第197話 剣王
なんて心配も杞憂で、爆発的に売れてしまった。
お陰で、武器屋にはジージーとハラーシに行ってもらいました。あ、ローサは昼前に宿に来て、裁縫道具を売るのをお願いしています。
おばちゃんの連絡網はここでも優秀なようで、次から次へとやって来る。夕方まで終わるかな?
裁縫道具には限りがあるので、夕方前には完売。やっぱりおばちゃんたちにはクリップと洗濯バサミが人気があった。
そのうち町の職人の手によって作り出されるだろうが、一朝一夕で作れるものではない。今の技術であの弾力性を生み出すのは厳しいだろう。形だけ真似ても簡単に折れたりするはずだ。すぐ錆びるだろうしな。
錬金鋼術には鉱石の精製や精錬なんかも含まれる。打つばかりじゃないんですよ。
「今日はここまで。また明日ね」
鋳掛を望む人が多すぎて一日では終わらなかったよ。まったく、廃鍋が集まるのも頷ける。鉄が粗悪すぎる。
「あー疲れた」
粗悪な鉄を鋳掛するのがこんなに大変だったとは。いい鉄ばかり打ってきたから集中力が無駄に消費してしまったよ。ふー。
「でもまあ、そこそこ稼げたな」
まだ計算はしてないが、三十万ロクシェは行ったんじゃないか? 鋳掛でもっと取れたなら五十万は越えたはずだ。
「ただいま」
部屋で休んでいたらジージーとハラーシが帰って来た。遅かったね。なんかあった?
「ええ。剣を欲しいと言われた人のところに連れて行かれて剣のことをあれこれ聞かれたのよ」
「剣王ってのがいたわ」
剣王? 剣聖みたいなものか?
「またその剣王とやらと戦わされたの?」
「ええ。一時間くらい相手させられたわ」
それはご苦労様です。ハラーシはそういう運命の下にいるんだと諦めてちょうだいな。決してボクではないことをここに明言しておきます。
「仲間になれとか言われた?」
「なぜわかるの?」
「セオリーみたいなものさ。自分に匹敵する者がいたんだから」
しかも、若い女と来ている。男なら仲間に欲しいと思ってしまっても不思議じゃない。よほどの剣バカでなければな。
「迷惑な話よ」
男に慣れたとは言え、まだ男女の恋愛以前に、男に好意すら持ってはいない。自分らとは違う種族としか見てないようだ。
「男と女がいる世界では普通なことさ。嫌なら嫌と断ればいいし、無理矢理なことをしてくるなら殺しても構わない。面倒になれば立ち去ればいいんだからな」
補給地は他にもある。面倒を片付けるくらいなら放棄したほうが楽ってものだ。
「お腹空いたでしょう。まずは食事にしようか。それとも汗を流す?」
「うん。汗を流しいわ」
まだお客が泊まりに来てないので井戸に行って汗を流させることにした。




