第201話 優秀な人
あ、名前を訊くの忘れた。
「──マルカ様の部下でライルと申します」
と、間髪入れず二十半ばの男性が現れた。びっくりしたぁ~っ!?
「バ、バリジング族の人?」
なんだか身なりがいい。町でもかなり上位っぽそうだ。
「いえ、役場の者です。先ほどの方はマルカ様。町長の秘書をしているお方です」
役場? 町長の秘書? バリジング族とは関係ないんか?
「え、えーと、なにさんだっけ?」
「ライルです」
「あ、ああ、ライルさんね。びっくりして聞き逃しちゃったよ」
あの人と話している間、あなたいなかったよね? 視界にもいなかったはず。なんか透明になる特殊能力でも持っているのか?
「いえいえ、お気になさらず。これよりわたしが窓口とならしていただきます」
「余所者にも丁寧なんだね」
丁寧っていうか腰の低い人だ。この世界ではなかなか見ないタイプだぞ。
「これでも人を見る目はいいと自負しております。あなた様──」
「──レイだよ。レイと呼んでくれて構わない」
「では、レイ様とお呼びさせていただきます」
この人、前世でもいたな~。腰は低いが卑屈ってわけじゃない。笑っていても目が笑ってないのだ。
「……かなり優秀な人のようだ……」
「いやはや、そう言っていただけるとは光栄の限りです。レイ様も若いのに優秀なようで」
ボクも笑顔を見せているが、目は笑ってないんだろうな。
「また明日、来させていただきます。鍋の代金はこちらで払っておきますので、進めていただいて構いません。明日には工房を用意させていただきます。準備を進めておいてください。では」
一礼してライルさんが去って行った。
「……なんか、一番のバケモノを見た気分だ……」
なにより怖いのは人間ってわかる場面だったよ。
「まあ、やることはやるか」
おばちゃんたちが戻って来ることはなかったので、鍋を丸めてチャフへと変えた。
「ごめんよ。直してあげられないで」
鍋としてまっとうさせられないことに謝った。
夕方には鍋をチャフに変えられ、これをどうしたものかと悩んでいたらジージーとハラーシが帰って来た。お帰り~。
「レイ。ルクセルがまたどこかを占拠したみたいよ」
「うん。それに協力を求められたよ。チャフと盾、鏃を打つことになった。明日にも移動するかもしれない」
「またマニュアーを奪うの?」
「いや、もうグージー製のがあるからいらないよ。ただ、情報は欲しいかも。あちらは表立って動いてない。本当なら宇宙に出て現在位置を探ったり、仲間と合流するために動くものだ。それが動いてないとなると、ルクセルは崩壊寸前なんじゃないかな?」
グージー側にはボクがいる。仲間と合流する手立てがある。しかし、ルクセル側には現地人の協力者も、仲間と合流する手立てもない。上の者としては八方塞がり状態。統制するのは難しいだろうよ。
「この星の者としては自暴自棄になられるのは困る。だからと言って戦争をされても困る。理想は、停戦協定が結ばれることだ」




