第204話 打撃王
「ここの剣で剣王さんの体格に合うものはある?」
「そうだな。あれと同じ剣を使っていた」
カウンターの奥に飾ってある剣に視線を向けた。
「いい剣だね。この中では」
質実剛健な剣だが、気配から三級品ってところだろう。本当に鉄が悪いところだ。
ここの主と思われるおじさんに取ってもらい、触らせてもらった。
「惜しいよね。いい剣なのに、鉄が悪い。悪いが故に工程も悪くなる。薄く伸ばしたものを何枚も重ねて通常より高い温度で熱したら叩いて叩いて、また折り重ねて、熱したらまた叩く。それを繰り返したらもう一段よくなると思うよ。商売にはならないだろうがね」
鍛冶は趣味でやっているわけじゃない。食うためにやっているのだ、売れる剣を作らないといけないだろうよ。
「まあ、巨石兵を斬るんじゃないならこれで充分なんだけどさ」
剣を返して収納の鞄から自慢の一本を取り出した。うん、読んで字の如しの宇宙金属の一本です。またの名をバールとも呼ぶ。
「ほい」
と、剣王さんに放り投げた。
「巨石兵をこじ開けるときに打ったものだよ。並みの重さでは曲がったりはしないし、折れたりもしない。これを打ち直せば何体でも巨石兵を斬れるよ」
「……いや、このままでいい」
「え?」
「気に入った。握っただけでわかった。これはいいものだと」
なんか本気な目でバールを見詰めていた。剣王から打撃王にジョブチェンジですか?
「……ま、まあ、剣王さんがいいならボクは構わないけどさ……」
バールで殴れば大抵のものは……いや、止めておこう。グロい光景しか思い浮かべられなかったし……。
「これにいくらを出せばいい?」
「港に入れる許可をもらえる?」
剣王さんの問いに、ライルさんを見て答えた。
「実はボクたち、ここには商売に来たんだよね。初めての地だから船の許可とかなにも取っていない。許可をもらえるならその代価として払うよ」
「……すぐにとは言えませんが、許可を得るように動きましょう」
「急がなくていいよ。許可をもらって一旦戻るとなると半年は掛かるだろうからさ」
さすがに明日から、とかは言えない。半年後がベストでしょう。
「あと、商売できる商人も紹介してもらえたらありがたいかな。食糧を主に買いたいんだ」
リスク分散のためにも何ヶ所から食糧を集めるとしよう。
「わかりました。レイ様の望みに叶うよう動かせていただきます」
「ありがとう。苦労に見合ったお返しはするからさ」
野心があるなら協力させてもらうよ。ボクたちは富や名声など望んではいない。元の宇宙に戻るためと、この星の技術を進めるのが目的なんだからな。




