第231話 ズル賢いくらいでちょうどいい
とにもかくにもルジカン商会が運んで来た食料で炊き出しを開始した。
何千人と参加して何百人と死んでいる。悲惨なものだが、生きている者は腹を空かせる。こんな時代では生きている者が優先だ。
「ハルジラさん。薬の効果を確認する好機とルジカン商会の名を売る好機ですよ」
酷いなど言わないように。まあ、言われてもボクは気にしないがさ。変なことして聖女とか呼ばれたら嫌じゃない。なんの羞恥プレーだよ? そんなのゴメンだわ。
「わかりました」
ハルジラさんもお人好しじゃなくてなにより。この時代で他者に優しいとか長生き出来ないいい見本だ。ズル賢いくらいあじゃないと長生き出来んわ。
ボクらは炊き出し担当として、腹を空かした兵士や冒険者ぽい連中に食事を提供した。
他にも炊き出ししている者がいる。考えることは同じなんだろうか?
「この星のヤツは優しいんだな」
トウジが感心したかのような口振りだ。
「そんなんじゃないよ。打算で来ているにすぎないのさ。ここで生きるのなら自分たちは役に立ちますってところを見せないと、なにかあったときに守ってもらえなくなるからね。ああやっていいところを見せているにすぎないんだよ」
上だってそんなことわかっている。わかってはいるが、蔑ろにも出来ない。応援に来たのに蔑ろにされたとか統治に支障をきたす。これだけの被害を受けたら余計にな。
「どの陣営にも適した生存戦略はあるものさ。グージーもルクセルも命令違反はしないだろう? それだって生存戦略みたいなものさ。逆らわなければ生きられる。食事が提供される。休むことが許されるってね。ここの人らは上のご機嫌とりをして、よりよい地位をもらう。そうやって生きているんだよ」
商人が国のために、なんて殊勝な考えなんてあるわけないし、そんなヤツは店を潰すだろうよ。
「商人は、聖人の皮を被った悪党だと思っていたほうがいい。利益さえ与えれば裏切らないし、損をさせたらあっさりと見限る。そういう生き物だと思っておくことだ」
まあ、ボクはそれでいいと思う。こちらも利用出来る者は利用し、使えないのなら近寄らないんだからな。
「人は持ちつ持たれつ。お互いに得しましょう、ってくらいの仲が一番上手くやっていけるものさ」
誰かをいいように利用しようなんてリスキーなことはなるべくしないことだ。関係はよくしておくに限る。わざわざ敵を作ることもないんだからな。
「……なんか、難しいな……」
「ボクといるなら腹一杯食わしてやる。お酒も好きに飲めばいい。それが嫌になったら離れてくれて構わない。そう理解してくれたらいいさ」
働いてくれるなら食わせる。食わせてくれないなら離れる。それで充分だ。
「わかった。美味いものが食えるなら従うさ」
「ぼくも」
なんとも男らしい思考だよ。




