第199話 ドキドキワクワクアドベンチャラー
「巨石兵がまた出たってよ」
なんか近所の奥様方の溜まり場となってしまった宿の中庭。鍋を直していたらそんなおしゃべりが耳に届いた。
ボクもボクだが、奥様方も鉄を打つ音に負けずよーしゃべる。もしかして耳に届いてない? それともノイズキャンセラー搭載してます? なんで楽しくおしゃべり出来るのが謎でしかないよ。
「ハンターたちがいないのはそのせいみたいだよ」
巨石兵がマニュアーならルクセル側は統制を失い掛けているんじゃないか?
崩壊するのは止めて欲しいんだがな~……。
そんな宇宙人に出会えのに、なぜかボクは地道に仕事をこなしている。まあ、ドンパチを求めているわけじゃないんだが、なんかこうドキドキワクワクアドベンチャラーがあってもよいのではなかろうか?
いや、ドキドキワクワクアドベンチャラーはあったよ。こうして別の大陸まで来てるし。満足はしている。鍋とは言え、鉄を打つのは嫌ではない。中途半端なこともしない。この鍋が長く使われますようにと愛情も籠めている。
それでもファンタジーなワールドにSFが落ちて来たのだ、ドキドキワクワクアドベンチャラーを体験したいと思うことは間違ってはいないはずだ。皆もそう思うだろう?
なんて問うても「そうだぁー!」って返って来るわけでもなし。今は山のように集まった鍋を直すとしましょうかね。これだけやると、とんでもない稼ぎになっているし。
二日ほど過ぎた頃、おばちゃんの中に不似合いの男がいた。
歳は三十半ば。見た感じからして役人だろうか? なんだ?
「すまないが、少しいいか?」
「仕事をしながらでいいのなら」
実際、手を止められる量じゃないんでね。まったく、ウワサが広まるの早すぎだよ。
「鍛冶士と聞いたんだが、本当か?」
「正式には錬金鋼術士だね。こっちにはないみたいなんで鍛冶士として名乗っているよ。ちなみにこれは路銀稼ぎだね。余所者だからさ」
「錬金術士とは違うのか?」
「まあ、そう遠くはないが、ボクは金属に特化した感じだね。薬草とかの錬金は苦手かな。何十回に一回は成功する感じだね」
それも何年も前のこと。今は百回やっても成功しないと思うよ。
「仕事をお願いしたい」
「それをお姉様方のほうを向いて言ってみなよ。言えるんなら引き受けても構わないよ」
ボクなら絶対に言えないね。てか、納得させてもらわないとボクが困るよ。こちらに不満が来たら嫌だし。
「バリジング族族長の命だ」
おばちゃんたちのほうを見て言ったら波が引くように消えて行ってしまった。おっかない部族ですか?
「これでいいか?」
仕方がない。おばちゃんたちを納得(?)させたのだからね。




