものです。アルブズはどうなのです?」
ここにも巨石獣に類似したものがあるのか。昔、ボクみたいにロボットをこの世に産み出そうとしたヤツがいるっぽいな……。
「マニュアーは、人が乗って動かさないとダメなものなので、搭乗者が悪意を持って暴れない限り、勝手に動くことはありません。動かすにしても魔力が必要なので、結構、金食い虫の存在ですね」
「これをどうするのだ?」
「どうもしませんよ。マニュアーは、荷物を降ろしたり、力仕事に使うもの。売り物ではありません。売ったところで整備する者、錆びないようにする小屋、動かすための魔力。馬車を数十台所有するようなもの。並みの財力がなければ破産するだけですよ」
「……売ることはないのだな?」
「さすがに国のお偉いさんに言われたらわかりません。お役人様が売るのを禁止してくれるのなら助かりますが」
「一介の役人にそんな力はない」
「我々も同じです。お偉いさんに言われたら逆らうなんて出来ませんよ」
打ち合わせしたわけじゃないのに本当に口が回るヤツだよ。こいつに島を統治させるか?
「こちらとしては穏やかに商売が出来ることを願っています」
「そうであってくれることをこちらも願うよ。この船の大きさと品なら先ほどの金の板二枚だな」
「わかりました。ここではいい商売が出来そうです」
無事、役人による臨検は終了。荷を降ろせることに至った。




