第256話 皮肉
「異星人は皮肉も厳しいね~」
「へー。皮肉とわかるんだ。やはり年齢を重ねた者は真理に近付くんだね。なのに、それを捨てて機械になろうとするのか。業に突き立てながら無の局地に到達する。まったく、皮肉なものだ」
人間を求めれば愚かなまま。局地に到達すれば人間ではなくなる。まったく、哲学な世界になっちゃうな。
まあ、人間は同じ段階にはいられない。否応なしに次の段階へと進まねばならないってことだろう。良くも悪くも。結果がどうなろうとも、な……。
「別の星で生きた記憶があるってのは本当のようだ。若いのはあんたの言っていることもわからないだろうからね」
大体のグージーは無味無臭だ。よくよく付き合えば個性があるとわかるのだが、全体的に個が薄いのだ。ほんと、名前と顔を覚えるのに苦労するんだよ。
「さすがにハルフィーほどは生きてない。死ぬ直前の記憶はないが、五十年も生きなかったと思うよ」
三十半ばくらいまでの記憶は残っているのだが、それ以降は曖昧なのだ。生きたような気がする、って感じなのだ。
「わたしらにも生まれ変わりってのがあるのかね?」
「さあ? 前世の記憶を持って生まれるなんてバグみたいなもの。早々いないさ」
この世界には何人かいそうな気配は感じるがな。
「まあ、そういう小面倒なことはお酒でも飲みながら語ろうや。島の状況を教えてくれ」
答えが出ない問題より解決すべき問題を語り合おうじゃないか。この島は食糧生産地にしなくちゃならないんだからな。
「今のところ開発は順調だよ。空港のライフラインは整えたし、港の建設も始めた。軌道上に衛星も配置した。問題があるとすればわたしの舌が肥えたってことだね。酒ってもっと仕入れられないのかい? 艦長代理、飲みすぎだからって配給制にしちゃったんだよね」
「お酒って飲み放題だったんだ」
「仕事終わりに飲むビール。至高って意味がわかったよ」
人類はどうしても酒に溺れる業があるんだろうか? てか、機械化したらお酒飲めなくなるよ。それはいいのか?
「麦や葡萄がもっと手に入れば好きなだけ飲めるよ。飲みすぎて仕事にならないならアルコールを分解する薬を造りなよ」
「たくさん飲めて酔えるのがいいんだろう!」
だから機械化の話はなんだったんだよ! 機械化しても飲めて酔えるのか? だったらデータで飲んだことにして酔った気分になっておけや!
「まったく、人間らしいヤツだ」
ある意味、人間臭くて人間らしいヤツだよ。
「ほら、これをやるから続けてくれ」
海賊島にあったお酒を出してやった。




