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32話 荒波の旅と海の脅威

 

「よーそろー!」


 横薙ぎに潮風が吹き付ける晴天の大海原で、波間を切り裂くように力強く突き進む船の上でヒカリがご機嫌に声を上げた。

 彼女らは目的の魚を手に入れるため、ギールコンが用意した船と乗組員と共に海へ漕ぎ出したところだった。


「最新式とはいえ、通常の帆船(はんせん)での航海に随分はしゃいでいるようですね」

「……彼女は大体なんにでもああだから気にしないでくれ」

 ※

 《大はしゃぎで草》

 《波高すぎて船めちゃ暴れてるぞww》

 《帆船なのになんか速くね?》


「おいおいなんだこりゃ、揺れすぎだろ……ごわっ!」

「ロック、揺れの反対側に重心を向けないとちゃんと歩けないよ」

「おおお……ぐらぐら……結構、楽しいかも……」

「それで、目的の海域まではおおよそ二時間だったか」

「ええ、ギールコンさんが大金を費やして買うだけはあります。船底に”水竜の鱗”が使われていて、”風走機(ふうそうき)”の魔石の数もある程度増量されているそうです。従来の船より飛躍的に航行速度が上がっていますね」


 ()()と吹き付ける風に乗る船が海を行く中各々が気ままな時間を過ごしている。

 ヒカリはどこまでも続く水平線を見渡しながら空気を肺いっぱいに吸い込み、そして吐き出す深呼吸を挟んでから船の外側に身を乗り出し、船体すぐ近くの水面を覗き込んだ。

 そこには柄の短い槍を手に持ち、背中から生える魚体をうねらせて船と同じ速度で並走するように泳ぐ魚人族(ウェルキル)の少女、ベルデリーリア・フォルカの姿があった。


「ねえベル! 海に出てからずっと泳いでるけど疲れてないかしら?」

「魚人に泳ぐの疲れるかって聞く……? ……別に、これくらいでバテるようなひよっこじゃないよ。まあいつもよりはちょっと速いけど……今日いっぱいはヘーキ」

「ふーん。水は冷たくない? もし魔獣が出たら甲板に上がってきてもいいのよ!」

「おせっかい……いいから休んでなよ。そっちこそ体力温存しとかないと仕事に支障出るんじゃないの」

「あははっ、それもそうね。それじゃあお言葉に甘えて大人しくしてるわ」

 ※

 《本当に魚みたいだね笑》

 《鳥に飛ぶの疲れるか聞くようなもん?》

 《鳥だってずっと飛んでたら疲れるだろ》

 《気遣いは◎です》

 《ベルちゃんツンデレの波動を感じるね》


 ヒカリはベルとの短いやりとりの中で、その無愛想な物言いに似合わず他者との会話が嫌いではなさそうだという気質を感じ取っていた。

 しかし彼女の方からの気遣いを無下にしないよう気を付けて船上の旅を楽しもうと、甲板にいるネヘディヤと話そうと近付いていった。


「ねえ、その鱗とかフウソウキってなんなの? 私初めて聞いたわ」

「そうですか……水竜の鱗は黒鱗(こくりん)大陸西側近海に生息する擬竜(ぎりゅう)から収集され、貴重な素材として各国に輸出されています。これを船底部分に組み込むと船が進む際に水の抵抗が軽減され滑らかに進めるようになるのだそうです」

「へぇ〜、とても便利そうね」

「そして風走機(ふうそうき)というのは()()のことです」


 ネヘディヤが示す先は船尾であり、文字通り尻上がりといったように吊り上がった尾先の部分には大きな扇風機にも似た物体が取り付けられていた。


「あの装置に風を起こす魔石が内蔵されていまして、今前方に向かって吹いているこの強風もあれからやってきているものです。この風が帆に吹き付けることで船は進んでいるんですよ」

