第205話 工房
「さて。工房を見せてもらえる?」
ここに来たのは盾と弩の鏃を打つため。剣王さんのことはついでだ。
「あ、ああ。こっちだ」
店の奥から通路を通って工房に移った。
こっちがメインなようで、工房は二十畳もありそうな広さがあり、炉が二つもあった。
「ボクはレイ。正式には錬金鋼術士だよ」
ここの主そうな男性に自己紹介。よろしく。
「おれは、ジュアル工房のジェイダだ。あっちにいるのは息子のバル。弟子のニクスとライルスだ」
工房としては一般的なところだな。マリュードさんのところのように十人くらいいるところのほうが珍しいだろうよ。
「鉄はどれだけ使っていいの?」
「必要な分を使ってもらって構わない。代金は町からもらうんでな」
「出来る人が上にいるって頼もしいね。世の中、財布の中身をケチって被害を拡大させるヤツのほうが多いからさ」
「若いのに一端のことを言うものだ」
「ボクの周りに無能な大人が多かっただけさ」
有能な大人もいたが、無能なクセにやたら声が大きく、逆の方向に働き者だ。付き合わされるほうは堪ったもんじゃないよ。
「……そ、そうか。苦労したんだな……」
「まあ、いいこともあれば悪いこともあるのが人生。いい仕事をしていいものを食う。そんな人生が幸せてものさ」
「若いのに年寄りみたいなことを言うな」
仕方がない。中身は……いや、ボクは若い。身も心もピチピチなのさ。
「よし。さっさと始めようか。まずは盾から。鏃は大まかな形にまでして。仕上げはボクがやるからさ」
時間が惜しいだろうからさっさと始めるとする。
武器工房なだけに盾の素材も豊富だ。まあ、盾なんてそう使われるわけでもないなので十個がやっとだったが。
息子さんは、鍛冶より縫製のほうが得意なようで、盾の持ち手や鞘の縫製の仕事を任されていた。
やっぱり工房に縫製が出来る者がいるってのはいいよね。外注することもないし、縫製に手間を掛けられることもない。いるのが羨ましいものだ。
昼までに十個を完成させられ、すぐに現場に送られて行った。てか、剣王さん──打撃王さんが持って行ったみたいだ。
そんな逐次投入みたいなことしなくても、とは思ったが、あちらにはあちらの事情があるんだろうと盾を打つとする。
夕方までにさらに十五個を完成させた。ほんと、素材や部品が揃っているのはありがたい限りだ。一からだと一日十個がやっとだからな。
「ふー。さすがにお腹が減ったよ」
お昼、食べずにがんばった。いい仕事をすると食べるのを忘れてしまうのが困ったものだ。
「お疲れ様。用意してあるからたくさんお食べ」
と、現れた三十手前くらいのお姉さんに言われた。誰?




