第212話 獣人種
「竜とかは襲って来ますか?」
「ああ。縄張り争いに負けたヤツが何匹か来た。魔石は取り出したからあとで渡すよ」
天十握剣を見せてもらい、これと言った傷みはないが、軽く研いでおく。
「天十握剣と同じとは言わんが、仲間に持たせたい。五本くらい用意できないだろうか? 労働力で返させてもらうから」
「構いませんよ。そのつもりで十本は持って来ましたから。この地を制圧してください。この世界、思ったより大航海時代に突入するかもしれない時代だったから、数十年以内に人間がやって来るかもしれないんでね」
「大航海時代か。嫌な時代だな」
ボクは歴史には疎い。疎いが、大航海時代が富を生み、種を殺した時代ってことくらいは知っている。時代の波は大きく、時間は止められないことも知っている。
滅ぼされるくらいなら滅ぼしてしまえ、とまでは言わないが、猿人が残った世界線があっても構わないだろう。それこそファンタジーなワールドらしいってものだ。
「まあ、ボクは宇宙開拓時代にしようと思ってますがね」
さすがに宇宙な世紀にするつもりはない。資源を枯れさせたり、資源戦争とかは起こさせない。ボクが死んだあとは知らんけどね。止められるわけでもないんだしな。
「宇宙ね〜。昭和生まれのおれには空想の世界だわ」
「ボクだって昭和生まれでしたよ。今は十七歳の感性が強いので、甘い考えをしがちですがね」
たぶん、前世での歳はそれほど変わらないはずだ。乃木坂さんのほうがやや歳上っぽいみたいだが。
「おれも若いはずなんだがな。前世の年齢に引っ張られているよ」
「いいじゃないですか。甘い考えしていたらこんなところじゃ生き抜けないんですから。ボクなら死んでましたよ。虫、嫌いだし」
ここではパイロットスーツを脱ぐ気にはなれない。だってデカいんだもん、虫。まだGくらいのサイズなら鉄の棒で潰せる。けど、子犬くらいのダンゴムシとか触ったら気絶する自信しかないよ。
「アハハ。女の子だな」
「女の子なんですよ」
まったく、こんな時代なら男に生まれたかった。女は生き難いよ。
「剣は、猿人──今さらですが、なんか種族名とかあったりするので?」
「ないな。不便か?」
「猿人が侮蔑になってなければ」
「うーん。そうだな。人間からしたら猿人にしか見えんが、こちら側から見ると猿と思われるのは侮蔑になるかもしれんな〜」
人間の記憶があるだけに複雑よな。人間でも猿とか言われたら気分悪いだろうし。
「じゃあ、獣人とかどうです? この世界、人間がほとんどで、エルフとかドワーフとか言った亜人はいませんし。猿人よりマシだと思いますよ」
獣人も侮蔑にならなくはないが、ファンタジーなワールドだし、獣人なら通るんじゃないか?
「へー。いないんだ。それはちょっと残念だ。エルフとか見てみたかった」
ボクも最初はそう思っていました。いないと知ってからすっぱりと諦めたよ。