「なるほどねぇ。自前で風を用意して帆船を進ませるなんて、面白いことするじゃない」

 ※

 《かしこい》

 《風向き関係なく進めるのはすごいね》

 《実際昔の船にしてはめちゃくちゃ早いな》


 ヒカリや視聴者たちは彼らにとっての既知と未知、双方の技術を組み合わせた創意工夫によって優れた道具を生み出す異世界人たちの創造性に感心するばかりだった。






 *






 ヒカリたちが航海を楽しみながら二時間ほど移動し、ようやく目的の海域であろう地点が間近となっていた。


「そういえば、ギールコンって昔からこんなに派手なことをする人なのかしら?」

「私はあまり彼との付き合いは長くないのですが、そうだという話はよく聞きますね。若い頃は冒険家として世界中を旅していたそうですし、マーデル海で馬車より大きい魚を釣ったこともあるとか」

「豪快な人だねぇ。でもそうするとなぜこの船には乗っていないのかな? 彼の性格なら自分の手で食材を調達しようとここに同行していそうなものだけど」

「さあ、私にはなんとも……帰ってから尋ねてみては? ……そろそろ例の海域ですね。道具を用意しておきましょう」


 もうすぐに到着というところで、本格的にファレワルナミヒゲザメの捕獲に取り掛かる準備を始める一行。

 獲物がよく喰らうであろう魚類の肉を餌として鉄鎖網(てっさもう)の中に取り付けていく。


「いつ網にかかるかは分かりませんので、成果が出るまで何日も要するかもしれません」

「しばらく退屈になりそうねぇ。魔術の練習でもしようかしら……」

「ニフ! ちょっといい!?」

「ベル?」


 準備を終えて網を海に投げようかというところで、その海にいるベルから声が掛かる。

 一行が甲板から水面を覗き込んで見えた彼女の様子は、少なくともこれから世間話をしようといった気の抜けたものではなかった。


「どうしました?」

「船の右手側! 遠くから船が近づいて来てるんだけど! ここら辺ってなんか船が通る場所だったっけ!?」

「なんですって……?」


 ベルの言葉に眉を(ひそ)めることで、それが明らかに考えられない事態であることを表情で示すネヘディヤ。

 急いで手持ち用の望遠鏡で船から三時方向付近を見渡すと、確かに霧がかった水平線の上に一隻の船が浮かんでおり、それが彼女らの船があるこちら側へ真っ直ぐに向かって来ているのが分かった。


「この海域とその周辺には商船や警海船(けいかいせん)の通る航路はないはず、それにあの霧……直接見るのは初めてですが、あれは()()だと思われます!」

「え、海賊って本当にいるんだ……」

「今どきよくやるねぇ」

「HOーーー! 待ってましたあ! やっぱり海といったら海賊よねー!」

「どうしてそこで興奮し始めるんですか!?」

 ※

 《おお!!》

 《マジで出るの草》

 《ヒカリちゃん海賊好きすぎw》

 《海にも普通に魔獣いるらしいのによく生きてんな》

 《おーう あいつら襲う相手を間違えたなー》


 元の世界にいた頃からよく知る概念である海賊。初めて本物のソレと遭遇したことでヒカリの気分はさらに高揚している。

 一方のアダムたちが抱いている感情に含まれる驚きの比率は意外にも少なく、そこには侮蔑(ぶべつ)にも近い呆れの気持ちが大半を占めているようだった。


「なんで霧といえば海賊なの!?」

「えっ、と……軍や傭兵から姿を隠すためだとか、襲撃対象に察知されるのを遅らせるためだとか、いくつかの理由で過去の海賊はそのほとんどが霧を出す魔石を多用していたから、だったかと……」

「このせいで対抗手段を持たない商船などがかなり被害に遭ったらしい。と言ってもずっとずっと大昔の話だが……今の時代では滅多にいないものと聞いている」

「へぇー! ってことは実物に出会えた私たちは幸運ってことね!」

「い、いえ、これから襲われるのに幸運ということは……っこほん! それよりも攻撃をして来た場合は迎撃をお願いしますね!」

 ※

 《なるほどね》

 《魔石すげー便利だな》

 《絶滅危惧種は保護しなきゃねぇ?》

 《なんか海賊に会えたことに大喜びで草》

 《すごい確率ではあるんだろうけど喜んでいいことでもないだろ》

 《早く片付けて釣りしよう釣り ここからでもビームで消し飛ばせるでしょ》


 浮ついた様子でありつつも気になったことをしっかりネヘディヤに質問するヒカリ。興奮しているがあくまでも冷静な部分を失ってはいないとわかる挙動に周囲は少なからず感心を覚えていた。

