第195話 衛生観念ない世界
女将さんは、快くおしゃべりに付き合ってくれた。
まあ、お茶とお菓子で釣ったんだけどね!
スピーカーを通してのおしゃべりだから不思議がられたが、そこは魔法がある世界。ここでも魔法は一般的なものになっており、魔道具もあったりするそうだ。
ちなみにこの宿は、ミリシンって名前で、女将さんの祖母の名前なんだとか。軽く六十年は続いている老舗なんだとさ。
結構、人気の宿のようで、今日はなぜか人が来ず、部屋が半分以上空いていたそうだ。どうやらボクたちはラッキーだったようだ。
暇ってこともあり、夕方近くまでおしゃべりに付き合ってくれた。
「包丁とか研ぐものがあったら言ってよ。付き合ってもらったお礼がしたいからさ」
ここには錬金鋼術士はいないようなので、鍛冶士ってことにしておいた。女が、って珍しがられたが、海の向こうでも女がやっているのは珍しいと答えておいたよ。事実だからな。
「それならお願いしようかね。旦那に言ってみるよ」
その旦那さんは、褐色肌だった。やっぱり肌の色で偏見はなく、種が違うってわけでもないようだ。ここではこれがデフォってことっぽいな……。
「あんたが鍛冶士ね」
「まあ、出来を見てよ」
論より証拠と、まずは包丁を一本研いでみた。どや!
「……す、凄いな。なんでこんなに切れ味が増すんだ……?」
「それが腕ってものさ」
錬金鋼術士はただ研いでいるわけではない。鉄の分子構造まで変えている。よりよい鉄にする力があるのだよ。
「音が気にならないなら鍋や釜でも直せるよ」
「本当か? それなら頼みたい! 昼間なら多少の音で文句を言うヤツなんていないからな!」
「なら、明日の昼前にやっちゃうよ」
「ああ、頼むよ。夜はうちで食うといい。ご馳走するよ」
というのでご馳走になり、ザンテカの料理を知ることが出来た。ここ、トマトみたいな野菜の名産品なようで、魚介をトマトで煮たものがよく食卓に上がる料理なんだってさ。
「美味しいわ」
「ええ、美味しいわ」
ジージーもハラーシも気に入ったようだ。明日はローサにも食べさせてあげよう。今も上空で情報収集してくれているんだからな。
「ジージー。探索はどうだった?」
「ハンターと呼ばれる組合所があったわ。今回は中に入らなかったけど、魔物が運ばれているのを見たわ。結構、狩りが盛んみたいね。荷車で運ぶ仕事もあるみたいね」
ファンタジーな世界でも獲物の輸送は重労働だ。誰もが収納の鞄を持っているわけでもないからな。
てか、魔物を町の中まで運んで来るってのがおかしいんだよな。衛生観念ない世界だからって臭いとか出るだろう。水だって汲まなきゃならないのにさ。だったら町の外、川沿いでやれよって話なのだ。




