第六章:名医の危機を回避せよ(建安13年・春)
周不疑を退けてひと息ついたのも束の間、史実どおりの厄介ごとが俺の前に転がり込んできた。
伽陀が妻の病気を理由に都を離れ、帰って来なくなってしまったのだ。
その結果―― 父上・曹操の持病である偏頭痛が悪化し、ブチ切れた曹操は 名医・華佗を処刑しようとした。
(マズい! 華佗が死んだら、今年の冬にやってくる俺のインフルエンザのデスフラグが確定する!!)
十三歳になった俺は、必死の脳内データベース検索から、ひとつの“嘘”を思いついた。
そして処刑場へ乱入した。
「父上、お待ちください! 華佗を殺してはなりません!」
「黙れ冲! こやつは妻が病気と偽って都に帰ってこないのだ!」
「違います! 華佗が許昌に帰ってこなかったのは…… 実は “病気の愛人”を隠していたからです! 妻が病気というのは嘘で、本当はその“不倫相手”の看病をしていたのです!」
華佗は目を丸くした。 もちろんそんな愛人は存在しない。
だが、俺の「話を合わせろ」という強烈なアイコンタクトを察し、 「は、はい! その通りでございます!」 と涙ながらに話を合わせた。
俺はさらに曹操の耳元で囁いた。
「父上……あなたの頭痛を治せるのは、世界中でこのスケベな天才医者しかいません。 ここで殺せば、父上は今後も頭痛で苦しみますよ。 それに、本当に罰したいなら――殺すよりも酷な方法があります」
「ほう……どんな方法だ?」
「華佗の正妻と、その“偽の愛人”を二人とも都(許昌)に強制移住させ、 一歩も出られないようにするのです。 正妻と愛人が毎日顔を合わせる家で暮らす…… これ以上の地獄はありませんよ」
曹操はニヤリと冷酷に笑った。
「なるほど、それは死刑より恐ろしい。 よし、華佗の命は免じる。 ただし、二人の妻を都へ呼び、一生監視下に置くものとする!」
こうして華佗は、存在しない愛人との“修羅場ライフ”を都で送る羽目になったが、 命だけは助かり、曹操の専属医として許昌に留まることになった。
(よし……これで冬のデスフラグは一つ回避!)