 そんな中でランドロックは己の荷物をひっくり返して何かを引っ張り出しているようだった。


「ヒカリ! ()るなら俺の武器を使ってみてくれ! 二種類の”魔弓(まきゅう)”を作ったんだが、まあ人間が相手なら()()()()でいいだろ!」

「魔弓ってなに? これ拳銃みたいね」


 ヒカリは彼から言葉の通りグリップ部分が細く銃身の長い拳銃のような武器を手渡される。

 いや、彼女の知識に当てはめれば外観は拳銃よりも弓のないクロスボウに近いだろうか、それは銃のような機構が存在しない代わりとでも言うかのように銃身の至る所から魔術的な細工の痕跡を感じる代物だった。


「コイツは簡単に言えば”魔術を自動的に発射する武器”ってやつだ! 械工術(ロゴウ)の源流とも言える物体に魔術理論を刻み込む技術でな。魔力を流すだけである程度完成された魔術で攻撃できるんだよ!」

「ふぅん。面白そうじゃない!」

 ※

 《銃じゃねぇか!》

 《ほーかっけぇ》

 《本当にちゃんと使えんのか?》

 《ちょっと海賊のピストルっぽくない?》


 ヒカリにとって魔術による攻撃自体は今やなんら苦もなく即座に放つことはできる。彼女はとうにある()()()()()()()()戦いに武器を必要とはしていないのだ。

 それでも彼女がその武器を手に取るのは、ランドロックへの義理と実験に協力するという判断、そしてなによりも、その方が楽しそうだからである。


「使わせてもらうわ! それじゃあ行ってくるわね!」

「ああ……ん? 行くってどこに……? なっ……!」

「ヒカリちゃん!?」


 魔弓を片手に持ってよしと頷いたヒカリは突然背に光の翼を現して飛び上がり、一行の乗る船から離れて空を(かけ)ていった。

 その突拍子もない行動に驚いて焦りを見せるアダムたちだったが、彼女が飛行していく直線上にあるものを確認すると途端にその表情が呆れに変わっていく。


「え、えっと……」

「あいつ一人で……まったく……」

「ははは……こっちから襲いにいっちゃうとどっちが海賊かわからないね……」




 そうして一キロメートル以上の距離をあっという間に飛んだヒカリは、海に浮かぶ中規模程度の船に近付き、多数の人間がひしめく甲板の中央に降り立った。

 統一性のない雑多な服装に大きな刃の剣などを持つ男たちは、唐突に自分たちの船に乗り込んできたヒカリの姿に驚いているようだった。


「なんだなんだ星屑でも降ってきたかあ!?」

「いきなり光って飛んできやがって! 鳥なのか星なのかどっちかにしやがれ!」


「あなたたち! 海賊ならやることは一つよね! いらっしゃい、私を倒せたらなんだって奪わせてあげる!」


「なにぃ〜! こりゃ天からのお恵みかあん!?」

「うおおさすがにわけがわからねぇが上等だああ!!」

 ※

 《おいおい》

 《突然すぎて草》

 《適当なことばっか言いおってからに》

 《相手の方が困惑してるやんwww》

 《何気にかなりバトルジャンキーだなこいつ》


 海賊たちはヒカリの言動に混乱しながらも、滅多に出会えないほど容姿の整った女を手込めにしてしまえる絶好の機会に気勢を燃やして武器を手に取り始める。


「おまえら引っ込んでろ! へへへ最初に俺さまの相手をしてもらおうかあ?」

「船長!」

「これで毎日の楽しみが増えるぜ」


 彼女を囲う海賊たちの輪から一歩踏み出してきたのは大柄で筋肉質な無造作に髭を伸ばした男。

 この海賊の頭目であろう男は外見のせいかヒカリが己より弱いと思い込み無警戒に近付いて手を伸ばそうとしている。

 彼女はそんな戦士としての片鱗も垣間見えない腑抜(ふぬ)けた振る舞いにため息を一つこぼし、手に持った魔弓へ魔力を流し込み瞬時に船長へと向けて魔術を発射した。



