第209話 山の家 ジール
まずは山の家に飛んでもらう。
宇宙を経由すれば一時間どころか三十分で戻れる。こんな技術がありながら戦争にしか使えない人間の業よ。人間の枠から出ないと戦争はなくならないのかね?
「お帰り」
ここを任せているジールが迎えてくれた。
「留守にして悪いね。なにか問題はあった?」
「なにもないわ。ただ、一人、グランダルクの町に向かわせたわ。レイの代わりにね」
「それは助かる。長いこと顔を出せてないからね。なにか言われてる?」
「顔を出せ、ってくらいね。情報は上げてあるからスマホで確認して」
「オッケー」
他にもマニュアー製造状況を尋ね、船を造ってもらうようお願いした。
バレンタスシアに行く用意を済ませたら久しぶりに山の家で休むとする。
「いつの間にか蛇口まで付いているよ」
お風呂に入ろうとしたら壁に蛇口が付いており、水とお湯が出るようになっていた。
トイレも見たら水洗に。上下水道まで完備しちゃってるよ。ありがたいけどさ。
「そう言えば、アルレシアのトイレ、よかったな~」
女性しかいないからトイレも女性特有なものになっていた。トイレットペーパーもいらない仕様だ。どんなかは勝手に想像してくださいませ。
「レイ、お風呂?」
「うん。ジージーもどう?」
「入る」
誘っておいてなんだが、工場のほうがしっかりしたシャワーがあるのに物好きなものだ。まあ、ボクとしては歓迎だけどさ。
服を脱いで体を洗う。やっぱり宇宙ボディーソープはいい。垢がごっそり落ちてくれるのがわかるよ。
……体に安全な成分で出来てますからね……。
「背中、洗ってあげる」
「うん? ありがとう」
なんだか甘えてきてるな。
ジージーに背中を洗ってもらい、ボクもお礼にジージーの背中を洗ってあげた。
すっきりさっぱりさせたら湯船に入り、肩を付けあって夜空を眺めた。
LED級の明るさなので暗いだけの空になっているが、こうしてゆっくり入れるだけで癒されるものだ。
静かな時間が流れるものの、嫌な沈黙ではない。穏やかな沈黙だ。
と、ジージーがボクの腕に自分の腕を絡めてきた。どした!?
「久しぶりにレイを一人占め」
なんか可愛いことを言ってきたぞ?! 百合な展開か!? いや、友情か。グージーに恋愛なんて概念はない。精々、友情くらいだろう。肉欲もないようだし。
「一人占めされちゃったか」
まあ、悪い気はしない。宇宙人でも可愛いものは可愛いからだ。
「うん。今はわたしの」
どうもジージーだけが統制や規制なんかから解放されているっぽい。なんかチップにバグでも起きたか? どんなバグかがわかれば強制されることもなくなるんだけど。
ソフト面も勉強しないとな~。
ジージーの体温を感じながらそんなことを考えた。




