第三章:象 vs 現代人 〜曹冲称象を3分で終わらせた〜(建安5年・秋/5歳)
香炉騒ぎがようやく落ち着いたころ、今度は孫権からとんでもない贈り物が届いた。
庭先に現れたのは――
どう見ても場違いな巨大な象。
(いやいやいや! 三国志の宮廷に象って何!?
孫権、絶対に嫌がらせでしょこれ!)
文官たちは象を見た瞬間、口々に叫び始めた。
「象を斬り刻んで量ろう!」
「いや、輪切りにして重さを測るべきだ!」
(お前ら、もうちょっと方法あるだろ……!
なんで“斬る”しか選択肢がないんだよ!)
そんな中、俺(曹冲)はスッと前に出た。
「父上、そんな野蛮なことをしなくても、僕の“アルキメデスの原理”を使えば3分で終わります」
曹操が目を細める。
「ほう……冲よ、やってみせよ」
俺は銀屏に向かって手を振った。
「銀屏ちゃん、あの象を船に乗せて!」
「はーい、ダーリンのためなら!」
銀屏が象のお尻をポンと叩くと――
(今、骨のきしむ音がした気がするが)
象は恐怖で船に飛び乗った。
船が沈んだラインに炭で印をつけさせ、象を降ろしたあと、
同じラインになるまで魏の兵士たちを船に乗せる。
「はい、あとは簡単。兵士たちの体重を一人ずつ量って合計すれば、それが象の体重だよ!」
文官たちは目を丸くし、曹操は大歓喜した。
「おおお! さすが我が最高傑作の息子!」
その横で銀屏は、愛用の30キロ鉄アレイをドサリと落とし、
猛ダッシュで俺に抱きついてきた。
「ダーリンしゅごい!!」
ギュウウウウ!!
(痛い痛い痛い痛い!!
普通に死ぬ!!)
ようやく解放された俺は、その場に崩れ落ちた。
そして気づく。
銀屏の握力、尋常じゃない。
(あれ? これ将来ヤバくね?
いや、絶対ヤバいよな……?)
――この予感は、数年後、最悪の形で現実になる。