「どひいいいいいい!?」

「船長!」



 魔弓から撃ち出された光弾は船長の胸の中心に命中、すぐに全身へ広がる電流に船長は体をブルブルと震えさせながら倒れ込み、泡を吹いて気絶してしまった。


「うん、これなら非殺傷性の攻撃も簡単に撃てるわね。相手に応じた調整も楽そう。ロックったらいいもの作るじゃない」

 ※

 《草》

 《即落ち2コマ》

 《でしょうね》

 《反応速度いいな、十分実用的かも》

 《なんだ殺さないの やさしいじゃん》


 ヒカリは倒れ込んだ船長を捨て置いて魔弓の使用感を寸評する。

 そしてすぐに頭目の敗北に動揺が広がる船員たちへ視線を向ける。


「さて、それじゃあ降伏するか抵抗するか選びなさい。余計な手間をかけさせなければ、優しくしてあげる」


 その言葉と共に改めて闘志を周囲へ放ってみれば、ほとんどの海賊たちは明らかに戦意を喪失していくのが分かった。

 しかし彼女は烏合の中で密かにこちらを狙っていつ飛び出してもおかしくないほど、引き絞られた弓の(つる)のような殺意を秘めた者が紛れていることを察知していた。


 そしてヒカリが魔弓を持つ手を下ろした瞬間、背後から二つの人影がかなりの速度で飛び込んできた。

 それらは大きな刃を備えるサーベルを彼女の脳天目掛けて思い切り振り下ろしてくる。



「そうこなくちゃ」

「ッ!?」

「うッ!」



 その躊躇のない攻撃に笑みを浮かべる彼女は、それを避けることなくあえて()()へ滑るように潜り込み、二つのサーベルの持ち手を掴んで受け止めてしまった。



「殺気が漏れすぎ。そんなんじゃあっさり動きを読まれるわよ!」



 掴んだ手を受け流すように前方へ二人分の体を投げる。

 受け身をとって転がり体制を立て直し、今度は正面からヒカリと相対する刃の持ち主たち。

 それは男たちと同じように雑多な服に身を包む日に焼けた褐色肌を持つ、大分年若いと見られる少年と少女だった。


「あらあら、まだ子供じゃない。どうして海賊なんてやってるのかしら?」

「……」

「まあいいわ……筋は悪くないわね。おいでなさい、手本を見せてあげる」

「ぬぅぅぅん! ガキにばかりおいしいところ持ってかせてたまるかい! かかれお前らぁ!!」

「おおおおおおお!!」

 ※

 《つえええ》

 《褐色娘きたーーー》

 《強キャラ感出過ぎww》

 《釣りしようよ》

 《何のために来たのかわからんなこりゃ》


 余裕の態度を見せつけるような挑発に若い二人はもちろん。対峙する三人の闘気に当てられた海賊たちすらもいきり立ち、ヒカリが襲いくる男たちをバッタバッタと薙ぎ倒す百人組手のような光景が始まった。




「……なにをやっているんだ彼女は」

「うーん、まあ向こうはヒカリちゃん一人に任せてよさそうだね。とりあえずこっちは予定通り漁を始めておこうか」

「は、はぁ……こちらの仕事に支障が出ない分いいのでしょうか……では、ベル! 網の監視はお願いね!」

「りょうかい……んん……?」


 一人先走って海賊の船に乗り込んでいったヒカリに拍子抜けしたアダムたちだが、仕事で来ていることには変わらないため、気を取り直して餌を用意した網を海に投げてしまおうと準備を再開する。


「深いとこに、なにか……?」


 そんな中で海面に浮かぶベルは、水を介して伝わってくる何らかの気配に暗く果てしない海の底を見つめていた。




 そして十数分ほど時間が経過した頃。

 海賊船の甲板には、息も切らさず数一つない様子で悠然と立つヒカリと打ちのめされて倒れ込む大勢の男たち。そしてその中で息も絶え絶えながら何とか己の足で立ち続け、戦意を絶やさずヒカリと相対する二人の少年少女がいた。


「あなたたち根性あるわねぇ。こんなちっぽけな船に乗ってるのは勿体無いんじゃない?」

「……うるせぇ」

「ふふ……生意気なところも嫌いじゃないわよ?」

 ※

 《うわすげえ》

 《マジで百人斬りいったんじゃね》

 《それはたしかに》

 《なんかヒカリちゃんちょっとS入ってない?》

 《あれは才能ある若者を扱くのが楽しいだけだわ》


「さてと……っあら?」


 限界まで倒れずに戦い続けた二人に強い関心を示しながらも、そろそろ終わらせてしまおうかと魔弓に魔力を流し始めたヒカリだが、足下から……正確には足と接する船よりもさらに下、水の中の方からなにか強い揺れが伝わってくるのを感じた。

 その揺れは次第に大きくなっていき、やがて船全体を揺るがすほどに膨れ上がりそれが只事ではないことを否が応でも理解させてくるようだった。


「なにが……っ!?」


 その揺れの正体を考えるよりも早く、ついに何か巨大なものが船にぶつかった強い衝撃と共に、船自体が海を離れてその身を持ち上げられていくのが分かった。

 ヒカリは咄嗟に空を飛び、魔術で水を作り出し甲板にいる人間を皆掬い上げて船から離れていく。


 そうして船を見返したことで揺れと船にぶつかったものの正体を確かめることができた。



「あれは……サメ!?」



 それは岩のような表皮を持ち非常に長い波打つ(ひげ)が生えた巨大な(サメ)だった。

 そのサメがかなり大きい海賊船の船底に丸ごと(かじ)り付いて持ち上げてしまっている。


「あれたぶん私たちの目的のサメよね? あんなに大きいなんて聞いてないわよ!」

 ※

 《でけえええ》

 《あの網に入るわけなくて草》

 《あれ魔獣じゃないのか…》

 《デカすぎんだろ・・・》


 ギールコンから事前に聞いていた情報には確かに大きさに関するものはなかったが、ヒカリとしてはそれにしても限度があるだろうという思いだった。

 だがいくら嘆いても目の前にある現実は変わらない、彼女はそれはそれとしてすぐさま意識を切り替え、この巨大ザメをどう捕獲したものかという思考を巡らせ始めた。


 しかし……。



「……うん? 待ってよ……サメのもっと下にまだなにか……はあ……!?」



 問題のサメをよくよく観察していると、半身程度しか水の上に晒されていないサメの水中の部分により大きな影があるようだというのが見て分かる。

 ヒカリがそれを見つけるのとほぼ同時に、ファレワルナミヒゲザメがさらに海面から姿を持ち上げていき、その()()()()()()()()()()()()()()存在の姿が露わになった。



「なになに……! 今度は巨大海蛇ですって!?」

 ※

 《えええええ!?》

 《なんだこいつ!?》

 《デカすぎんだろ・・・》



 それは見る見るうちに海賊船とそれに食らいつく巨大ザメを持ち上げてその長大な身体を海面から伸ばしていく。

 それはまさに巨大な海蛇のような魔獣といった姿だった。

 そして次の瞬間には突然ヒカリが飛んでいる場所の真下から急襲するように大きな影が飛び出し、掬い上げた人々と共に回避してその姿を確かめれば、巨大ザメを捕らえているものと同じ蛇魔獣が何匹も海面から姿を現してくるところだった。


「ちょっとちょっと、何匹いるのよ!」


 突然の急展開にさすがのヒカリも少しばかり理解が追いつかなくなってきたところにさらなる異変が起こる。

 次に巨大ザメや蛇魔獣が現れた時より圧倒的に大きな影が海水を押し上げて彼女らの前に現れた。

 それは小山と形容できるほど大きな何本もの(つの)が生えた殻の中から顔を覗かせている。

 花びらのように開き無数の牙が乱雑に生える口腔(こうくう)から地鳴りのような唸り声をあげる巨大な魔獣だった。

 その魔獣は目の前にあるもの全てを喰らい尽くす凶悪で獰猛な食欲を物理的な圧迫感のようにぶつけてきていた。


 そしてヒカリは蛇魔獣とその巨大魔獣との間で気配が繋がっていることを感じ取り、それが幾つもの蛇の足を持つ一匹の魔獣であることを察知した。



「これは……なかなか面白くなってきたわね……!」

 ※

 《やべえええ!!!》

 《どうなってんだこの海域は……》

 《デカすぎんだろ・・・》


『––––––––––––––––––––!!!』

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